梅雨入りを前に、ドクダミを摘んでドクダミ茶を作りました。その横で家内が、新梢が伸びたイチジクの葉っぱを剪定して、その葉っぱを天日干しにしています。「どうするの?」と聞くと、イチジク茶を作るのだと......。
ネットで調べてみると、高血圧や動脈硬化の抑制に効果があるとか。ほかに、悪玉コレステロールを減少させる効果やダイエット効果などがあり、さらには血糖値の抑制、皮膚がん抑制効果などがあると、良いことづくめの効用です。半信半疑ながら飲んでみると、まさにイチジクの香り。なんとなく身体に良さそうです(笑)。でも、紫外線への過敏性を高めてしまう働きがあるそうで、朝よりも夕方に飲んだ方が良いとも書かれていました。
そのイチジクですが、葉っぱを摘むと切り口から白い液が出てきます。ものの本によれば、この乳液にはたんぱく質を溶かす酵素があって、昔の人は「イボコロリ」といって、イボを取るのに利用したのだそうです。ほんとかなあと思いながら、数か月前コメカミ付近にできた小さなイボに塗ってみると、2回目から変化が見えはじめ、4回目できれいになくなってしまいました。不思議ですねえ。それほど強力なので多用は禁物ですが、こんなところにも昔の人の知恵がありました。
ところで、先週、4日ほど空白期間ができたので、家内が「どこかに行こう」と言い出しました。ネットを駆使して捜したのが南紀・勝浦です。それも午後になって翌日の宿を探す強引さですが、あるものですねえ。温泉宿をみつけました。白浜から先(南)には行ったことがありません。本州最南端の潮岬があり、西国三十三カ所の第一番札所である那智山・青岸渡寺があります。伝統捕鯨で知られる太地町があります。
大阪から4時間ほどかけて紀伊勝浦駅に到着。宿にチェックインしたあと、まずはその日最終便の遊覧船くじら号に乗って「紀の松原めぐり」を楽しみました。そして夕刻、温泉に浸かったあとは美味しいお酒をいただきながら南紀・勝浦温泉の夜を楽しむ....。
翌朝、紀伊勝浦駅前からバスに乗って25分。那智山に向かいました。参道の長い石段を登って熊野那智大社に参拝したあと、隣接する青岸渡寺へ。いずれもちょうど改修工事中で全景は望めませんでしたが、青岸渡寺では般若心経を唱える多くの方がお見えになっていました。
思い出しました。那智といえば南方熊楠。英国から帰国して1年ほど経った明治34年の秋、熊楠は隠花植物の研究のため、紀伊勝浦に向かいました。その後の3年間、彼は思想的に最も重要な時期をこの那智で過ごすことになります。
「南方熊楠アルバム」(中瀬喜陽・長谷川興蔵編=八坂書房)によれば、熊楠は「那智滝(一ノ滝)の背後の原生林を、二ノ滝や三ノ滝あたりまで、また那智川の支流にかかる陰陽ノ滝付近を歩きまわり、粘菌類や菌類その他の植物採取に励んだ」とあります。同時に熊楠は、長文の英文論文の発表や「方丈記」の翻訳、さらには学僧・土宜法竜宛ての書簡に記された、いわゆる「南方マンダラ」などの思想的な代表作を、この那智で書き上げました。
急に思い立った南紀・勝浦の旅でしたが、温泉だけでなく、西国1番札所青岸渡寺へのお参り、そして南方熊楠が3年間を過ごした勝浦の風景を体感するという贅沢なものになりました。ちなみに、和歌山にある西国三十三カ所には、青岸渡寺のほかに2番札所の紀三井寺山金剛宝寺と3番札所の風猛山粉河寺があります。いずれ機会をみてお参りしたいと思います。