心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

真珠婚式

2006-10-29 17:29:01 | Weblog
 街路樹のハナミズキが真っ赤な実をつけています。お隣の石垣を這う蔦の葉っぱも美しく紅葉しています。いつも見慣れているはずの風景なのに、「こころ」の安らぎとともに景色が違って見えました。そう、もう秋なんです。
 そんな静かな秋の休日、遠路、鹿児島からひょっこり長男君夫妻がやってきました。ハワイでの挙式後初めてのご帰還ですが、新居の片付けもやっと終わり、少しずつ日常を取り戻しつつある様子でした。その長男君は、友人の結婚式に招かれて、京都今出川にある大学のチャペルにお出かけでした。そんなわけで今日は、我が家のお嫁さんと一緒に、デパートにお買い物でした。
 結婚式といえば、わたしも明後日、結婚30周年を迎えます。ものの本によれば、富と健康をあらわす海の宝石に例えて「真珠婚式」と言うのだそうですが、富はともかく、ふたりとも病気らしい病気をするでもなく、この30年間を無事に過ごせたことは幸いでした。その間、子育てに翻弄されながら、一方では親の介護、逝去と悲しい出来事もありました。子供たちの成長とともに数年に1回は、家族揃って海外旅行を楽しんだことも良い思い出です。そんな我が家も、来年の春、次男君が就職すれば”子育て終了宣言”です。
 そして、次の節目となるのは金婚式。それまでの20年間は、おそらく夫婦だけの生活になるでしょう。無事に生きながらえていれば70歳も後半にさしかかる年齢です。いくらなんでも、そこまで元気でいることはありえない。あと8年もすればリタイアですから、その後の人生が楽しみでもありますが、身体の至るところに故障が出てくるのは間違いありません。高齢化とともに互いの介護の問題も浮上するやもしれません。そう考えると、決して安心な生活が保障されるわけではないのです。
 でもねぇ、最近の新聞記事を読んでいると、あまりにも悲しい事件が多すぎます。経済のこと、教育のこと、政治のこと......。どこかで何かが狂っているような気がします。ボタンの掛け違いはないでしょうか。素朴にそんなことを考えながら、焦らず、肩の力を抜いて、「いま」というこの時を大切して生きていきたいと思っています。
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音楽器博物館

2006-10-22 10:52:18 | Weblog
 半袖では少し肌寒さを感じるこの頃ですが、今朝は愛犬ゴンタの朝のお散歩をすませると、NHKFMの「20世紀の名演奏」をBGM替りに聴きながら、静かな秋の休日を楽しんでいます。今日のテーマは「日本人演奏家たちの20世紀~往年の名ピアニスト安川加壽子」でした。先々週はハワイに、先週は国内の出張が重なり、その間にもややこしい仕事が山積ですから、どうも落ち着きません。意識的に、散漫になった「こころの糸」をぐっと引き戻そうとしている我に気づきます。
 ところで先週は3日間、静岡県浜松市に出かけていました。いつも新幹線で通過するだけのこの街に降りたのは初めてでした。浜松といえば鰻(美味しかった)、いや楽器の街で有名ですが、11月に開催される「浜松国際ピアノコンクール」のポスターが目につきました。ちょうど出張中、私が宿泊するホテルに隣接するアクトシティ浜松大ホールでは、コンサートの審査委員長を務めるピアニスト中村紘子さんのコンサートも開かれていました。
 仕事の合間に、浜松市音楽器博物館を覗いてきました。浜松は日本で初めて国産のピアノを作った街ですが、パンフレットには「世界の楽器を同じ目線で平等に展示し、楽器を通して人間の生活や考え方を紹介し、楽器の楽しさを知っていただくのが、この博物館の大きな役目」とありました。鍵盤楽器コーナーはもとより、日本、アジア、オセアニア、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパと世界各国の楽器が、その変遷とともに掲出され、要所要所でその演奏をビデオ等で楽しむことができます。弦楽器ひとつ例にとっても、各国さまざまな形式があって、それが奏でる音の世界もさまざま。同じ目線で、それらを見つめると、人類共通の「こころ」を垣間見ることができそうです。あまり多くの時間を割くことはできませんでしたが、なにか不思議な体験をいたしました。
 そうそう博物館のお土産ショップでアンティーク調の小さな蓄音機を見つけました。ニッパー君のお相手にちょうど良いと思い買って帰りました。さっそくニッパー君と一緒に写真撮影です。

浜松市音楽器博物館にご関心をお持ちの方はつぎのサイトをご覧ください。
http://www.gakkihaku.jp/jyousetu/index.html

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結婚式 in ハワイ

2006-10-15 10:48:28 | 旅行

 懲りずに毎週日曜日に更新をしているこのブログ、先週は久しぶりにお休みをいただきました。別に毎週更新する義務はないのですが、仕事に追われダラダラと時間が流れていくのが嫌なので、いつの間にか日曜日の更新が習慣づいてしまいました。でも、習慣というものは恐ろしいもので、心の中で正座をしてPC画面に向かう、この時間が、わたしにとっては貴重な時間になっています。
 前置きはこのぐらいにして本論に入りますが、実は連休を利用して4日間ほど、米国ハワイにでかけておりました。長男君の結婚式のためでした。何もこの忙しい時期に、と言う思いもありましたが、二人の希望に沿って門出を祝ってやりました。皆さん仕事をやり繰りして、無事、一人も欠けることなく現地で催すことができたのは幸いでした。ダイヤモンド・ヘッドが見える小さな教会の庭園には、ブーゲンビリアほか様々な花が咲き乱れ、二人の結婚を祝福してくれました。希望が適って賛美歌はハワイ州でご活躍のソプラノ歌手の方にお願いできました。パイプオルガンの演奏でアヴェマリアを高々と歌い上げていただきました。これで、長男君に対する父親としての役目を終えたような気がしています。
 無事、式を終えた翌日、せっかく来たのだからと、空き時間を利用してダイヤモンド・ヘッド山頂早朝ハイキングにでかけました。朝5時30分にホテルを出発して車で登山口に到着。およそ40分をかけて、まだ薄暗い曲がりくねった山道を進み、極めつきの長い長い階段を登り、やっと山頂に立ったところで「ハワイのご来光」を拝むことができました。なんだか幸せな気持ちになったものです。ちなみに掲載の写真は、山頂から、日の出とは反対方向にカメラを向けて、よく見かけるホノルル市街地を撮影したものです。
 ばたばたの4日間、我が家に戻ると、何事もなかったように金木犀の芳しい香が庭に漂っていました。ペットホテルから戻った愛犬ゴンタ君共々、いつもの生活に戻りました。

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「心」を育む

2006-10-01 15:16:15 | Weblog
 小雨がぱらぱらと舞う秋の休日、遠くからは小学校の運動会らしき賑やかなBMGが風に乗って聞こえてきます。そんな日曜日の昼下がり、音楽の世界に漂いながら少し疲れ気味の「心」を癒す、なんとも静かな時間を過ごしています。
 そういえば今朝、愛犬ゴンタとお散歩の途中、満開のヒガンバナに出会いました。公園の桜並木の下に、不思議な恰好をした真っ赤な花が満開です。真っ白い花もありました。このヒガンバナ、別名曼珠紗華(まんじゅしゃげ)とも言います。その昔、中国から伝来した帰化植物のひとつで、なにやら仏教の香りがする名前に異国情緒を漂わせます。鱗茎には毒があって、不注意に食すると死に至るのだそうです。「美しいものにはご用心」といったところでしょうか(笑)。
 この季節、近江米の収穫に忙しい湖北の里を歩いていると、田んぼの畦道でこの花をよく見かけました。でも、都会地で出会うのは稀です。稲作という「農」を忘れがちな現代社会にあって、そうした原風景が減っていくのは、やはり寂しい。とは言え、これも都会に暮らす者の身勝手な幻想に過ぎないのかも知れません。目の前に在る「風景」を全身でどう受け止めるかは、そこに佇む者の世界観に拠らざるを得ないのです。
 少し話が飛躍しますが、同じ曲をいろんな指揮者の演奏で聴くと、その曲想の違いに驚きます。同じ譜面なのにこうも違うものかと。以前、西本智実さんのコンサートで聴いた曲のひとつにチャイコフスキーの交響曲第5番がありました。哀愁に満ちた旋律が素敵な曲ですが、今までに聴いた曲とは雰囲気がずいぶん異なるのです。以後、意識していろいろな指揮者の演奏を聴きました。中古レコード主体ですから、少し古いのですが、カラヤン、モントゥー、マゼール、オーマンディー、ロストロポーヴィッチ、ロジェストヴェンスキー.....。確かに指揮者によって曲の雰囲気が異なるのです。若い頃あれだけ傾聴したカラヤンの演奏も、何かしっくりこないもどかしさを感じるから不思議です。譜面の解釈でこうも曲想が違うものかと。
 このブログを「心の風景」と名づけたのも、実はこれと同じ思いが底辺にありました。目の前に広がる風景に身をおいて、それをどう感じ、どう受け止めるのか。それは、その人の「心」という目で見つめ体感する以外にないのです。その人の「心」によって風景は動的に見えたり、静的に見えたり。希望に見えたり、失望に見えたりします。それも点としてではなく、空間の中に身を置いて、全身で空間を体感・体得する以外にない。全身で受け止める風景こそが自らの「心」の礎になる。そう考えました。世に教育再生論議が再燃しようとしています。「心を育む」教育が目指されることを願っています。最近、悲惨な事件が余りにも多すぎますから。

★チャイコフスキー交響曲第5番ホ短調作品64をロリン・マゼー ル指揮、クリーヴランド管弦楽団のレコード演奏を聴きながらの ブログ更新でありました。なお、来週の更新はお休みです。
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