心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

荒川静香さんのスケートと歌劇「トゥーランドット」

2006-02-26 12:23:29 | Weblog
 きのうの春めいた陽気と異なり、きょうは雨、雨、雨...。週に一度の休日が台無しです。愛犬ゴンタも小屋の中でじっと我慢でした。でも我慢、我慢。ここ数日の気候の変化を見ていると、着実に春が近づいていることを実感します。
 ところで、日曜日の天気予報が「雨」とありましたので、昨夜は少し夜更かしをしました。何をしていたかって?。実は、トリノ五輪・フィギュアスケートの金メダリスト・荒川静香さんが使った歌劇「トゥーランドット」が気になって、昨夜は2時間あまりをかけてDVD版の歌劇「トゥーランドット」を楽しみました。
 歌劇の舞台は、中国北京の城門前。中国皇帝の娘トゥーランドットは、その昔、先祖の美しい姫君が敵に侮辱され非業の死を遂げた怨念を抱き、氷のように冷たい心をもっていた。彼女の花婿になろうとする者は「王子であること」と「彼女が出す三つの謎に答えること」の二つの条件をクリアしなければならず、謎解きに失敗した多くの若き王子たちが首をはねられていた。そこに、戦いに敗れて流浪するダッタン人の王ティムールと王子カラフ、そして女奴隷リューが登場する。トゥーランドットに魅せられた王子カラフは、反対をおしきって謎解きに挑戦する。そして見事に三つの謎を解く。しかし、トゥーランドットはなおも心を開こうとしない。そこでカラフは、逆にひとつの謎を出す。「夜明けまでに私の名前を当てたら自分の命を差し出す」。国は騒然とする。この場面で登場するのがアリア「誰も寝てはならぬ」。荒川さんが使った曲でした。トゥーランドットは、カラフの強引な接吻を受けて揺れ動く。徐々に心を開いていく。気を許した王子カラフは、自ら名前を打ち明けてしまう。ここでトゥーランドットは急に勝ち誇り、皆を集めて「名前が判った」と宣言する。しかし、トゥーランドットの口から出た言葉は「その名前は愛」。二人は皆の祝福を受けて固く抱き合う...。
 ざっと、こんなシナリオです。数分間のフィギュアスケートに用いられた曲の中に、これだけ豊かなドラマが隠されています。まさに、クライマックス。よい選曲だったのではないでしょうか。プッチーニは、蝶々夫人も作曲していますが、こちらは、安藤美姫さんが選んだ曲でした。共に東洋を舞台にした歌劇にして、イタリアで愛されている作品です。お疲れ様でした。
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「知るを楽しむ~私のこだわり人物伝~」白州正子編

2006-02-19 11:57:45 | Weblog
 ここ数日降っていた雨もあがり、比較的穏やかな休日の朝を迎えました。愛犬ゴンタとお散歩がてらコンビニに寄って新聞を買いました。仕事の記事掲載の確認です。美味しいコーヒーを楽しみながら、ぼんやりと新聞を読む。1週間の疲れを癒す貴重な休日の始まりでした。
 1週間ぶりにFM放送にスイッチを入れると、ちょうど「20世紀の名演奏」の時間でした。きょうは”ハインリヒ・シフの名演”がテーマで、黒田恭一さんの解説を聞きながら、ハイドンの「チェロ協奏曲第2番ニ長調」、シューマンの「チェロ協奏曲イ短調作品129」、エルガーの「チェロ協奏曲作品85」、ラフマニノフの「チェロ・ソナタト短調作品19」を楽しみました。
 ところで、NHKテレビに「知るを楽しむ~私のこだわり人物伝~」という講座があって、今月は「目利きの肖像:白州正子」を元首相の細川護煕さんが紹介しています。そのテキストを買ってきて、昨夜録画ビデオを見ました。白州さんといえば、薩摩隼人の流れを汲むお家柄で、古き良き時代に自由奔放に生きたお方のようでした。たまたま昨年末、鹿児島を旅し、その1日を島津家別邸「仙巌園」や「尚古集成館」を見て回ったこともあって、テキストのほかに白州正子自伝(新潮文庫)まで買ってしまいました。それと、60歳でさっさと政界を退き悠々自適の生活に入った細川さんの人生観を眺めてみたいという気持ちもありました。わたしには望むべくもない環境ですが、しかし人間の生き方という視点から考えてみれば、そこに大きな隔たりはありません。現実から少し距離を置いたところでものごとを見つめることができるのは、その方々の特別な生活環境のなせる業であるとしても、何か懐かしいそんなセピア色の風景が浮かび上がってきます。明治維新以降、紆余曲折を経て今日の日本の姿があります。
 それにつけても、最近、本当に嫌な事件が多いです。親殺し、子殺し。どんな国の法律でも最も厳しい罪となる、このような大事件が日常茶飯事のように起こっています。どうしてなのでしょう。何か、大切なものをどこかに置き去りにしてきたのでしょうか。どこかで歯車が狂ってしまったのでしょうか。で、思いついたこと、リタイアしたら日本の近代史をもう一度見つめなおしてみよう。でも、よく考えてみると、「リタイアしたら」という前提条件をつけること自体に問題があるように思いました。日々忙しくてそんなことを考えてはいられない、その今こそ、何かを見つめ考えなければならないのではないか。そうでなければ、いつまでも現状のまま、あるいはさらに悪化してしまうだろう。悶々とするばかりです。
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FMラジオを楽しむ

2006-02-12 10:37:18 | Weblog
 昨日のぱかぽか陽気と違って、今朝はぶるっと寒い1日の始まりでした。障子をあけて庭を眺めると、サザンカの花に数羽のシジュウカラ(四十雀)が舞い降りて花の蜜をおいしそうに食していました。でも、カメラを構える頃にはどこへやら飛んでいってしまいました。わたしの行動の鈍さは歳のせい??
 ところで、連休の初日は、物置の奥からTRIO製のFMチューナーを引っ張り出してセッティングしました。どうしても聴きたい番組があって、簡単なFMラジオは部屋にごろごろしているのですが、やはりきちんとした装置で聴きたいと、子供っぽい戯れでした。高級品ではありませんが、若い頃に愛用した受信機なのです。
 お掃除用ウエットシートで綺麗に拭いて、端子類も綺麗に磨いて、室内用アンテナを繋いで、おもむろにアンプに接続する。う~ん、感度を示すゲージが芳しくない。いろいろ思案したあげく、ずいぶん前に日本橋で手に入れながら倉庫の棚で眠っているアース棒があることに気づきました。それを探し出して、今度は軒下の地面に打ち込んで、アース線をうまく這わせてチューナーのアース端子に繋いでみました。するとゲージは5段階評価の5の目盛に振り切れ、この装置にとっては申し分ない受信環境を用意できました。
 ついでに、AM放送もいろいろ聴きたいと思い立ち、今度はAMアンテナ端子に電線をつないで、感度ゲージをみながら配線してみました。これもオッケーでした。府内発信のAM放送が高感度で届きました。夜になると、遠距離の放送もいくつか聴くことができました。愛用の短波ラジオは湖北の山小屋においたままなのですが、久しぶりに30数年前のBCLブームを思い出したものです。
 空間に潜み、わたしの身にまつわりついているであろう電波を、機械装置で受信して、心温まる音に変換する。それも大地にアース棒を打ち込んで、大地と一体となって音の世界をつくる。なんと不思議なことか。その技術的背景も知らず、独り音楽の世界に埋没するわたしでありました。
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アナログレコードの魅力

2006-02-05 10:44:59 | Weblog
 立春というより、寒の明けという季語が似合う休日の朝、愛犬ゴンタの水入れは薄い氷で覆われました。でも、ゴンタは朝の散歩が待ち遠しく、元気一杯に跳ね回ります。
 そんな休日の朝を、きょうは珍しく「チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番変ロ短調」のレコードを見つけ出して聴きました。ピアノはマルタ・アルゲリッチ、バイエルン放送交響楽団、指揮はキリル・コンドラシンです。このあまりにも有名な曲を、わたしは多感な中学生の頃よく聴いたことを覚えています。万人のこころを虜にする懐の広さのようなものを、この曲から感じ取っていたのだと思います。
 最初の出会いは、大自然に囲まれた田舎の離れの一室で、父ご愛用の蓄音器で聴いたのが初めてでした。誰の演奏であったかは覚えていませんが、小さな箱の中から聴こえる西洋の音楽に不思議な魅力を感じたものでした。もちろん、SPレコードです。針は鉄製と竹製がありました。田舎の小さな楽器店にも蓄音器用の針を売っていて、東京に単身赴任していた父が年に何回か帰ってくる時期になると、新しい針を新調しておくのが私の役目でした。いま思えば、これが私のクラシック音楽との出会いでした。
 ところで、今わたしが聴いているアルゲリッチ演奏の第1番は、1980年2月にミュンヘンでのライブ演奏版です。アルゲリッチという人は、なかなか気難しい面があるようで、というよりもひとつひとつの演奏に最高のものを求めようとするあまり、結果として出来不出来がはっきりと表れるような印象をもっていますが、このレコードはコンドラシンとの息もぴったりあって非常にスリリングな演奏を実現しています。
 ライブ録音というのは、臨場感があって良いです。一般的には何度か録音を重ねて、それを編集して最高の演奏に仕上げていく。これがCDやレコードの制作だろうと思いますが、ライブ録音は嘘がつけない。乗るか乗らないか。その分、演奏が終わった瞬間の感動をオーディエンスの一人として共有できる素晴らしさは、他に変えがたいものがあります。オペラのDVDでも、映画風に編集したものは面白くなく、やはり大きな歌劇場でのライブ録画がお勧めです。要するに、そこに「在るもの」を素直に楽しむ。これがレコード芸術の楽しみなんだと思います。とはいえ、ライブ録音のレコードは極めて少ないのが現状です。
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