心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

暑い夏に思う過去、現在、そして...。

2013-07-27 23:19:50 | Weblog

 暑い日が続きます。そんなある日、暑中見舞いの葉書に交じって、大学時代のサークルの会誌「同窓」が届きました。表紙には「いま一度、青春の扉をあけて・・・語ろう、綴ろう、この一冊」とあります。サークル自体はずいぶん前に消滅していますから、メンバーも高齢化が進んでいて、執筆者の多くは一線を退いた先輩諸氏でしたが、今号から同世代のお名前もちらほら。仕事人生40年とは異なる精神の原点を見る思いがいたします。
 さて、3週間ぶりの土日連休に、夏休み中の孫君がお泊りにやってきました。さっそく地元の温泉に出かけ、源泉かけ流しの岩風呂、炭酸泉、漢方薬草温泉、漢方薬草サウナなど十数種類の温泉を二人で楽しんできました。
 我が家に戻って小休止すると、次は蝉取りです。老体に鞭打って、炎天下のなか近くの小さな森に出かけました。私もついつい昔のことを思い出して蝉や蝶を一生懸命に追いかけました。大きなクヌギの根元には樹液が滴り、そこに虫たちが集まっています。ひょっとしたらカブトムシやクワガタがいるかもしれないと少し期待をしたものの、昼間に探すのは難しく断念。それでも虫籠いっぱいの昆虫を手に孫君も楽しそうでした。その孫君、お婆ちゃんに自慢すると、一匹ずつ放していました。
  二日目の日曜日には、孫次男君が合流します。
 そんな騒々しい休日ですから、落ち着いてブログを更新することもできません。孫君が寝静まった時間を利用して、夜遅く静かに綴っています。取り出したLPは、珍しくビゼーの「アルルの女」です。
 この曲を聴いて思い出すのは、田舎の学校の音楽教室です。壁にバッハやベートーヴェンなど巨匠といわれる作曲家の肖像画が高々と掲げられ、教室の前には大きなグランドピアノが置いてありました。音楽鑑賞という時間があって、音大を出たての若い女性の先生がおもむろにLPレコードに針を落とします。それをみんなで静かに聴きました。窓際に立つ桜木の幹にとまる夏蝉がミーン、ミーンと鳴き、花壇に立つ大きな向日葵の花が首を垂れる、そんな風景のなかでクラシック音楽に耳を傾けました。なぜ「アルルの女」なのか、なぜこれが浮かんでくるのか私にはよくわかりませんが、夏になると思い出す曲です。
 このLPは輸入盤ですがジャケットが気に入っています。小林秀雄が愛してやまないゴッホの作品「鴉の群れ飛ぶ麦畑」の一部を切り取ったデザインです。ゴッホが描いた「アルルの女(ジヌー夫人)」繋がりで表紙を飾ったのでしょう。
 そうそう、先週は大腸癌検診第二弾でした。朝8時30分に病院に入り、解放されたのが12時30分、4時間もかかりましたが、その大半は待ち時間です。その間、ずうっと私は院内の人の動き、表情、空気そのものを興味深く眺めていました。病院におじゃまする機会のなかった私です。見るもの聞くものすべてが新鮮に映ります。人の動線、設備のレイアウト、情報システム、医療機器、救急医療、そして患者さんの不安と笑顔、人生の縮図のようでもありました。
 今回の診断で、検査がワンランクアップしました。8月半ばに内視鏡検査を受けることになりました。この日はまた、CT検査も受けました。CT検査そのものは10分足らずですが、TVでよく見る風景と同じです。丸い円筒のなかに身体を置いて患部を輪切に撮影していく優れもののようでした。検査の途中、血管から造影剤が注入されると、首、胸、下半身と順番にじわり温かくなっていきます。この時ばかりは自分が生き物であることを実感しました。こうして病巣を確認していくのでしょう。
 引き続き今週は前立腺癌検査を受診する予定です。まあ、良い機会ですから、身体にガタがきていないのか、徹底的に調べていただきましょう。そんなわけで63回目の夏は検査が最優先されることになりそうです。

  

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夏の旅行計画?

2013-07-21 08:51:52 | Weblog

 先週につづいて今週は、土日月と広島出張です。出かける前日、参議院選挙の期日前投票をすませてきました。でも、休日の出張というのは足が竦みます。心のどこかで子供のように「嫌だなあ」という思いがふわふわしています。そのためか、新大阪駅で足踏みです。ときどき入る喫茶店でひと休み。モーニングセット450円で朝刊全紙に目を通すことができ、読み終わるころには、「さあ出かけよう」と自分を奮い立たせます。
 さて、そんな広島での朝を迎えて、仕事前のひとときを、今朝はNHKネットラジオ「らじる★らじる」ラジオ第一で皆川達夫さんの「音楽の泉」を聞いています。曲は、モーツァルトの「ディヴェルティメント ニ長調 K.334」。ウィーン・モーツァルト合奏団、ウィリー・ボスコフスキーの指揮です。 そうそう、先週行った京都文化博物館。あとでネットで調べてみると、設計が辰野金吾さんであることを知りました。辰野さんといえば、東京駅や大阪市中央公会堂の設計に関与した明治の建築界の重鎮です。コンサートが開かれた部屋は、かつては日本銀行京都支店の「営業室」だったところ。客溜りとの間は格子状のカウンターで区分され、今は店舗の入っている両脇の部屋は、かつての所長室や応接室だったようです。天上を見上げると、板張りの素晴らしいデザインが施され、照明機器もアンティーク。タイムスリップしたような錯覚さえ覚えました。紙の専門店「楽紙館」は新館のほうにありましたが、そこで買った和紙を早速ブックカバーとして使っています。

 ところで、梅雨も空け、学校も終業式を終えて、街に子供たちの姿が目立ってきました。最初の土日連休だからでしょうか、新幹線も親子連れが目立つようになりました。我が家も、そろそろ夏の旅行計画を固めようと思ったのですが、愛犬ゴンタの高齢化が進み、家内が泊り込みのお出かけを躊躇します。
 そういえば昔、家族で海外旅行したときに、育てていたマルチーズ「ぺロ」を家内の実家に預けたことがありました。ところが、帰国して直後に亡くなりました。空港から実家に直行すると、1週間ぶりに再会したぺロは尻尾をふって大はしゃぎでした。しかし、自宅に連れて帰ると、安心したのでしょうか?直後に心筋梗塞で亡くなりました。子供たちが大いに悲しんだ風景が昨日のことのように思い出されます。ひと晩、添い寝をしてやりました。置いてけぼりにして旅行に出かけたことに、家内はずっと罪悪感を抱いていました。13歳になって徐々に老けてきたゴンタをみていると、ペットホテルとはいえ置いて出かけることはできないと言います。毎日服用している薬もあります。当時のことを思い出すのでしょう。そんなわけで、この夏は遠出を避け、日帰り旅行に徹することにしました。先日、家に帰ると、日帰りバス旅行のパンフレットがいっぱいありました。そのうちの何箇所は既に予約済みでした。当分の間は、手短なところで楽しむことにいたしましょう。

 おっ、そろそろお時間です。今週はこのへんにしておきましょう。

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寸暇を惜しんで自分の居場所を探す

2013-07-15 09:22:35 | Weblog

 先週のブログで梅雨明け宣言を予感した翌日、近畿地方も梅雨明けとなり、朝から火照るような暑さに包まれました。そんな変化を見逃さないのが夏蝉です。朝、出勤の途上、蝉たちのか細い声が聞こえていましたが、1週間もたてば本物です。今朝も、雨が止むや否や、蝉の大合唱が始まりました。夏、到来です。
 さて、先週はいろんな所に出かけました。火曜日は東京へ、水曜日は神戸、といっても山を越えた三田市へ。木曜日は広島へ。1日おいて土日は石川県金沢市へと、落ち着きのない日々を過ごしました。
 久しぶりに東京に出かけた火曜日は、いつものように朝早く家を出ると10時30分に東京駅に到着。午後のお仕事の前に神保町の古書店「小宮山書店」をのぞきました。手にしたのは中沢新一著「森のバロック」(せりか書房)でした。すうっと通り過ぎていくところでしたが、なんとなく足が止まり、書棚から手にとってみると、帯に「日本思想の可能性の宇宙樹~南方熊楠論」の文字。本を開いて「はじめに」の冒頭には「この本は、南方熊楠の伝記ではない。また、彼が考えたこと、書いたこと、おこなったことの跡を追って、その生涯と学問の輪郭を描き出すことにも、この本は興味をいだいていない」と意外な書き出し。500ページ近い単行本ですから、いっきに読む時間はありませんが、帰りの新幹線の中で、あるいは眠る前の僅かな時間を利用して、ぱらぱらとめくっています。
 金曜日に20人ほどの学生さんの採用面接を済ますと、翌土曜日は金沢に向かいました。少しお話しをしてほしいという要望を伺っていましたが、ドタバタしていて何も用意できていなかったので、金沢駅に到着するとホテル日航金沢の一室に籠って1時間ほど心の整理をしました。シャワーを浴びて、いざ会場へ。地元の皆さんと楽しい時間を過ごしました。その夜は、ホテルに戻ってスカイラウンジでひと息入れてから深い眠りにつきました。写真は雨の金沢駅界隈の風景ですが、金沢は今、北陸新幹線の開通を2年後に控えて活気づいていました。
 3連休を潰しての出張でしたので、実は、昨日の日曜日は、朝、土砂降りの金沢駅を跡にして昼前に京都駅に着くと、地下鉄に乗り換えて烏丸御池駅で家内と合流しました。お目当ては、前日の13日から京都文化博物館で始まった、2013年NHK大河ドラマ特別展「八重の桜」でした。
 史料点数は210点。「会津の教え」「幕末の京都」「会津籠城」「古都復興~覚馬と襄」「ハンサムウーマン」という流れで構成されていて、史料のひとつひとつに目を通していたら、見終わるまでに2時間あまりかかってしまいました。それほどに見応えのある企画でした。中には、八重が操っていたのと同型のゲベール銃、スペンサー銃なども展示されていました。幕末から明治にかけての激動の時代を、自らの信念を胸に生き抜いた人々の生き様がずしりと迫ってきました。
 初めて訪れた京都文化博物館です。少し遅めの昼食をすませると、館内を散策しました。別館ホールは国指定重要文化財の旧日本銀行京都支店でした。大阪の中央公会堂に似た明治の香りが漂うホールでは、祇園祭ミュージアムコンサートが開かれていて、この日はジャズ演奏でした。特別展は、その別館の裏にある新館で開かれています。
 1階に紙の専門店「楽紙館」がありました。家内が様々な紙を手に楽しそうでした。紙の種類といい手触りといい、その多様さには驚きました。私もブックカバーに使えそうな少し厚手の和紙を何枚か手にしました。この日は祇園祭宵々々山で、京の街はどこからともなくお囃子の音が聞こえてきます。梅雨が明けて、いよいよ夏真っ盛りを予感させる、そんな季節。冷たい美味しいビールをいただいて帰りました。
 寸暇を惜しんで、隙間時間に自分の居場所を探す、そんな1週間でした。きょうは、ラザール・ベルマンのLPを聴きながら、1日遅れのブログ更新です。1977年9月29日、北海道厚生年金会館で開かれた実況録音で、バッハの「シャコンヌ」、スクリャービンの「練習曲」「ピアノソナタ」、ラフマニノフの「13の前奏曲」などが、蝉の鳴き声に共鳴するように響いています。

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年に一度の逢瀬~七夕の笹飾り

2013-07-07 09:27:51 | Weblog

 昨夜もたくさんの雨が降りました。愛犬ゴンタも昨夜はお家の中で過ごしました。そして今朝、輝くような朝陽を浴びながら、朝のお散歩を楽しみました。でも、早朝なのに背中に汗を感じました。これからどんどん暑くなってくるのでしょう。そろそろ梅雨明け宣言でしょうか。
 散歩を終えて野菜畑を覗いたら、ミニトマトがたくさん色づいていました。雨と太陽がもたらした恵みです。その横には、キュウリの子供たちに交じって大きな実がひとつぶら下がっていました。今朝の食卓には新鮮野菜が並びました。
 さて、今日は久しぶりにグレン・グールドのバッハ「ゴールドベルク変奏曲」を聴きながらのブログ更新です。実は昨日、大阪・中之島界隈での仕事を終えると、久しぶりに駅前第一ビル地下のワルティさんに立ち寄りました。そこで見つけたグレン・グールドのCD「ザルツブルク・リサイタル1959」。1955年録音でも1981年録音でもなく、1959年8月25日(火)にザルツブルクのモーツァルテウムで開かれたリサイタルライブ録音版です。私が9歳の頃です。1964年を最後に演奏会活動に終止符を打ったグールドの、数少ないライブ録音です。
 それを手にウキウキ気分で帰途につきましたが、最寄駅に到着して改札口を通ろうとしたとき、コンコースに立つ七夕の笹飾りが目に留まりました。ここ数日、行き交う人々が自分の思いを綴った短冊が飾り付けられています。機械音と人の喧噪に満ちた空間にひっそりと佇む笹飾に、なんだかほっとしたものです。
 七夕について少し調べてみると、「この行事は中国で古くからあった牽牛星と織女星の伝説が日本に入ってきて、一方我が国に昔からあった棚機(たなばた)つ女(め)の信仰に合流したと言われている。7日の朝に芋の葉の露で墨をすって、願い事を短冊に書いて笹竹に結ぶ」(角川書店「入門歳時記」)とありました。現代中国からは想像できない三千年におよぶ歴史の奥ゆかしさを思います。
 思い出しました。織女といえば、1カ月ほど前に交野市におじゃましたとき、機物(はたもと)神社の宮司さんにお会いしました。98歳という高齢にもかかわらず、ご自分で車を運転されるほどお元気な宮司さんでした。その機物神社には二神の棚機女(たなばたつめ)が祭られているとかで、パンフレットによると、起源は古く4、5世紀にあるとも言われ、秦氏に代表される交易商人によって組織された養蚕布織の技術をもった民が大陸から渡来し、その一部の集団がこの地に定住した、と記されています。後に、七夕伝説と結び付けられて、「秦」を機織りの「機」に換えて現在の機物神社のイメージができたのだと。今日7月7日は「七夕祭」が催されています。
 「一年に 一夜と思えど たなばたの 遭い見む 秋の限りなき哉」
 交野市は、星に関わる伝説・地名が多いことでも有名だそうで、平安時代には大勢の宮廷人が遊猟に訪れ歌を詠んだのだとか。この歌もそのひつとで、当地を流れる天の川に架かる逢逢橋で年に一度の逢瀬を許された織女と牽牛の愛は永遠に続く深い仲であることを詠んだもので、紀貫之の作です。
 そうそう、7月7日は、東京で暮らす長男君のお誕生日でもありました。35歳、二児の父親です。

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