先日、なにげなく新聞を眺めていたら、「JR四国『単独維持 厳しい』」「廃線回避 地元協力カギ」(読売新聞)の見出しが目に留まりました。営業係数(100円の収入を得るために要する費用)が最も高いのが北宇和島~若井(予土線)で1159円。他に、営業係数635円の牟岐線(阿南~海部)、278円の土讃線(須崎~窪川)も。いずれも、その一部の区間を「歩き遍路」の際に乗ったことがありました。 予土線といえば先日、宇和島駅からふた駅目の務田駅まで乗った、まさにその路線です。たしか220円だったと思いますが、15分ほど走りましたから、大阪ならもう少しお高いはずです。四国の農村風景の中をひた走りました。乗客は多くはありませんでした。記事によれば、人口減少に歯止めがかからず、JR四国の合理化の余地は最早ない状況にまで追い込まれているようです。今後の老朽設備に対する改修費用を考えると自力での路線維持は難しいとも。事は深刻です。
地方の交通網の深刻さは、四国だけではありません。JR北海道も同様な問題を抱えています。私の田舎の路線維持も、以前から問題になっています。高速道路が整備されるに従って鉄道利用者が減ってくる。そこに人口減少と高齢化が追い打ちをかける。一方で都市部は、高速道路の渋滞緩和のために、鉄道の新設と延長が政治マターになる。国土の強靭化政策とやらが取り沙汰されていますが、総合的な視点からの真面目な議論が見えてきません。地方創生とはいったいなんなんでしょうか。
子どもの頃は、蒸気機関車が走っていました。夜の9時前になると、その日最後の機関車が悲しげな汽笛を鳴らして静かな山あいを走り、もう寝る時間であること教えてくれました。小学生の時には、友達とトンネルの中を歩いていて、急に迫ってきた機関車に追い立てられるように逃げ走ったこともありました。あとでずいぶん叱られました(笑)。
それがいつの間にかディーゼルカーに代わり、急行列車も走るようになりましたが、その後、朝夕の高校生の乗り降り以外の時間は利用者も目立って少なくなり、ワンマンカーに代わりました。そして無人駅も登場してきました。当時の国鉄もめいっぱい合理化をしてきましたが、事態は悪化する一方でした。 昨年、法要のために帰省した際も、ちょうど台風が迫っていることもありましたが、帰りの列車に乗ったのは私たちの親族4人だけでした。たった4人のために列車1台が動いていることに後ろめたささえ感じたものでした。かつては、大勢の児童が列車に乗って修学旅行に行った時代がありました。いつも駅前は賑やかでした。でも今はひっそりとしています。
室戸岬や足摺岬から太平洋を眺めていると、海の向こうに明るい未来を予感させます。同じように、山間地の人びとは駅頭に立って未知の世界に思いを馳せました。夏の終わり頃、線路の端にひっそりと花咲く月見草がまだ見ぬ世界へと誘うように..........。
きょうのブログは少しだけ深刻な内容になってしまいましたが、目の前の現実にきちんと向き合うことが求められています。歪になった国土の在り様が問われているような気がいたします。