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さて、きょうのテーマは「老楽国家を思う」としました。先日、国立社会保障・人口問題研究所から日本の地域別将来推計人口が発表されましたが、2040年の総人口がすべての都道府県で2010年を下回る一方、65歳以上の高齢者は団塊の世代を巻き込んで増加すると言っています。少子高齢化の大波が足元にまで迫ってきたということです。
その日の夜だったでしょうか、広島の宿所でTVニュースを見ていたら「デフレの正体」の著者である藻谷浩介さんが「アベノミクスは人口動態を直視していない」と厳しいコメントを述べていました。頑張っている人の足を引っ張りたくはないけれど、現実を冷静に見つめる視点は必要かもしれません。
以前、このブログで紹介した浜矩子先生は、ハリー・ポッターに登場する「みぞの鏡」を例に、いまの日本で人々が鏡の中に見ているのは、高度成長期を中心とした若き時代の姿。鏡の中にあの頃の自分を見て、本当の姿を見ていない。では、鏡の中に見るべきものは何か。それを先生は、「老いは楽し」という精神性のなかで成り立つ「老楽国家」であり、国家の成熟度を上手に受け止め、生かし、展開することだとおっしゃっていました。
ところで、先日、縁あって倉敷の高齢者専用住宅にお邪魔してきました。1階はほぼすべての領域をカバーする病院、2階と3階は病床。4階と5階が、いわゆるサービス付き高齢者向け住宅でした。エントランスホールに入ると美しい花々と自動ピアノの静かな音楽が私を迎えてくれます。ここが病院だと誰が思うでしょうか。レストランあり、コンビニあり。花の香に包まれ何かしらほっとさせてくれました。
4階を見学させていただくと、個室は一人で生活するには申し分ない広さが確保され、和室仕様と洋室仕様があって、細部にわたって十分な快適性が追求されています。部屋にもキッチンはありますが、皆で食事をする部屋があり、他に談話室やカラオケルーム、シアターがあります。バリアフリー、見守り....。安心システムはナースセンターにつながっていました。
採光にも工夫が凝らされています。広い廊下の一画には日向ぼっこができるスペースもありました。もちろん、車いすに乗って春の暖かい陽を浴びながら庭を散歩する方々の姿も。そろそろ咲き始めたチューリップの花を愛でながら春を満喫されているご様子でした。元気な方々は街にも散歩にでかけます。グループで旅行をすることもあります。なかには、そうしたレクリエーション行事が苦手な方もいらっしゃるようですが、それは戸建て住宅でも同じこと。とにかくゆったりとした時間が流れていました。
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単身高齢者にとって至れり尽くせりの住環境ですが、気になることも。人間のことだから、どんなに恵まれた環境でも住み慣れてしまえば別の不満も出てこようものです。......頭の中できちんと整理がつかないままに、広島市内に舞い戻った私は、地魚を肴に独り夕食をとりました。すると、隣の席に70代のご老人がやってきてお酒を美味しそうに呑み始めました。聞けば、毎週1日は居酒屋で一杯呑むのが楽しみなんだとか。奥さんを亡くして単身生活、時々娘さんやお孫さんが覗いてくれるのだそうですが、とりあえずは元気なので悠々自適の生活のご様子でした。会社勤めの頃のこと、老人会のこと、広島の歴史、話題は尽きません。楽しいひとときを過ごしました。
財産を整理して安心安全の住環境を終の棲家にする人がいらっしゃる。一方では、不自由なりにも気儘に暮らす人がいらっしゃる。まさに「それぞれの人生」です。気になるのは介護が必要になったときでしょうか。最近は病院も無制限に入院できるわけではないらしく、特養への入居も順番待ち、老健は入所期間が限られているとも。こう考えていくと、高齢社会への備えは十分ではありません。
しかし、よくよく考えてみると、私たちはついつい安心安全に夢を抱きすぎていないかとも思います。これから先何十年にわたって安心安全の基盤をつくるといっても、何が起こるか判りはしない。その時々に臨機応変、自在に生きる術を身に着けておくことの方が大事ではないか、そんな思いが頭をよぎりました。国土の強靭化計画も結構。でも、ハコモノだけではない、何か、そう人の生きる知恵、意欲、何かそんなものを大事にしなければと。と言いながら、まだ結論を見出しかねている自分に気づきます。
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きょうは、チャイコフスキーのピアノ曲「四季」を聴きながらのブログ更新でした。1月「炉辺にて」、2月「冬おくりの祭」、3月「ひばりの歌」、そして4月は「雪割草」と、1曲ごとに月名がついています。チャイコフスキーといえばピアノ協奏曲を思い浮かべますが、ピアノ小品もなかなか楽しい作品です。.....家内が長女と孫二人を連れて東京の長男宅にお出かけなので、午後は京橋の「ツイン21古本フェア」でも覗いてきましょう。