心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

三泊四日で神奈川、東京の街の風景を楽しむ

2022-11-25 23:02:21 | 旅行

 今週はあっという間の1週間でした。月曜日に横浜に向かい、その翌日には鎌倉の鶴岡八幡宮で孫娘の七五三を祝い、小町通を散策したあと三浦海岸のリゾートホテルに向かい、家族水入らずのひと時を過ごしました。
 その翌日は、三浦半島の農園でみかん狩りと野菜の収穫体験でもしようかと思っていましたが、なんと朝から雨。予定を変更して神奈川県立近代美術館葉山館の特別展「マン・レイと女性たち」に向かいました。そのあと横浜のみなとみらい界隈を散策して次男君一家とお別れしました。
 その夜、爺さん婆さんは品川のホテルに一泊し、翌日は婆さんのたっての希望でホテル雅叙園東京に向かいました。お目当ては現在公開中の映画「線は、僕を描く」の舞台となった百段階段「色彩空間で観る水墨画の世界」を見学すること。そして美味しいランチをいただくことでした。
 そんな駆け足の旅でしたが、孫娘の七五三を除くと二つだけ印象に残っていることがあります。そのひとつが「マン・レイと女性たち」です。近代美術館のHPには「芸術家として歩み始めたニューヨーク、シュルレアリスム運動に参加し写真活動を開花したパリ、第二次世界大戦を逃れ移住したハリウッド、晩年に再び戻ったパリの4章で構成。絵画、彫刻、オブジェなど多様な作品からマン・レイの生涯を辿る」と紹介されています。私にとっては馴染の薄いシュルレアリスムの世界ですが、今年に入ってフランス文学講座で話題になることが多々あり、実はきょうの講座も詩人アポリネールがテーマでした。この歳になってもまだまだ知らないことばかりです。
 もうひとつは江戸のお話しです。目黒駅から歩いてうろうろしながら雅叙園の玄関口に辿り着いたとき、何やら妙な看板に目が留まりました。見ると「お七の井戸」とあります。いわく、「八百やの娘お七は、恋こがれた寺小姓吉三あいたさに自宅に放火し、鈴ヶ森で火刑にされた。吉三はお七の火刑後僧侶となり、名を西運と改め明王院に入り、目黒不動と浅草観音の間、往復十里の道を念仏を唱えつつ隔夜1万日の行を成し遂げた。明王院という寺院は、現在のホテル雅叙園東京エントランス付近から庭園に架け1880(明治13)年頃まであった。この明王院境内の井戸で西運が念仏行に出かける前に、お七の菩提を念じながら、水垢離をとったことから「お七の井戸」と言い伝えられている」とありました。
 このお話しは井原西鶴の「好色五人女」に取り上げられ、歌舞伎や文楽などで上演されていますが、私も何年か前に国立文楽劇場で観たことがありました。なんとも江戸らしいお話しではありませんか。
 雅叙園から送迎バスで品川駅に向かう途中には、都会のど真ん中を流れる目黒川沿いに紅葉真っ只中の桜並木が見えました。春の桜花の季節にはさぞ美しい花を咲かせてくれるのでしょう。川沿いはコンクリートで固められていますから寂しい感じはしますが、これまた江戸の風景を垣間見る思いがいたしました。
 以上、ドタバタの3泊4日の神奈川、東京の旅でしたが、いろいろ思うことの多い秋の旅でもありました。これで年内の長旅は終了です。

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それぞれの秋の楽しみ

2022-11-16 10:43:49 | Weblog

 きょうもここ大阪では清々しい秋空が広がっています。お不動さんの奥の院では小鳥たちが力強くさえずり、年老いた私になんとなく元気を与えてくれています。そんな朝のお散歩ですから自然と足どりも軽やかです。
 さてさて、先日の日曜日は母校のホームカミングデーがあり、半世紀も前に集った仲間たちと楽しいひと時を過ごしました。会場となった良心館の至る所で様々な団体の集いが開かれ、廊下にまで笑い声が漏れ聞こえてきます。人間、歳をとっても半世紀も前のことを昨日のことのように思い語ることができます。
 でも、寄る年波には勝てません。いつも参加していただいていた先輩の中には、キャンパスまでおいでいただくことが適わない方もいらっしゃいます。だんだんと寂しくなってきますが、当日の模様はスライドショーにまとめてお届けすることにいたしました。
 今週のもうひとつのイベントは、アンドリス・ネルソンス指揮のボストン交響楽団のコンサートでした。5年ぶりの来日とのことでしたが、以前聴いたのはいつだったことか。この日はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ピアノは内田光子さん)とショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」でした。フェスティバルホールは、コロナ前と変わらず見る限り満席状態。みんなでボストン響を楽しみました。
 内田さんの曲はレコードやCDでふだんよく聴いていますが、直接お目にかかったのは実は初めてでした。オーケストラに語りかけながら凛々しく対峙される演奏に感銘を受けたものでした。
 2曲目の「革命」。思えば歳をとってから交響曲をまともに聴いたことがなかったように思います。歳のせいでしょうかねえ。若い頃はマーラーを含めて結構楽しんでいたのですが.......。
 ソヴィエト社会主義政権下にあってショスタコーヴィッチも立ち位置にずいぶん苦慮した時期がありました。この日は現在も続くロシアのウクライナ侵攻のことを思いつつ、しかしながらロシアの偉大な作曲家の世界を理解しようと努めもしました。政治と芸術(音楽)。チャイコフスキー、ラフマニノフ、ムソルグスキー、ストラヴィンスキーなど様々な作曲家を生んだロシアの「心」が、現実の世界とあまりにも乖離していて複雑な思いもいたしましたが、とにかく久しぶりに本格的な交響曲を楽しみました。
 そんな余韻を楽しむかのように、昨日はレコード棚から小澤征爾指揮のボストン交響楽団とゼルキンによるピアノ協奏曲「皇帝」を、またレナード・バーンスタイン指揮ニューヨークフィルハーモックによる交響曲「革命」を取り出して楽しみました。

 そういえば、この日、曽根崎の地下にある花次郎さんでコケモモ(クランベリー)を買って帰りました。3個で100円という特価品でした。
 さてさて、秋も深まってきましたが、来週は久しぶりに横浜に出かけてきます。3歳を迎える孫娘の七五三のお祝いに馳せ参じるためです。爺バカもよいところですが、彼女が二十歳を迎える頃にはもうこの世にはいないでしょうからね。(笑)

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丹波の秋を楽しんできました。

2022-11-09 11:07:42 | Weblog

 冬の始まり「立冬」を迎えて、木枯らしこそ吹かないものの、朝夕肩をすくめる季節になりました。ニシキギやカリンなど庭の木々も日増しに色づき始め、徐々に冬に向かって歩き出しました。
 そういえば昨夜は、皆既月食、それも惑星食の同時発生という442年ぶりの天体ショーがありました。世界のどこに行っても見えるお月さまですが、理屈では分かっていても不思議な風景を眺めました。
 そんななか、次の日曜日には大学時代を共に過ごした仲間たちとの同窓会があります。大学紛争後に解散した団体ですから、OB会員は減るこそすれ増えることはなく、対面の同窓会は今回が最後になるかもしれません。
 9月半ばに開催案内を発送したのですが、中には逝去のお知らせがあったり、常連の方からは後期高齢者となり1人で京都に向かうのが難しくなったとか、オリーブの収穫時期と重なったとか、様々。それでも、予定以上の方々にご参加いただけることになり、ほっとひと息です。
 人数が固まったところで、昨日、懇親会を予定しているビアレストランに予約を入れました。若い女性店員さんが手際よく日時、料理等を確認していきます。最後に呑み放題はいかがなさいますかと。「みなシニアですからそんなに呑みません。一、二杯ビールをいただきながら、学生時代に良くお邪魔していたお店でみんなでワイワイガヤガヤ古き良き時代の思い出を語る時間にします」と答えると、その女性、大きな声で「いいですねえ」と。ひょっとしたら同じ大学の現役学生なのかもしれません(笑)。

 さて、先週末ささやかな日帰りバスツアーで丹波篠山に行ってきました。メインは黒大豆枝豆の収穫体験、篠山城址界隈の散策でしたが、最後に立ち寄った十九山「達身寺」が強く印象に残っています。
 達身寺は、奈良時代に行基によって開創され、丹波地域で最も古いお寺の一つと言われています。平安・鎌倉時代の仏像多数を所蔵し、そのうち12躰が国の重要文化財、34躰が県の文化財に指定されているとか。丹波の田園風景が広がる一画にひっそりと佇んでいました。
 茅葺き屋根の風情ある本堂、その横の宝物殿には一木造りの仏像がたくさん並んでいました。でも、中には損傷や風化が進みなんとも痛ましい仏像もあります。その謂れをご住職に尋ねると、廃寺の時期もあったようです。そうしたことを記した古文書が残っていないとも。悲しい長い歴史を経て今日に伝わる仏像を拝見させていただきました。
 この達身寺ですが、本堂を守る茅葺き屋根の修復に合計1600万円が必要とのことで、現在、茅葺き屋根全体の修復費の半分800万円をクラウドファンディングを通じて支援を求めています。
 そうそう、丹波のお土産は「黒豆茶」でした。「血液をさらさらにし、糖尿病・高脂血症・脳卒中・更年期障害・動脈硬化などを防ぐ効果あり」との謳い文句につられてお持ち帰りでした。その香しい黒豆茶を最近、毎日いただいていますが、その効用かどうかは別にして血圧が平常値になっています。このほか、酒蔵巡りで出会った特別純米大吟醸「夢の扉」もお連れしました。音楽振動醸造装置で毎日、モーツアルト40番、ヴェートーベン6番を聴きながら醸造されたお酒です(笑)。

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秋の京都を楽しむ~百万遍知恩寺古本まつり&シンポジウム

2022-11-02 21:40:04 | Weblog

 我が家のカリンの木が赤く色づき始めました。72候ではこの時季のことを「楓蔦黄」(もみじつたきなり)と言い、楓や蔦が色づく季節を表わしています。そんな秋の夜長、久しぶりにグレン・グールド奏でるバッハの「ゴルトベルク変奏曲」(1954年録音盤)を聴いています。
 この1週間は緩急さまざまな日々を過ごしましたが、日曜日は予定どおり京都は百万遍知恩寺秋の古本まつりに出かけました。今年最後の古本まつりです。京阪電車の出町柳駅から歩いて10分ほどの所に知恩寺はあります。道路を挟んで南側には京都大学のキャンパスが広がっています。
 さすがに大学の街・京都とあって、古本の配架も大阪に比べると体系的に並んでいます。その分選書しやすい感じがします。まず手にとったのは鶴見和子著「殺されたもののゆくえ~私の民俗学ノート」。先月、NHKEテレの100分de名著で出会った折口信夫を引きずっていたこともあって、手にとりました。日本が生んだ民俗学の巨人、柳田国男、南方熊楠、折口信夫のひととなりを民俗学の見地から読み解いたものです。田舎育ちの私にとっては非常にみぢかなテーマでもあります。
 次に手にしたのは白木利幸著「四国遍路道 弘法大師伝説を巡る」。秋の深まりとともに、かつて秋の四国路を歩いた風景が心の中に広がります。もう一度出かけてみたい。でも、1200キロの道のりをもう一度歩く勇気がありません。
 そういえば、今朝いつものお不動さんにお散歩に行ったとき、四国八十八カ所の祠が新調されていました。今回は国分寺と横峰寺の2つです。
 石鎚山山麓にある60番札所・横峰寺と言えば、初日に63番札所・吉祥寺までお参りして小松駅にほど近いお遍路専用ビジネス旅館小松に泊まった際、オランダからやってきた女性と夕食を共にしました。リタイアを契機に東南アジア、ネパール、チベットなどを回って日本にやってきてお遍路をしている最中でした。コロナ前は外国人のお遍路さんにもよくお会いしました。考えることは一緒なんでしょうね。
 ふと棚に置いてあったサルトルの「否認の思想」(海老坂武ほか訳)に目が留まりました。「1968年5月のフランスと8月のチェコ」という副題が付いています。懐かしい言葉です。高校3年の最後の文化祭で取り上げたのが「5月革命」でした。サルトルと言えば、ボーボワールを生涯のパートナー(自由恋愛)とした人でもあります。私の世界とはずいぶんかけ離れた存在ではありますが、高校生の頃何を思って「5月革命」に注目したのか思い返してみたいと......。
 この日は他に樋口覚著「淀川下りの日本百景」、徳田和夫・矢代静一著「御伽草子/伊曾保物語」(新潮古典文学アルバム)を連れて帰りました。
 午後からは、京都大学稲盛財団記念館会議室で開かれたシンポジウムを聴いて帰りました。テーマは「成熟時代における生き方と社会の在り方」です。上廣倫理財団寄附研究部門3期目のキックオフになります。門外漢の私ですが、それでも「文理融合」「知の発信」「産官学連携」といった言葉に惹かれます。公共政策、伝統知、心理学、人類学の視点からお若い研究者の熱意が伝わるシンポジウムでした。なんとなく若返った感触をいだいて帰途につきました(笑)。

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