ところで昨日は、吉本興業の株主優待券が溜まっているとかで、大阪育ちの家内に同行して、なんばグランド花月に出かけました。大阪の「お笑い」文化は承知していますが、舞台を直に観るのは初めてでした。驚いたのは、学校が休みになったためか子供たちが多いこと。漫才にしても吉本新喜劇にしても、内容は大人の題材が多いのに、会場には子供たちの笑い声がやみません。
若手漫才師から始まって最後は桂三枝さんの登場です。私のような素人でも、その差は歴然としていました。「KY」ではありませんが、客席の空気を読んで、それに応じて話し方を工夫する。その術は、やはりプロフェッショナルの域です。どんな世界も同じなんだと思いました。
新喜劇の方は、これまたドタバタ劇。かと思うと場内がいやにシ~ンとする「情」の世界。かと思えば、どっと「笑い」が場内を包み込む。この絶妙な展開。これぞ大阪の「お笑い」文化そのものなんでしょう。ひょっとしたら、ここに大阪の強かさ(したたかさ)が隠されているのかも知れません。
公演は3時間ほどかかりました。久しぶりにミナミ(難波)に来たのだからと、花月を出た後、ぶらぶらと道頓堀界隈を散策しました。法善寺横丁にも寄ってきました。40数年前に兄に連れて行ってもらった記憶があります。「包丁一本 さらしに巻いて 旅に出るのも 板場の修業♪」で始まる藤島桓夫の歌「月の法善寺横丁」でご存じの方も多いかと思います。水掛不動尊にお参りをして、もちろんお地蔵さんにお水をかけて願をかけました。近代的な建物が林立している一画に、そのお地蔵さんはおだやかな風情で人の世を眺めているご様子でした。そのあと、お隣にある「夫婦善哉」(めおとぜんざい)というお店で美味しい善哉をいただきました。なかなか老夫婦の風情ではあります。
それで帰ればよいものを、今度はキタ(梅田)に足を伸ばして、大丸百貨店恒例の年末「ふる本市」へ。一時間ほど物色して、この日の収穫は、渡辺崋山の画集、辻邦生著「トーマス・マン」、そして雑誌「現代思想」(丸山眞男特集)でした。家内は陶芸・刺繍・紙人形などの本を漁っていました。
そんなわけで年末の土曜日は、大阪人になりきった長い1日でした。吉本興業グループの企業行動憲章によれば、「誰もが、いつでも笑顔や笑い声をもてる社会の実現」を目指しているのだと。この世知辛い世の中、ものごとを悲観的にばかり考えないで、笑顔で吹っ飛ばす気概も、これまた必要。そんなことを考えながら帰りの電車に乗りました。