心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

真夏の昼下がりに本と遊ぶ ~ テーマは「老い」

2022-07-29 10:15:12 | Weblog

 きのうNPOの事務所に行った帰りに天満橋のジュンク堂書店に立ち寄りました。古本以外の新刊本はネットで電子書籍を取り寄せるケースが多いのですが、店内をぶらりお散歩して手にしたのは、平田オリザ著「ともに生きるための演劇」(NHK出版)と松長有慶著「空海」(岩波新書)でした。オリザさんの本は久しぶりです。「空海」は来週後半に出かける高野山夏季大学の旅のお供にする予定。
 先日、暑い夏の昼下がり、長椅子に横たわって山折哲雄対話集「こころの旅」をぱらぱらとめくっていました。今回のお相手は心理学者の河合隼雄さん、テーマは「フールな老賢者~老年期の心理~」でした。
 この歳になると「老い」をテーマにした雑誌に目が留まります。昨年の春にはNewton「老いの教科書」、つい最近では中央公論6月号「老いと喪失 死と向き合う思想」。嫌ですねえ。でも、今夏72歳になる私に突き付けられた現実的なテーマでもあります。
 対話の中で話題になった発達心理学。人事の仕事をしていた頃に少し噛じったことがありますが、発達心理学は当初「発達の外的な行動を追っている場合が多いので青年期で終わって」しまっていたのだとか。そういえば、ダニエル・レビンソンの「ライフサイクルの心理学」も、中年に入る時期で終わっていました。
 「こころの旅」では、エリク・エリクソンの言葉を引用して、「老年というのは一方の極に絶望を抱え込んでいる。そして、もう一つの極に英知の萌芽が隠されている」と。「過去を振り返り、過去のいろんな心の傷を点検することはわれわれが蘇生するための一種の巡礼の旅のようなもの」とも。そのエリクソンは、人生を乳幼期から高齢期の8段階に分ける「心理社会的発達段階」を提唱しました。
 ここで話題はイングマール・ベルイマンの映画「野いちご」に移りました。1957年の作品で、もちろん白黒映画です。さっそくネットで探しました。そして見つけたのがYouTubeでした。DVDが販売されているのにYouTubeで見ることができるのも変ですが、とにかく1時間30分ほどの映画を見ました。
 ストックホルムで孤独に生きる79歳の老教授が、医学名誉博士の表彰を受けるため久しぶりに車に乗って都会に出かけていきます。その過程で、柩のなかに横たわっている夢を見たり、昔住んでいた屋敷に立ち寄って野いちごを見つけ若い頃の悲恋を回想したり。さらには妻の裏切り、親子の関係、いろんな出来事が浮かんでは消えていきます。
 車での移動には息子と折り合いの悪い義娘が同行します。道すがら若者を含むふた組の人たちを車に同乗させ、彼らと共に行動する。そうこうするうちに、だんだんと堅物の老教授の心が開かれていく。つまり、かつては発達心理学の対象外だった「老人」の心が解きほぐされ新たな境地に至るという意味で成長し発達しているということに気づかせる、そんな映画でした。
 そうなんです。世の高齢者たちはただ立ち止まってぼんやりしているわけではない。「絶望」と「英知の萌芽」。若い頃のように機敏ではないけれど、もう一歩前に進みます。新しい自分に出会うことだってあります。そんな変化(成熟)に気づかせる労作でした。
 山折さんは、名優ヘンリー・フォンダと実娘ジェーン・フォンダが父娘役で共演し、老夫婦とその娘が織りなす心の交流を描いたマーク・ライデル監督の映画「黄昏」(1981年)も紹介しています。昨夜、Amazonに発注しました(笑)。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 この夏は、コロナ急拡大のため長男、次男一家の帰省は見送りになりましたが、きょうは午後から近くに住む孫次男君がお母さんと一緒にお泊りにやってきます。孫長男君は高校受験でそれどころではなさそうです。
 ところで、NPOの仕事が来週から忙しくなります。週末には2泊3日の日程で高野山夏季大学に行く予定もあります。そんなわけで来週のブログ更新はお休みをさせていただきます。皆さまには、この暑い夏をお元気に乗り越えていただけるよう願っています。

コメント

夏祭りに想うこと

2022-07-21 22:28:01 | Weblog

 3年ぶりの祇園祭(山鉾巡行)を覗いてきました。遠くから聞こえてくる祇園囃子に耳を傾けていると、ぼんやりと昔の情景が浮かんでは消えていきます。学生の頃、賄い付きでもないのにお祭りの日には決まってビール1本と祭り寿司(ちらし寿司)を部屋に持ってきてくれた下宿のお婆さん。浴衣姿で友人たちと団扇片手に京の夜を闊歩した若き日々...。
 そもそも夏祭って何でしょう。広辞苑によれば「夏季、みそぎ浄めて病魔・罪穢をはらい、清福を祈請するために行われる祭」とあります。...古き良き時代の7月某日、我が家(実家)の表座敷に隣接して急ごしらえの神社(舞台)が仮設され、夏祭の3日間は笛と太鼓が響き渡っていました。山間の、ふだんは静かな街でしたが、この日ばかりはどこから沸いてきたのかと思うほど人々が集います。お小遣いを握りしめて姉と一緒に夜店を巡ったものでした。
 そんな賑やかな夏祭も終盤が近づいてくると、凛とした笛の音が響き渡ります。ああ、これでお祭は終わるのかと、なんとなく寂しい気持ちになりました。その篠笛の音がお能の舞台をきりっと引き締める笛(能管)の音にそっくりなのです。
 先週、山本能楽堂であった能講座のテーマは「逢坂関の琵琶法師」でした。今昔物語や平家物語にも登場する平安中期の琵琶法師「蝉丸」のお話しです。延喜帝第四皇子でありながら生まれつき盲目のため逢坂山に捨てられる運命。その姉、第三皇女は髪が上に向かって生える狂気さから流浪の身となり「逆髪」と呼ばれました。姉と弟の再会と別離。なんとも悲しいお話しでありました。いつの日にか、ピーという笛の音で始まる舞台を観たいものです。
 そういえば、祇園祭の帰りに立ち寄った古本屋さんで、山折哲雄対話集「こころの旅」(現代書館)を手にしました。お相手は白洲正子、佐佐木幸綱、河合隼雄、松原泰道、杉山二郎/大澤真幸、谷沢永一、山下悦子/森岡正博、芹沢俊介の面々。山折さんには能楽堂で一度お話を伺ったことがあり、なんとなく先生の著書は気になっていました。 
 本を開いて最初のテーマは、白洲正子さんとの対話「象徴としての髪」でした。平安朝では髪の長さが美しさの象徴でもあったし、黒い長い髪の毛は日本の宗教的な伝統のなかでは女神と強く結びついていて、髪の毛をご神体として祀る神社が各地にあるとも言います。
 話は白髪の翁と黒髪の女神、髪の呪力へと展開していきます。髪の毛が逆立つということが死者・亡霊のイメージと繋がるというあたりから、話題はお能の世界に入っていきます。そこで登場するのがなんと能「蝉丸」でした。
 1週間の間に「蝉丸」に2回も出会ったことになります。まもなく72歳を迎えようとしている暑い夏の盛り、祇園祭、夏祭り、横笛、お能、蝉丸、逆髪、象徴としての髪といった言葉が、私の頭の中をぐるぐると駆け巡っています。

 そうそう、朝のお散歩で立ち寄るお不動さんの境内に並ぶ四国八十八カ所の祠。蝉時雨という言葉がありますが、現実の世界から幽玄の世界に紛れ込んだような錯覚を覚える夏の風景でもあります。
 明日は、フランス文学講座を受けたあと、この春亡くなったシニア仲間を偲ぶ会があります。お酒が好きだったので皆で冷たいビールをいただきながら故人を偲ぶことになります。ということで今夜は一日早いブログ更新となりました。

コメント

ヴァイオリンの路上ライブ~カロリーナ・プロツェンコ

2022-07-15 11:03:50 | Weblog

 NPOのFacebookを操作していて何気なくFacebook Watch(フェイスブックウォッチ)を見ていて、カロリーナ・プロツェンコという女の子の路上でのヴァイオリン演奏に目が留まりました。Wikipediaで調べてみると、ウクライナ・キーウの生まれで、「6歳のときに家族と共にカリフォルニア州へ移住した。そこで彼女はヴァイオリンのレッスンを受け始め、2017年の頃からサンタモニカのサードストリートプロムナードで路上ライブを始めた。3つの YouTube チャンネル、Facebook、Instagram にパフォーマンスの映像を投稿したところ、瞬く間に評判となり、2年間で50以上の国に数百万のフォロワーを獲得した」と紹介されていました。

THIS IS SO ROMANTIC - Even The Dog Stopped To Listen | Can't Help Falling In Love - Elvis Presley

 路上ライブ、ストリートライブ。海外旅行に出かけると時々見かけますが、大道芸のひとつでもあります。未だあどけなさが残る若い女性が全身を使ってヴァイオリンを弾きながら自分の心を表現している。ついつい最後まで見てしまいました。彼女だけではなく、彼女の演奏を楽しんでいる街の人々の表情もなんとなくほっこりしています。映像に写っているおじさんのように、私も同じように聴いていたかもしれません。
 若いって本当に良いですね。あれもしたいこれもしたい。いろんなことに挑戦したい。夢が広がります。なによりも、そのわくわく感がたまりません。70を過ぎた私も、日々そんな思いで過ごしてはいますが、60年先を見据えることができる若者と、せいぜい20年前後しか見通せない我々の世代とは、「生」に対する可能性がずいぶん違うような気がします。

 ここ数日、パソコンと睨めっこでNPOの仕事をこなしています。パンフレットの作成、ホームページの作成、FacebookにTwitter。歳と共に緊張感(集中力)が維持できず、ひとつひとつの仕事のスピードはびっくりするぐらいです。シニア対象の教養講座ですが、受ける側も高齢化、講座を支える側も高齢化。外部委託するほどの資金力もありません。さあてどうしたものか.....。それでも皆さまのご期待に沿えるように楽しくはやっています。
 そうそう。画面に映るストリートの風景。あれっ?あの街路樹ってジャカランダの樹ではないかと思ったり......。我が家のジャカランダの苗は、その後少しだけ大きな鉢に植え替えましたが、暑さにもめげず元気に育っています。
 そうこうするうちに7月も半ば。早いですね。72歳のお誕生日を迎える前には、もうひと山お仕事が待っていますが、うまく息抜きをしながら暑い夏を乗り越えたいと思っています。明日は久しぶりに山本能楽堂の「能活」講座を受けてきます。

コメント (4)

人との出会いと幻想文学への誘い

2022-07-08 13:23:13 | Weblog

 いま、2軒先の斜め向かいのお家の解体工事が進んでいます。この地に引っ越してきた当初、ご近所のことが何も分からず多々お世話になった老夫婦がお住まいでした。何年か前に奥様がお亡くなりになり、その後ご主人がお独りでお暮しでしたが、数年前に高齢者施設に入居され、ほどなくしてお亡くなりになって以後、ずっと空き家になっていました。そんなお家があっと言う間に解体されていきます。またひとつ私の街から昭和のカタチがなくなっていくような気がいたします。(ご参考:下の写真は本文とは関係ありません。その昔、京の都から淀川を下って大阪をめざした船が到着する港、それが八軒家浜船着場<画面右奥>でした。)
 そう言えば先日、2018年2月22日付記事「古本展で娘遍礼「お菊残照」に出会う」に対して、ご丁寧なコメントをいただきました。その方は、なんと著者・菊池昭さんのお子さんで、「父の本、お気にかけて頂き、深謝。故人となっても、愛した四国、ごみ拾い、本当は、お遍路に菜の花ロードも作りたい、外国人観光客の勧誘で四国活性化など、やりたいことは、一杯あった様子でした」と記されてありました。
 そんな著者の思いがいっぱいが詰まった娘遍礼「お菊残照」ですが、私は歩き遍路で出会った先達さんからお借りしました。これから歩く四国の土地土地を思い浮かべながら読みました。秋にカナダ・アメリカ旅行に出かけたときも帯同し、長い飛行機旅の中で読み耽ったことを覚えています。ボストンのホテルでお四国の本を読むという一風変わった海外旅行でした。
 帰国したあと、お借りした先達さんにお返ししましたが、何となく手許に置いておきたいと思っていたところ、春先に中之島の中央公会堂で開かれていた「水の都の古本展」でばったりと出会いました。
   さてさて、今週は久しぶりに山本能楽堂に行ってきました。演目は能「雷電」です。比叡山延暦寺の座主・法性坊が、幼いころ親のように養育してくれた菅原道真の霊と出会います。ところが、九州大宰府に左遷された道真の霊は、「冤罪で左遷され死んだので雷となって内裏に行き恨みをはらしたい」と迫ります。これを聞いた法性坊は思い留まるように説得しますが、怒り狂う道真の怨霊は雷神となって御所に現れます。荒れ狂う雷神を前に、法性坊は千手陀羅尼の経文の力で必死で鎮めます。なにやら、雨月物語「白峰」の崇徳上皇と西行法師のやり取りに似ていなくもありません。
 今回は「能からみた日本の宗教」と題するシリーズの第1回目で、シテ(道真の霊)を演じた山本章弘さんと宗教学者・釈徹宗さんとの対談もあり、なかなか興味深い公演でした。次回は8月21日に能「三輪」が演じられます。
 もうひとつお出かけしたのは、シニアの仲間たちとの呑み会です。朝ドラ「ちむどんどん」にちなんで、扇町公園近くのお店「琉球料理と泡盛 てぃーあんだ」に行ってきました。オリオンビール、泡盛を片手に、美味しい沖縄料理を楽しみました。
 そのお店に向かう途中では、久しぶりに天神橋筋商店街にある古書店「天牛書店」に立ち寄り、冷房の効いている店内で一服。「幻想文学の劇場」(學燈社)を連れて帰りました。ただいまNPOの仕事が立て込んでいてじっくりと読む時間はありませんが、夜な夜なページをめくっています。 
 暑い夏を迎えて、ウイズコロナと言いつつ益々元気なシニアたちですが(私も含めて)、ここ数日、新型コロナウイルス感染者が再び増加に転じています。さあてどうなることやら。4回目のワクチン接種券は、まだ届きません。

コメント

夏本番に夏野菜を楽しむ

2022-07-01 09:35:37 | Weblog

 ここ大阪も連日、茹だるような暑さが続いています。そんな朝も何もなければお散歩にでかけますが、幼稚園のスクールバスが走り去り小学生たちの集団登校が終わる頃には人影もまばら。眩しい太陽が照りつける道を歩いて家路につきます。我が家は坂の上の丘を越えたもう少し先にあります。
 そんなある朝、(写真に収めるのを忘れていましたが)裏の庭にある無花果の樹に大きな一番果が食べ頃を迎えていましたので、少し冷やして美味しく「初物」をいただきました。その日はお不動さんの境内で今夏初めて蝉の鳴き声も聞きました。いよいよ夏本番です。
 初物といえば、茄子にキュウリにトウモロコシ。今週の水彩画教室は夏の野菜がテーマでした。「茄子の色はうまく描けているね」「でも構図はもう少し工夫しよう」というのが先生のお言葉でした。
 春季の水彩画教室はこの日が最終日でした。次は9月に再開です。そんなわけで、講座のあと先生を囲んで昼食を兼ねた懇親会を開きました。さて、食事が始ると皆さんマスクを外します。3年ぶりに皆さんの素顔と向き合い、笑顔の絶えない楽しい時間を過ごしました。
 その帰り道、久しぶりに遠回りして堂島地下街を歩いてフェスティバルホールに立ち寄り、先日予約した11月11日のコンサートチケットをいただいて帰りました。
 平日の午後の昼下り、土佐堀川沿いの木陰を歩いて淀屋橋に向かいます。あまりの暑さに道行く人も何となく気だるそう。今年の夏はたいへんな暑さに襲われそうな予感がします。
 そうそう、今年はカボチャを育てています。何週間か前にホームセンターの店先に1個50円で置いてあった貧弱なカボチャの苗をダメ元で買って帰って植えておいたら何となく元気を取り戻して、実がふたつ。まだ蔓の先に小さな雌花が見えます。今回は地面栽培ではなく蔓を上に伸ばす立体栽培に挑戦です。さあてどうなることやら。
 つい先日は、熱帯果樹パッションフルーツを連れて帰りました。数年前にも苗木を買って帰ったことがありますが、そのときは枯らしてしまいました。今回は4個も実が付いています。なんとか定着してほしいと思っています。
 もちろん、ジャカランダの苗も順調です。原産地は熱帯、亜熱帯のよう。暑いのはへっちゃらなんでしょう。人間さまも負けてはいられません。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 最後に、がらりと話題が変わります。先日、スマホでGoogleニュースを見ていて、アプリ「vFlatScan-PDFスキャナーとOCR」なる記事に目が留まりました。本や雑誌、新聞などをスマホカメラで撮影し、その画像を高品質のPDFまたはJPG画像にしたり瞬時にテキストに変換してくれる優れものです。
 もちろん最近のプリンターにはそうした機能は当たり前に付いていますが、スマホで手軽にテキスト(文字)に変換できるのがミソ。試しにパンフレットを写真にとってテキスト変換ボタンを押したら、綺麗にテキスト(文字情報)が出来上がりました。これは便利です。この歳になると、そうそう出番はなさそうですが(笑)、こんな便利なツールを見つけるとついつい使ってみたくなるのが私の性分です。さっそくNPOのお仕事の一部に使わせていただきました。

 こうして暑い暑い夏も、好奇心に身を委ねている間になんとなく過ぎていくのでしょうか.........。

コメント