心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

夕暮れ時の大学キャンパスを歩いて

2021-11-26 16:25:02 | Weblog

 9月下旬の定期検診で、娘のような女医先生「いちど血圧を測ってもらいましょうか」。というわけでここ1,2カ月、朝夕、オムロン製のデジタル自動血圧計 HEM-1000と睨めっこです。まったくもって自覚症状はありません。120台の時もあれば140台後半のときもあります。父が後年血圧の薬を飲んでいたので血筋なんだろうと楽観はしていますが、年末の3カ月検診でどんな判定が出ることやら。でもねえ。好きなものを美味しく食べて呑んでこの歳です。今のところ致命的な病名がつくこともなく楽しい毎日を過ごしています(笑)。
 さてさて、先週、南方熊楠ゼミナールに行ってきました。テーマは「十二支考」。棋界の権威の方から若手研究者の方など幅広な見識に頷いたり、難しくて理解できなかったり。久しぶりにお勉強らしいお勉強をしてきました。
 ある若手研究者の方が、ドイツ民俗研究に絡んで、ロマン派の詩人ブレンターノとアルニムが収集・編集した民謡詩歌集「少年の不思議な角笛」に触れていらっしゃいました。民俗学の場でこんな話題が出るとは思ってもいませんでした。
 グスタフ・マーラーがこの詩歌集に曲を付けています。歩哨の夜の歌、少年鼓笛兵、ラインの伝説、塔のなかで迫害を受けているものの歌、原初の光、魚に説教するパードゥアの聖アントーニウス、むだな骨折り、高き知性への賛歌、この世の生、などなど。
 そのうち「原初の光」と「魚に説教するパードゥアの聖アントーニウス」は、交響曲第2番ハ短調「復活」にも登場する歌です。LPレコード棚からマーラーのLPを探し出して聴いている今日この頃です。
 クラシック音楽と言えば、ショパン国際ピアノコンクールで2位に輝いた反田恭平さん。朝日新聞の記事によると、大手工作機械メーカー「DMG森精機」と協働で、今春、オーケストラを運営する株式会社Japan National Orchestra(JNO)を立ち上げたのだそうです。
 JNOは、DMG森精機が関わる「森記念製造技術研究財団」と、反田さんが代表の会社「NEXUS」が共同で出資。反田さんが社長を務め、20代を中心としたソリスト18人で構成しているのだとか。
 記事によると、主な活動は「①定期公演やソリスト個人の演奏会などを年間50公演②音源制作と配信③音楽サロンでのファンとの交流や演奏指導」。2030年を目途に若手を育成する音楽アカデミーを立ち上げる計画もあるのだそうです。
 森精機さんとは現役時代、幾ばくかの接点もありましたが、機械屋さんが音楽の世界にまでウイングを広げる。意外でもあります。そういう懐の広さが世界に通用する工作メーカーに成長していった原点なんだろうと妙に納得してしまいました。

 ゼミナールが終わったキャンパスに静かに秋の夕暮れが迫っていました。駐輪場からリュックを背負った学生が1人、また1人と自転車に乗って帰っていきます。イチョウの葉が散り始めたひっそりとした大学のキャンパスを歩いていて、ふと学生時代のことを思い出しました。
 私もそういう時代がありました。あの若者たちがこれから歩む50年、いろんなことがあるんでしょうよ。きっと。でも頑張ってほしいなあ。そんなことを思いながら帰途につきました。

 きょうは月1回のフランス文学講座でした。テーマは「『知られざる傑作』(バルザック)と映画『美しき諍い女』」。終了後、講師の先生と次期のテーマについて話し合いました。
 そして明日は、山本能楽堂の「能活:祝言の能 高砂の巻」です。来月5日には能「班女」、狂言「蝸牛」、能「遊行柳」などを楽しむ予定です。

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紅葉を愛でながら自然環境の行く末に思いを馳せる

2021-11-19 11:21:33 | 旅行

 清々しい朝を迎えました。ここ数日出かけていましたので、久しぶりに朝のお散歩としゃれ込みました。お不動さんでは、本堂、大師堂、奥の院とめぐり休憩所でひと休み。リタイアして5年、変わりない動きです。
 奥の院の洞窟には、薄暗い奥に大日如来が鎮座し、そこに至る通路の両脇には小さな不動明王、阿弥陀如来、勢至菩薩、大日如来、文殊菩薩、普賢菩薩、千手観世音菩薩、虚空蔵菩薩が並びます。それぞれに真言が貼ってありますが、サンスクリット語なので意味不明。でも、5年もお参りしていると、死後の世界への安寧の道筋なんだろうなあと思いながら、心の中で真言を唱えることができるようになります。不思議なものです。
 横浜の孫娘が誕生したときのお宮参りも、このお不動さんでした。その孫娘も先日2歳の誕生日を迎え、日々、Amazonフォトにアップされる写真&動画をみると、人差し指と中指を立てて「2歳」と言えるまでになりました。お誕生日にプレゼントした幼児用のペダル無し自転車にまたがって楽しそうに遊んでいます。

 さて、秋も深まるなか、先日急に思い立って日帰りバスツアーで丹波篠山、美山かやぶきの里、そして亀岡から嵯峨へ向かう保津峡沿いのトロッコ列車に乗ってきました。先週の金曜日、数週間前に利用したバスツアーの会社から「明日出発のツアーに空き席が3つあります」というお誘いがあって、それに乗ってしまったというわけです。気ままなものです。今回のお土産は松茸、柿、リンゴ、お米でした。
 この季節、紅葉風景をまじかで見るとほっとします。丹波篠山で立ち寄った洞光寺もそうでした。美山に向かう沿線、保津峡沿いに走るトロッコ列車の車窓から眺める風景も心和むものでした。でも、ひと昔前のように山肌に華やかさがないのが気になります。
 バスの車窓から眺める風景は、なんとなくさらりとしています。車中で家内と話したのは「山肌の色に力がない」ということでした。美しい緑、赤、黄色様々な色が映える北海道の風景に比べて、何かしら弱弱しく感じます。山に「地力」というものがあるとしたら、その「地力」が落ちているのではないかと。温暖化?酸性雨?昔はもっと色鮮やかだったように思いますが、少々お疲れのように見えます。大半の山は下草刈りなどの手入れがされていません。薪を使わなくなったためでしょうか。木材の多くを安価な海外に依存するようになったためでしょうか。森は放置されているようにも思えます。
 途中、大きな山を切り崩して土砂を採取する現場に遭遇しましたし、田畑や山を壊して高速道路の設置工事が進んでいるところもありました。車社会ですからインフラ整備という面では致し方ないとしても、何か大切なものを忘れてはいないかどうか。
 イギリスで開かれた地球温暖化対策を話し合う「COP26」も、各国の思惑が蠢き石炭火力の段階的削減などを盛り込んだ文書を採択して閉幕したのだとか。目先の損得と長期的視野をどう調整していくべきか、難しいところではあります。
 そうそう、明日は南方熊楠ゼミナールがありますので、久しぶりに秋の京都に出かけてきます。南方熊楠といえば、明治の頃、神社合祀令(1906年)に反対したエコロジー思想の先駆者でもありました。神社合祀令とは、一村一社を原則として小社小祠を取り壊し1社に併合する政策ですが、南方は取り壊しによって社祠を取り巻く森林と自然環境が破壊されると反対運動をしたことで知られています。ただ、明日のテーマは「十二支考」ですから、南方のもうひとつのテーマである民俗学が中心になります。

◇   ◇   ◇

【余談】
 コロナが妙な落ち着きをみせるなか、お国の方も行動制限の緩和に大きく舵を切りつつあります。そんななか、先日2年ぶりにシニア受講生十数名と懇親会を開き、呑み語らい楽しいひとときを過ごしました。時々マスクを外しての会食で、久しぶりに相手の顔を眺めながら語る楽しいひととき。目だけを見つめてお話しをするのと違い、隠し事なしに相手の笑顔をまっすぐに見つめ合うことの新鮮さを思いました。第6波ってほんとうに来るんでしょうか。

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秋に想う~土を耕し心を癒す

2021-11-12 19:59:21 | Weblog

 なんとなく過ごしていたら、二十四節気でいうところの「立冬」を迎えました。言うほど寒くはありませんが、時の経つのは本当に早いです。あっという間に今年もあと1カ月半。何か怖いような気がしないでもありません。
 でも、四季折々の風景、空気感を肌で感じることができるのは良いものです。今週前半は庭仕事に汗を流しました。いつも気が向いたときに弄る程度の庭仕事ですので、散らかしっぱなしの道具類を片付けたり、冬を前に不要になったものをロッカーにしまったり......。
 地植えのクリスマスローズのお姿が気になりました。地植えにしてから何年もほったらかしにしていたので、少しお疲れ気味かもとネットで調べてみると、植え替えは11月半ばまでとありました。ならばと、頑張って植え替えることにしました。
 春になると愛くるしい花を咲かせてくれるクリスマスローズですが、恥ずかしいのか花はいつも下を向いています。もう少しお花の表情がみたいなあと思っていました。ということで、今回は地植えから鉢植えに変更してみました。ホームセンターで植え土を買ってきて、根を傷めないように植え替えをしました。全部で5鉢になりました。
 さてさて、水彩画教室は今週が今年最後の講座となりました。これまでやり残していた絵を仕上げたり、みんなの作品を眺めて感心したり。それにしても片手間でやっているからでしょうか。上達が遅いのが気になります(笑)。来年1月半ばから始まるプログラムに受講申込をして、この日は終わりました。下の写真は居間に飾ったコスモスの水彩画です。ルノワールの「アンリオ夫人」の横に置いてみました。ちなみに左上の象さん。家内がせっせと作ったジグソーパズルです。孫たちがお正月にやってくるまで飾っておくそうです。その下のお城も手作りの陶器です。 そうそう、いま月刊誌「芸術新潮」を眺めています。今月の特集は「5人の達人とゆくメトロポリタン美術館~西洋絵画ワンダーランド」です。パート1は「ココが知りたい名画のツボ」、パート2は「進化し続ける美術館。メットにまつわるエトセトラ」。
 考えてみたら、メトロポリタン美術館に行ったのは4年前のことでした。「紅葉のカナダ・アメリカ9日間の旅」が謳い文句のツアーでした。紅葉のローレンシャン高原、モントリオール、ケベック、ボストン、ニューヨークなどを長距離バスで移動しました。まさに海外旅行版「お上りさん」といったところでしょうか(笑)。
 カナダといえばグレン・グールドはトロントの生まれ。そのトロントの街はバスで素通りしただけでしたが、紅葉の時季と重なりカナダの美しい風景と空気感が印象に残っています。そのグールドの母はノルウェーの作曲家グリーグの親類にあたります。コロナのため出発直前に断念した北欧の旅にはいつ行くことができるでしょうか。

◇    ◇    ◇

 話は変わりますが、この時季になると年賀欠礼葉書が届きます。その中に高校卒業後一度だけ同窓会であっただけの友人がいます。欠かさず年賀状で近況報告をしあってきた彼の訃報をお兄さんからいただきました。田舎で数学の教師を務めあげ、退職後はもっぱら趣味の山登りを楽しんでいました。高校時代は進学クラスで隣の席に座り、成績を競い合う間柄。といっても彼は理系、私は文系。年賀状ではお互いに「今年こそは会おう」と添え書きしてきましたが、その約束を果たすことなく先に逝ってしまいました。寂しいです。

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バスに揺られて温泉を巡った北海道

2021-11-05 21:47:33 | 旅行

 我が家の玄関口に立つと、ほんのりとした秋の香りが漂ってきます。キンモクセイです。南側の生垣に植えているキンモクセイが、いま満開です。やはり秋にキンモクセイの香はお似合いです。

 さてさて、珍道中の北海道旅行から無事戻ってまいりました。今回は、ツアーではなく気儘にのんびりと過ごした4日間でした。バスに揺られて2カ所の温泉地を巡り、その土地の風情を楽しみました。
 昨年もちょうどこの時期に札幌を訪ねていますが、新千歳空港から札幌に向かう快速電車の車窓から眺める風景にほっとひと息です。札幌駅に到着すると、まずは観光案内所でパンフレット類を物色、スタッフの方にお勧めコースについてお話しを伺ったあと、ひとまずホテルに入りました。
 部屋で休憩したあと、予約を入れておいたサッポロビール園に向かいました。広い道幅、立ち並ぶ建物、街路樹.....。歩いて30分ほどだったでしょうか。ビール園に着く頃には陽も傾き、赤く紅葉した蔦に覆われるレンガ造りの建物がお出迎えでした。美味しいビールとジンギスカン料理を存分に味わいました。
 翌日は積丹半島に向かうことにしました。朝早く駅前バスターミナルで北海道中央バスの「岬の湯しゃこたん」バスセット券を購入。まずは高速バスに乗って小樽へ。そこで路線バスに乗り換え、余市のニッカウヰスキー北海道工場・余市蒸留所を通過したりしながら2時間あまり。ぼんやりと北の国の景色を眺めながら、時に音楽を聴いたり、本を開いたりして過ごしました。
 実は、「岬の湯しゃこたん」は利用者の減少で収支の改善が望めず2022年1月で休業します。それも今回訪ねた理由のひとつでした。泉質はナトリウム泉(塩化物・炭酸水素塩泉)で、塩分濃度が非常に高い温泉だったので、とろりとした肌触りが身体を癒してくれました。積丹半島の岬を望む露天風呂で、ゆったりまったりのひとときを過ごしました。
 数組の地元の方々もお越しになっていましたが、小樽行きの路線バスに乗ったのは私たち夫婦だけでした。これでは休業もやむを得ないのかなあと思いつつ、きれいな施設なのに残念なことです。
 小樽駅前で途中下車すると、今度は小樽発着「小樽天狗山」バスセット券(1日乗車券)を手に天狗山に向かいました。ロープウエイで山頂に着いたのは陽が落ちる頃。小樽の夜景を楽しみました。
 次の日は、南に転じて定山渓温泉へ。この日も移動手段はバスでした。手にしたのは、じょうてつバスの「森の謌ランチビュッフェ&日帰り入浴券」付きバス乗車券。定山渓のバス停で降車したあと無料バスに乗って支笏洞爺国立公園のひとつ豊平峡に向かい、しばし紅葉の豊平峡ダム界隈を散策しました。ダムの水しぶきと陽の光が織りなす淡い虹が、私たちを歓迎してくれました。
 そのあと鶴雅リゾートスパ「森の謌」に向かいました。「森」をテーマにしたお洒落なホテルで、積丹とはひと味違った露天風呂(ナトリウム塩化物泉)を楽しみ、あとはゆっくり美味しいランチをいただきました。

 緊急事態宣言が解除されて1カ月、観光客の数はまだまだ少なく、夜の時計台界隈もひっそりとしていました。最終日は、朝食の前に北海道庁旧本庁舎、北海道大学キャンパス界隈を散策して帰途につきました。次回のアニバーサリーは50周年(金婚式)になります。5年先と言うことは76歳。そろそろ終活の準備が始まる頃です。生きているかなあ。大丈夫かなあ。

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