心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ハルカス300から大阪平野を望む

2014-07-26 23:00:56 | Weblog

 夏蝉の声で目覚める季節になりました。じっと聴いていると、夏休みを迎えた子供の頃を思い出します。きょうは1日何をして遊ぼうか。とにかく楽しくて仕方がない、そんな屈託のない日々を思い出します。7月も最終週を迎え、なんとなくウキウキ感を抱くのは私だけでしょうか。
 そんな気持ちがそうさせたのでしょうか。今日の土曜休日は、仕事も忘れ、家内と一緒に天王寺のアベノハルカスに出かけました。取り立てて用事があったわけではないのですが、大阪に住む者として一度は登っておきたい高さ300メートル、日本一のっぽのビル「ハルカス」です。
 JR天王寺駅に着くと、道路を挟んで真向いにハルカスは聳えています。2階のチケットカウンターで当日券(1500円)を買うのに30分。16階行きのエレベーター(ハルカスシャトル)に乗るのに20分。16階に着いて展望台エレベーターに乗るのに15分。ところが展望台エレベーターに乗って天上回廊の60階に着く時間は、なんと数分。もの凄い速さでしたが、その間、頭上にはブルーの淡い光が流れて行きました。
 60階、地上300メートル。流石に高いです。昔、子どもたちをよく連れて行った天王寺動物園、今年のお正月に登った通天閣と新世界、古本祭で何度か出かけた四天王寺さん。それらが意外と近いところに点在していて、大阪の地理感を改めて実感しました。


 動物園界隈を眺めていると、その横に大阪市立美術館が見えました。ネットで調べてみると、先週から「こども展」を開催していることが判りました。いつも行き当たりばったりの珍道中を繰り広げる老夫婦は、いったん地上に降りると、そちらに足を向けました。最高気温36度の炎天下を歩いて10分足らずのところにそれはありました。
 サイトによれば、テーマは「描かれた側=モデルとなった子どもの体験と、描いた側=子どもたちの親、または子どもたちと親しい関係にあった画家の想い」。モネ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソをはじめとする18~20世紀の主にフランスで活躍した画家たち47人による86点の作品が出展されていると。作品は、「家族」「模範的な子どもたち」「印象派」「ポスト印象派とナビ派」「フォーヴィスムとキュビスム」「20世紀のレアリスト」と、時系列に並べてありました。土曜日の昼下がり、静かでヒンヤリとした展示室の中で、ゆったりとした時間を過ごしました。
 見終わって美術館を出たのは午後の4時半。もういちどハルカスに戻ると、まずはビアレストラン「SUPER"DRY"あべの」で喉を潤し、少し早めの夕食を楽しみました。そんな休日もあっという間に終わりました。明日は、お仕事で京都にでかけますので、土曜の夜のブログ更新となりました。

コメント

二束の草鞋を脱ぐ

2014-07-19 23:13:05 | Weblog

 いつになったら梅雨が明けるのだろうと思いながら、手許にある「日本の七十二候」を開くと、きょうは第十一節「小暑」の第三十三候「鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)」なのだそうです。鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える意。森の中から飛び出してきそうな、そんな風景が見えてきます。来週半ばには、1年でもっとも暑さの厳しい「大暑」を迎えます。
 そんな暑い夏の盛りの8月に、私は生まれました。いまから64年前のことです。計画どおりなら、再雇用制度は希望していないので、来年3月にめでたく定年退職の予定ですが、週末の会議で、もう1期(2年間)働けとのお達しがありました。ならば、せめて社員と経営陣の二束草鞋は脱がせてほしいと、昨日、退職願を提出しました。常勤という意味では大きく変わることはないはずなのに、これまで社員の退職願を受ける側にいた私が、長年勤めた職場に退職願を提出する。なんとも妙な気もいたします。その夜は家内と細やかなお祝いをしました。
 その後も寝つかれない夜を過ごしました。40数年前、採用試験を受けた時の仲間には1、2年歳上の者もいて、既に定年退職している者がいます。不幸に亡くなった者もいます。組合活動に汗をかいた時期、社内結婚した時期、政争に振り回された時期、何人かのトップと苦楽を共にした時期、......40年間の出来事が走馬灯のように浮かんでは消えていきました。夜が明ける頃、私に課せられた仕事をきちんと仕上げて仕事人生に終止符を打とう、そう自分に言い聞かせて目覚めました。
 話題を変えましょう。1週間を振り返って最初に浮かぶことは、世界的指揮者ロリン・マゼールさんの訃報です。手元のLPレコードにはジャケットに若い頃の写真が載っています。それがCDになると、徐々に風格が増していきます。LPからCD、そしてDVDと媒体の変化とともに、私たちを素晴らしい音楽の世界に案内してくれました。来日公演にも何度か足を運びました。ご冥福をお祈りします。
 LPレコードと言えば、きょうの朝日新聞に「レコード人気復活?」の見出し。レコード人気に復活のきざしが見え、9月にはパイオニアがアナログプレーヤーを発売するのだとか。今でもヨドバシカメラに行けば、アナログプレーヤーが並んでいますが、久々の新製品登場です。レコードの販売も復調の兆しがみえるとも。楽しい話題でした。
 デジタルとアナログ。この鬩ぎ合いについては、このブログで何度か触れたことがあります。電子手帳、スマホ、さまざまな装置を駆使してきました。でも最後は胸ポケットからペンを取り出して紙に書く。しぶとくスマホのスケジュール表やメモ帳に慣れなければと思いつつ、歳のせいかとっさの動きはペンになります。アナログの世界から離れることができないでいます。
 きょうは、若い頃、京都河原町の都レコードで買ったロリン・マゼール指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番のLPレコードを聴きながら、1日早いブログ更新でありました。三連休の中日の明日は、お仕事のためお出かけです。
  そうそう書き忘れていました。今週、東京に出張した際、仕事帰りに神保町に立ち寄りました。今回は、神田古書センター1階の高山本店で品定めでした。この古本屋さんには能楽関係の書がたくさん置いてあります。手にしたのは、多田富雄著「能の見える風景」(藤原書店)でした。あと店先にあった廉価本の中から、谷川徹三著「こころと形」(岩波書店)を見つけました。帰りの新幹線の中で、冷たいビールをいただきながら、ぱらぱら眺めていたら新大阪駅に着きました。

※写真説明:上段2点は先週訪ねた大原三千院の風景です。「往生極楽院」とその界隈にあった「わらべ地蔵」の写真です。心の落ち着ける空間でした。

 

 

コメント

蝋燭能の世界、異次元の世界

2014-07-13 09:43:04 | Weblog

 今朝、愛犬ゴンタ爺さんと朝の散歩にでかけるとき、庭の片隅で孵化したばかりの蝉を見つけました。台風8号が通り過ぎるのを待っていたとばかりに、昨日は今夏初めてミーン、ミーンと夏蝉の声が聞こえました。7月も半ば、もうすぐ梅雨明けでしょうか。
 そういえば、昨年、近所のお婆さんからいただいたホタルブクロ(蛍袋)の花が、ひっそりと咲いています。キキョウ科の多年草でツリガネソウの仲間らしいのですが、初夏に釣り鐘状の花を咲かせます。ホタルフクロの語源は、昔子どもたちが蛍を捕まえてこの花の中に入れて遊んだという説と、花の形が提灯に似ているからという説があるそうですが、なんとなく古き良き時代を思わせます。
 ところで、先週金曜の夜は久しぶりに能楽を楽しみました。題して、大槻能楽堂自主公演能ナイトシアター「蝋燭能」。井沢元彦さんのお話「日本人の鬼の意識」に続いて蝋燭の点灯式が行われ、狂言「金藤左衛門」、能「安達原」が演じられました。
 那智の山伏が諸国行脚中に陸奥の安達が原で貧女のあばら家に宿を借りる。女は、糸繰り車で糸を紡ぎながら自らの境涯を嘆く。女は、一夜の暖をと山に薪をとりにでかける。その際、自分の寝室を覗かないように念押しをする。山伏は、寝室を覗いて肝をつぶす。そこには、死体が累々と打ち重なり、見るもおぞましい有様。さては鬼の住処と気づき、慌てて逃げ出すと、そこに鬼の姿になった女が山から戻ってくる。女は寝室の秘密を暴露された怒りに燃え、襲いかかるが、山伏は呪文を唱えて祈り伏せ、鬼女は夜の闇の中へと消えていく。
 手許の資料によれば、ざっとこんなシナリオですが、なんとおぞましいお話しであることか。でも、その昔、これに近いお話しはなんどか聞いた記憶があります。柳田國男、南方熊楠の世界とも近いものを感じます。これで能楽鑑賞は3回目になりますが、ふだんとは全く異なる時間と空間が、私を異次元の世界に誘いてくれました。姉の死、ホタルブクロ、能の世界、仏の世界。この1週間、ふだんとは違う世界を彷徨っている感があります。
 昨日の土曜休日、自宅でゆっくりしようと思っていたら、家内が「どこかに連れてって」と。あまり遠出もできないので、祇園祭の迫った京都にでかけることにしました。それも、少し都会の喧騒から離れたいと思い、大原の里に足を延ばしました。
 10時過ぎに自宅を出発して大原のバス停に到着したのが正午過ぎ。まずは昼食を兼ねて民宿「大原の里」をめざしました。ここは数年前もおじゃましたところですが、お目当ては温泉(単純温泉:弱アルカリ性低温泉)です。欲張りは言えませんが、温泉は温泉です。露天の五右衛門風呂を楽しんだあと、冷たいビールをいただきながら、少し遅めの昼食をいただきました。
 清々しい気持ちになったところで、バス停まで戻り、今度は三千院に向かいました。こちらも徒歩10数分のところにあります。ちょうど、あじさい祭の時期でした。満開の時期を過ぎていたからでしょうか、あじさいの方は少し元気がないようにお見受けしましたが、大自然の中にある初夏の三千院も風情があります。往生極楽院で国宝の阿弥陀三尊像に手を合わせたあと、境内を散策して帰途につきました。バスで河原町まで戻ると、土用の日はもう少し先ですが、早々と鰻屋さんに寄って帰りました。
 金・土と、ちょっぴり普段とは違う生活空間を過ごしましたが、日頃の硬直した頭脳を和らげてくれました。今週も、いろいろな会議が目白押し。そこに東京出張も加わります。きょうは雨模様ですし、音楽でも聴きながら、ひと休みしましょう。と言いながら、仕事をお持ち帰りでありました。

 

コメント

ホタルが舞う季節

2014-07-06 09:26:24 | Weblog

 7月だというのに、枕元の窓から聞こえる鶯の囀りで目を覚ましました。愛犬ゴンタ爺さんと朝のお散歩をすませると、いつものようにコーヒー豆を挽いて、新聞に目を通しながら朝のコーヒーをいただく。穏やかな休日の朝を迎えました。
 ところで、先週半ば、姉の葬儀のために東京に行きました。享年77歳。まだまだ元気だった姉の急逝でした。姉とは15歳も違います。小さい頃は一緒に暮らしていましたが、小学1年生の時、東京に嫁いで行きました。お通夜の時の話では、嫁ぎ先の父親が長崎高商の出身だったとか。ということは私の父と同窓ということになります。なにやらそんなところにひとつの出会いがあったのかもしれません。いずれにしても、みんなに送られて旅立って行きました。残るは4名。みな私より高齢です。少しずつ今生の暇乞いが近づいてきたような気がしないでもありません。
 話題を変えましょう。塩野七生さんの新潮文庫「ローマ人の物語」の読破を再開したことは以前ご紹介しましたが、いま読んでいるのは32巻「迷走する帝国(上)」です。あの大帝国が崩壊していくプロセスを追いながら、今日の巨大組織、いや巨大国家の行く末を考えます。寛容と多様性のローマ帝国の結末、なかなか興味深いものがあります。
 と、そんなことを考えながら、昨日、家内のお使いで近所のパン屋さんにバゲットを買いに行った帰り道、本屋さんに立ち寄りました。手にしたのは季刊誌「考える人」2014年夏号でした。今回の特集は「文庫 その小さな本の大きな世界」。この見出しが気にいりました。新潮文庫が創刊されて100年、鼎談「やっぱり文庫が好き」など興味深く読み進んでいます。そういえば1週間前には、多様性を考える言論誌「kotoba」季刊誌2014年夏号を眺めました。こちらの特集は福岡伸一監修:生命とはなんだろう?」でした。本の匂いを楽しみながら、週末のひとときを、ふだんとは少し違った世界に身を投じる時間。大事にしたいものです。
 さてさて、今週は久しぶりに病院の定期検診があります。先日、職場の定期健康診断の結果が届きましたが、2年前は眼の精密検査を促され、1年前は前立腺癌と大腸癌の精密検査を促され、そして今回はと言えば、心電図と聴力の精密検査を義務づけられました。まあ、歳相応ということなんでしょうが、先日亡くなった姉の健康診断結果はまったく問題なかったということですから、この世の中、どちらに転ぶか判りません。無理をせず、しかし適度の刺激を受けながら緊張感をもって生きて行く、そんな生き方をしたいものです。
 そういえば、 「考える人」に「ニッポンの里山」と題するエッセイが載っていました。ゲンジボタルが乱舞する岡山県美星町。写真説明に「田んぼと雑木林が入り交じる一昔前の風景。なんでもない風景が珍しくなった」とあります。田舎にいた幼少の頃には、この時期、夜な夜な姉に連れられてホタルを見に行ったことがありました。

コメント