心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

心のうつろい

2011-07-03 09:28:50 | 古本フェア

 きのう土曜日は、節電対策と言うわけでもありませんが、比較的ひっそりとした職場で静かに資料の整理を済ませると、昼過ぎには職場を後にしました。そして、沿線のデパートで開催中の第1回古本市を覗いて、午後の3時過ぎには帰宅しました。

 暑さのせいでしょうか。何かしら身体が重く、ベッドに横になって天上を見つめていたら、いつの間にかぐっすりと眠ってしまいました。1時間ほどたった頃、庭先でママを呼ぶ近所のお子さんの声で目が覚めて、でも起き上がる勇気もなく、何を考えるでもなく、ぼおっとしていました。すると、夕暮れ時の静けさのなか、街の音のひとつひとつがいやに鮮明に聞こえてきました。.....夕刊配達の音、軒先で羽根を休めるスズメの会話、自転車が通過する音、遠くからはカラスの鳴き声、高い空の上を飛ぶ飛行機の微かな音、愛犬ゴンタが昼寝から目覚めた音、お隣のご主人が芝を刈る音、散水する音、ちりんちりんと鐘を鳴らしながら通りすぎるお豆腐屋さん、何か知らないけれどジーと聞こえる微かな低周波と思しき音、......いつもどおりの平和な空気が街に漂っています。
 ふと思いました。わたしの人生も、このまま静かに終わっていくのだろうか。なぁんて、ぼんやり考えてしまいました。動と静。急と緩。生と死。慌ただしく過ぎていく日々を思いながら、この落ち着きのなさはいったいなんなのか。そんなことをぼんやりと考えました。

 ところで、きのう立ち寄った古本市は、デパートの一画での開催でしたから、それほど広いスペースいではありませんでしたが、それでも20社ほどの書店が集まり、幅広の古本が揃っていました。ほかに、古地図、絵はがき、写真、昭和30年代の雑誌、ふだんなかなかお目にかかれない古書籍もあり、あっという間に時間がたってしまいました。
 この日手にしたのは「グレン・グールド書簡集」(みすず書房)。定価6800円を4000円でのご購入でした。グールドの本はとにかくお高いので、古本で購入するに限ります。あと、たくさんの歌を作詞した相馬御風の著書2冊「一人想う」と「道限りなし」。しめて800円......。
 まったく整合性のない二種類の本を手にして、私の心のうつろいを思いました。「今」を突っ張って生きている自分を癒してくれるグールド、すべての柵(しがらみ)から解放された一人の人間の生き様を思うときに浮かんでくる御風。そうそう、御風の「一人想う」の緒言に、こんな一節がありました。

『私が五十歳を迎へたのは、昭和七年であった。そしてその前後に於てほど深刻な人生の経験にぶつかったことは嘗てなかった。それでいてどういうわけか、さうした間にありながらも、心のどん底には自然を、人生を、自己を向ふへ投げ出して味ふことの出来る一種微妙なゆとりの存したことも、われながら不思議なほどの事実であった。本書はかうした私の五十歳前後数年間の身辺雑記と、その間に観たり味わったり想ったりして来たさまざまの印象や感想の覚え書きを一まとめにしたものである。』
 その昔、インターネットが発達していたら、相馬御風さんは新潟県糸魚川の自宅でブログを立ち上げていたかもしれませんね。50歳という人生の節目に、いったん足元を見つめ直してみる。これって、「心の風景」に通じるものがあります。47歳でホームページを立ち上げたあと、このブログに移行したのが54歳。やはり50歳って、何かの節目なのかもしれません。
 昨夜は、グレン・グールドの著作集を眺めながら、眠りにつきました。そして今は、グールドのCD「images」を聞きながらブログ更新をしています。明日は、久しぶりに日帰りで東京に出かけてきます。

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