5月は頑張って24冊。
まずはミステリーが9冊。
◆扉は閉ざされたまま(石持浅海) (祥伝社文庫)
06年の「このミス」「本格ミステリ」2位作品。最初っから犯人のわかっている倒叙ミステリーです。ちなみに1位は同じ倒叙ミステリで直木賞受賞作の東野圭吾「容疑者Xの献身」。
同窓会で昔の仲間を事故に偽装して密室で殺人、完璧と思われた伏見のトリックが、優佳によって暴かれていく。犯人は最初から明かされているので動機を推理しながら読んでいたのですが、うーん、これはわからなかった。
警察は分かったのか、優佳は話したのか、伏見は優佳を押し倒したのか、すごく気になります。
◆ノックス・マシン(法月綸太郎)(角川文庫)
14年の「このミス」「ミステリが読みたい」1位作品。
以前図書館本で読んで今一つ理解できなかったので、文庫本が出たのを機に購入してみたのだが、やはり難解。
「ノックス・マシン」は、難しく考えずに、実在するノックスの十戒をネタにしたタイムパラドックスものSFということにしました。
「引き立て役倶楽部の陰謀」はクリスティ失踪事件をネタにした自虐ネタ的パロディもので作者のクリスティ愛を感じました。
「バベルの牢獄」も難しく考えても意味がなさそう。その流れで「ノックスマシン2-論理蒸発」も難しく考えるのを止めました。
「アクロイド殺し」「シャム双子の謎」を読んでから出直します。
◆孤狼の血(柚月裕子)
第154回直木賞候補作、こてこての極道ものです。
主人公は一匹狼刑事、山上。語り部はその部下の日岡。舞台は昭和63年の広島、ジッポーのライターとか道具立てが古いなと思ったのですが、もう30年近く昔の話になるのですね。昭和は遠くなりました。
闇金の社員失踪事件ときな臭さを増す極道同士の抗争、明らかに常軌を逸脱、違法行為に手を染めつつも、抗争を収束させようと奔走する大上、型破りな上司に最初は反発しながらも惹かれていく部下、王道の刑事ものの展開に安心してハラハラできるサスペンスでした。
◆片桐大三郎とXYZの悲劇(倉知淳)
元ネタの「ドルリー・レーン四部作」は未読ですが、パロディになっているみたいですね。こちらタイトルには「悲劇」の文字が入っているが、コメディです。故三船敏郎さんを思わせる大物俳優、片桐大三郎が、警察の依頼を受けて意外な推理力を発揮するのですが、それに至るまでの警察の無能っぷりとか、突っ込みどころは多々あり。
でも、まあ、細かいところにはこだわらずに、時代劇オーラを身にまとって周囲を振り回しながら事件を解決する大三郎に喝采するのが、この本の正しい楽しみ方なのかな。
◆陰の季節(横山秀夫) (文春文庫)
「64(ロクヨン)」映画化記念に、D県警シリーズ第1作を読んでみた。
犯罪の出てこない警察小説。なによりも組織の論理、組織内だけに通用する常識が優先する究極の官僚社会。そんな組織の中で正義を貫くためには、まず組織に巻かれなければならない。その中で力をつけて初めて、正義を実行するためのステージに立てる。組織内の虚々実々の駆け引きを赤裸々に描く横山さん、映画の64では、二渡さん役、仲村トオルさんみたいですね。
◆オーダーメイド殺人クラブ(辻村深月) (集英社文庫)
傑作。
実際に死んでしまう中学生がめったにいないのと同じくらい、死にたいと思ったことが一度もない中学生もめったにいないのではないか。だからこれは中二病なのだ。あとから思い出して途方もなく恥ずかしくなるか、子供だった自分が懐かしくいとおしく思えるかは人それぞれだけど。
もしかしてアンと徳川は例外で本当に死んでしまうのではないかとさんざんハラハラさせて、このラストはほとんどコメディ。
直木賞候補になりながら年配の先生方から酷評された作品だけど、自分は賞をとった「鍵のない夢を見る」より断然こっちの方が好きです。
◆郵便配達は二度ベルを鳴らす(ジェームズ・M.ケイン)(新潮文庫)
題名の割には、郵便配達人は一度も出てきません。ハードボイルドな悪漢小説でした。
こういう善悪の感覚のない人を主人公にした小説、自分勝手な言い訳、犯罪も思い付きで思慮が浅い。結果オーライでうまくいき、互いに疑心暗鬼になりながらもなんとか二人だけの幸せをつかみそうになったところで、でも、日本人的に考えれば、お天道様は見ている、天罰ですかね。
何とも後味の悪いお話ではありました。
◆インディゴの夜(加藤実秋) (集英社文庫)
ホストクラブ「indigo」のふざけたメンバーが繰り広げるライト・ミステリー。難しい本の合間に読むにはちょうどいいかも。
◆僕だけがいない街 Another Record(一肇)
漫画のノベライズではない、スピンオフというか、後日譚。
高裁で八代に一転無罪判決が出て検察が上告、最高裁での八代の国選弁護人がケンヤという、そんな話。最後はずいぶんときれいにまとめてしまったというか、何というか。
普通の小説が9冊。
◆羊と鋼の森(宮下奈都)
第144回直木賞候補作、2016年本屋大賞受賞作。みずみずしく、流れるような文章で、純文学っぽい作品でした。
高校生の時に、ふとしたことで一生ものの目標に出会ってしまった外村くん、周囲も良い人ばかりで、悩みながらも順調に成長していく、うらやましいお話です。
調律という職人芸的な仕事に対する比喩表現が豊かで、静謐な、森の匂いのする作品に仕上がっていました。宮下奈都さんの作品は「太陽のパスタ、豆のスープ」しか読んでいなかったので、作者の印象が変わりました。
◆死んでいない者(滝口悠生)
第154回芥川賞受賞作。
登場人物が多いので、家系図を書きながら読みました。私も兄弟が2人、父は一人っ子なのですが母が5人兄弟なので、叔父伯母が8人、いとこが9人います。いとこの中では私が最年長、一番下のいとことは20歳以上離れている。法事で集まると大体こんな感じ、そんなときしか会わない人もいる割には、でもやっぱり身内なわけで、その距離感が不思議だったり、ちょっとだけ滑稽だったり。
これもまた故人がつくった人の縁。そんな情景を、複眼的な視点で、ユーモアも交えて語った何とも味のある作品です。
◆おれのおばさん(佐川光晴)(集英社文庫)
名門進学校に通う陽介をみまった突然の不幸、父が横領で逮捕され、学校を退学、家族と離れて札幌の伯母の養護施設での生活を余儀なくされる。
型破りの伯母、そして養護施設の仲間たち。子供は保護者がいなければ何もできない。ダメな親の前では無力。それでもそれなりに前を向いて生きていこうとする彼らに拍手です。
◆生きる(乙川優三郎)(文春文庫)
第127回直木賞受賞作。
それにしても武士とは不自由なもの。表題作の「生きる」は藩主の死に際し殉死を禁じられた初老の武士、「早梅記」は出世の階段をのぼりつめた隠居した初老の武士、ともに生きる意味を見失いそうになりながら来し方を振り返り、一縷の光明を見出す。
「安穏河原」は武家の親娘の壮絶なまでに清貧な生きざまが無頼の若者の生き方を変える、そこがこの話の救いなのかな。直木賞にふさわしい、抑制の効いた、静謐な歴史小説。
◆人魚ノ肉(木下昌輝)
デビュー作がいきなり直木賞候補となった著者の2作目、本作も昨年の山本周五郎賞候補になっており、先にこっちを読んでみた。
不老不死の八尾比丘尼伝説がある人魚の肉を、こともあろうに幕末の勤王の志士や新選組が食らって妖となってしまう。史実が巧妙に猟奇譚に書き換えらた野心作、というかトンデモ本?今までにない歴史小説、これはこれでありかも。
◆ちょんまげぷりん(荒木源)(小学館文庫)
タイムスリップもののお仕事小説、子育て小説でしょうか。安兵衛さん、江戸時代ではこれといった仕事がなかったのですね。ちょっと展開が安易な気はしますが、まずまず楽しめました。
◆世にも奇妙な君物語(朝井リョウ)
「シェアハウさない」「リア充裁判」「立て!金次郎」「13.5文字しか集中してよめな」「脇役バトルロワイアル」、まさにTVの「世にも奇妙な物語」っぽい短編集。シュールな怖さにちょっとだけのユーモア。単なる短編かなと思わせて最後のでなるほどと納得させる、伊坂幸太郎さん張りのうまさ。個人的には「13.5文字しか集中してよめな」が一番怖くて面白かった。「脇役バトルロワイアル」には、にやり( ̄▽ ̄)、ですね。
◆四十九日のレシピ (伊吹有喜)(ポプラ文庫)
しばらく積読本になっていたのだが、「小泉今日子書評集」の小泉さんの書評がすごく印象的だったので読んでみた。
最初は普通の話かなと思っていたのだが、そんなラストが用意してあったなんて「ずるいよ」って思ってしまった。良い話でした。
小泉さんの書評同様、自分も、死ぬときは、誰かの心の中にほんのりとした思い出を残したい、そう思った。
◆幹事のアッコちゃん(柚月麻子)
アッコちゃんシリーズも3作目だが、うーん、2作目を読んでいない。まあ、いいか。
いつも元気で前向きなアッコちゃんでした。自分も仕事に関係ないつながりを大切にしたいと思います。
辻村さんのエッセイとキョンキョンの書評集。
◆図書室で暮らしたい(辻村深月)
文句なしに好きな作家さんです。
「輪るピングドラム」をここまで熱く語る直木賞作家はいません。僭越にもこの人は私の同類項だって思いました。「ハケンアニメ」の王子って、監督の幾原邦彦さんですよね。
◆小泉今日子書評集
小泉今日子さんが読売新聞の読書委員として書いた、97冊の本の書評集。
まずは彼女の表現力、文章力に脱帽、自分もこういう書評を書いてみたいと心から思いました。
映画「毎日かあさん」で、少し逞しくなった二の腕を見て、いい感じに歳を取られたなと思いました。この書評も、本を自分の人生と絡めて自然体で綴られています。
素敵に人生を重ねられた小泉さん、改めてファンになりました。
ちなみに既読本は14冊、気になった本を数冊ピックアップして読んでみます。
なんとなくAKB本を2冊
◆リーダー論 (高橋みなみ)(講談社AKB48新書)
実際にペンを取ったのが本人かどうかは別として、彼女らしい実践的なリーダー論でした。
リーダーシップの取り方は、カリスマとファシリテーターの2つに大別されますが、彼女の場合は、ファシリテーターを突き詰めたら結果カリスマ的なところまで上りつめてしまったという感じ。
へらへらして垣根を下げて、ありがとうを連発し、声掛けして相手の本音を聞く、コミュニケーションの取り方も、スピーチの七か条も、下手なビジネス本より理に適っていて、さすがたかみなと思わせられました。
◆逆転力 ~ピンチを待て~(指原莉乃) (講談社 MOOK)
11年の正月に実弟に会った際に、彼が「押しメンは指原」と言ったのを聞いてかなりびっくりした記憶があります。それから指原の快進撃は始まりました。
12年の総選挙の直後に週刊文春にスキャンダルが載った時は正直終わったと思いましたが、どん底からの復活劇、常識では測れない女です。
計算高い、付和雷同、信念がない、いろんなことが言われたり、自分で言ったりしてますが、アイドルとして常識破りの人なんだなということは分かりました。彼女の処世術とへこたれない強さに拍手です。
逆説の日本史全21巻、とりあえず完読。
◆逆説の日本史 21 幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎(井沢元彦)
全21巻中10巻を費やした江戸時代がやっと終わり、御一新まで来ました。
薩長のやり口は陰湿、卑怯、乱暴。でも、徳川幕府も本来は豊臣家を殲滅して天下を手中にした軍事政権。それが武を忘れ官僚化し、危機管理能力を喪失して滅ぶ、因果応報というか、歴史は繰り返すというか。新しいものの方が環境対応能力に優れているわけで、徹底したリセットはやはり日本にとってよかったのかな。幕軍に勝海舟がいてくれたことが幸いでした
◆人生ドラクエ化マニュアル - 覚醒せよ! 人生は命がけのドラゴンクエストだ! -(JUNZO)
過去にドラクエにはまり、徹夜でゲームをしたことも数知れずのため、題名に惹かれてつい手に取ってしまった。簡単な本で、1時間くらいで読めてしまいました。どこかで聞いたことのある話の寄せ集めのようで、特に目から鱗の新しい話はなかったのですが、なんとなくためになったような気もします。
まずはミステリーが9冊。
◆扉は閉ざされたまま(石持浅海) (祥伝社文庫)
06年の「このミス」「本格ミステリ」2位作品。最初っから犯人のわかっている倒叙ミステリーです。ちなみに1位は同じ倒叙ミステリで直木賞受賞作の東野圭吾「容疑者Xの献身」。
同窓会で昔の仲間を事故に偽装して密室で殺人、完璧と思われた伏見のトリックが、優佳によって暴かれていく。犯人は最初から明かされているので動機を推理しながら読んでいたのですが、うーん、これはわからなかった。
警察は分かったのか、優佳は話したのか、伏見は優佳を押し倒したのか、すごく気になります。
◆ノックス・マシン(法月綸太郎)(角川文庫)
14年の「このミス」「ミステリが読みたい」1位作品。
以前図書館本で読んで今一つ理解できなかったので、文庫本が出たのを機に購入してみたのだが、やはり難解。
「ノックス・マシン」は、難しく考えずに、実在するノックスの十戒をネタにしたタイムパラドックスものSFということにしました。
「引き立て役倶楽部の陰謀」はクリスティ失踪事件をネタにした自虐ネタ的パロディもので作者のクリスティ愛を感じました。
「バベルの牢獄」も難しく考えても意味がなさそう。その流れで「ノックスマシン2-論理蒸発」も難しく考えるのを止めました。
「アクロイド殺し」「シャム双子の謎」を読んでから出直します。
◆孤狼の血(柚月裕子)
第154回直木賞候補作、こてこての極道ものです。
主人公は一匹狼刑事、山上。語り部はその部下の日岡。舞台は昭和63年の広島、ジッポーのライターとか道具立てが古いなと思ったのですが、もう30年近く昔の話になるのですね。昭和は遠くなりました。
闇金の社員失踪事件ときな臭さを増す極道同士の抗争、明らかに常軌を逸脱、違法行為に手を染めつつも、抗争を収束させようと奔走する大上、型破りな上司に最初は反発しながらも惹かれていく部下、王道の刑事ものの展開に安心してハラハラできるサスペンスでした。
◆片桐大三郎とXYZの悲劇(倉知淳)
元ネタの「ドルリー・レーン四部作」は未読ですが、パロディになっているみたいですね。こちらタイトルには「悲劇」の文字が入っているが、コメディです。故三船敏郎さんを思わせる大物俳優、片桐大三郎が、警察の依頼を受けて意外な推理力を発揮するのですが、それに至るまでの警察の無能っぷりとか、突っ込みどころは多々あり。
でも、まあ、細かいところにはこだわらずに、時代劇オーラを身にまとって周囲を振り回しながら事件を解決する大三郎に喝采するのが、この本の正しい楽しみ方なのかな。
◆陰の季節(横山秀夫) (文春文庫)
「64(ロクヨン)」映画化記念に、D県警シリーズ第1作を読んでみた。
犯罪の出てこない警察小説。なによりも組織の論理、組織内だけに通用する常識が優先する究極の官僚社会。そんな組織の中で正義を貫くためには、まず組織に巻かれなければならない。その中で力をつけて初めて、正義を実行するためのステージに立てる。組織内の虚々実々の駆け引きを赤裸々に描く横山さん、映画の64では、二渡さん役、仲村トオルさんみたいですね。
◆オーダーメイド殺人クラブ(辻村深月) (集英社文庫)
傑作。
実際に死んでしまう中学生がめったにいないのと同じくらい、死にたいと思ったことが一度もない中学生もめったにいないのではないか。だからこれは中二病なのだ。あとから思い出して途方もなく恥ずかしくなるか、子供だった自分が懐かしくいとおしく思えるかは人それぞれだけど。
もしかしてアンと徳川は例外で本当に死んでしまうのではないかとさんざんハラハラさせて、このラストはほとんどコメディ。
直木賞候補になりながら年配の先生方から酷評された作品だけど、自分は賞をとった「鍵のない夢を見る」より断然こっちの方が好きです。
◆郵便配達は二度ベルを鳴らす(ジェームズ・M.ケイン)(新潮文庫)
題名の割には、郵便配達人は一度も出てきません。ハードボイルドな悪漢小説でした。
こういう善悪の感覚のない人を主人公にした小説、自分勝手な言い訳、犯罪も思い付きで思慮が浅い。結果オーライでうまくいき、互いに疑心暗鬼になりながらもなんとか二人だけの幸せをつかみそうになったところで、でも、日本人的に考えれば、お天道様は見ている、天罰ですかね。
何とも後味の悪いお話ではありました。
◆インディゴの夜(加藤実秋) (集英社文庫)
ホストクラブ「indigo」のふざけたメンバーが繰り広げるライト・ミステリー。難しい本の合間に読むにはちょうどいいかも。
◆僕だけがいない街 Another Record(一肇)
漫画のノベライズではない、スピンオフというか、後日譚。
高裁で八代に一転無罪判決が出て検察が上告、最高裁での八代の国選弁護人がケンヤという、そんな話。最後はずいぶんときれいにまとめてしまったというか、何というか。
普通の小説が9冊。
◆羊と鋼の森(宮下奈都)
第144回直木賞候補作、2016年本屋大賞受賞作。みずみずしく、流れるような文章で、純文学っぽい作品でした。
高校生の時に、ふとしたことで一生ものの目標に出会ってしまった外村くん、周囲も良い人ばかりで、悩みながらも順調に成長していく、うらやましいお話です。
調律という職人芸的な仕事に対する比喩表現が豊かで、静謐な、森の匂いのする作品に仕上がっていました。宮下奈都さんの作品は「太陽のパスタ、豆のスープ」しか読んでいなかったので、作者の印象が変わりました。
◆死んでいない者(滝口悠生)
第154回芥川賞受賞作。
登場人物が多いので、家系図を書きながら読みました。私も兄弟が2人、父は一人っ子なのですが母が5人兄弟なので、叔父伯母が8人、いとこが9人います。いとこの中では私が最年長、一番下のいとことは20歳以上離れている。法事で集まると大体こんな感じ、そんなときしか会わない人もいる割には、でもやっぱり身内なわけで、その距離感が不思議だったり、ちょっとだけ滑稽だったり。
これもまた故人がつくった人の縁。そんな情景を、複眼的な視点で、ユーモアも交えて語った何とも味のある作品です。
◆おれのおばさん(佐川光晴)(集英社文庫)
名門進学校に通う陽介をみまった突然の不幸、父が横領で逮捕され、学校を退学、家族と離れて札幌の伯母の養護施設での生活を余儀なくされる。
型破りの伯母、そして養護施設の仲間たち。子供は保護者がいなければ何もできない。ダメな親の前では無力。それでもそれなりに前を向いて生きていこうとする彼らに拍手です。
◆生きる(乙川優三郎)(文春文庫)
第127回直木賞受賞作。
それにしても武士とは不自由なもの。表題作の「生きる」は藩主の死に際し殉死を禁じられた初老の武士、「早梅記」は出世の階段をのぼりつめた隠居した初老の武士、ともに生きる意味を見失いそうになりながら来し方を振り返り、一縷の光明を見出す。
「安穏河原」は武家の親娘の壮絶なまでに清貧な生きざまが無頼の若者の生き方を変える、そこがこの話の救いなのかな。直木賞にふさわしい、抑制の効いた、静謐な歴史小説。
◆人魚ノ肉(木下昌輝)
デビュー作がいきなり直木賞候補となった著者の2作目、本作も昨年の山本周五郎賞候補になっており、先にこっちを読んでみた。
不老不死の八尾比丘尼伝説がある人魚の肉を、こともあろうに幕末の勤王の志士や新選組が食らって妖となってしまう。史実が巧妙に猟奇譚に書き換えらた野心作、というかトンデモ本?今までにない歴史小説、これはこれでありかも。
◆ちょんまげぷりん(荒木源)(小学館文庫)
タイムスリップもののお仕事小説、子育て小説でしょうか。安兵衛さん、江戸時代ではこれといった仕事がなかったのですね。ちょっと展開が安易な気はしますが、まずまず楽しめました。
◆世にも奇妙な君物語(朝井リョウ)
「シェアハウさない」「リア充裁判」「立て!金次郎」「13.5文字しか集中してよめな」「脇役バトルロワイアル」、まさにTVの「世にも奇妙な物語」っぽい短編集。シュールな怖さにちょっとだけのユーモア。単なる短編かなと思わせて最後のでなるほどと納得させる、伊坂幸太郎さん張りのうまさ。個人的には「13.5文字しか集中してよめな」が一番怖くて面白かった。「脇役バトルロワイアル」には、にやり( ̄▽ ̄)、ですね。
◆四十九日のレシピ (伊吹有喜)(ポプラ文庫)
しばらく積読本になっていたのだが、「小泉今日子書評集」の小泉さんの書評がすごく印象的だったので読んでみた。
最初は普通の話かなと思っていたのだが、そんなラストが用意してあったなんて「ずるいよ」って思ってしまった。良い話でした。
小泉さんの書評同様、自分も、死ぬときは、誰かの心の中にほんのりとした思い出を残したい、そう思った。
◆幹事のアッコちゃん(柚月麻子)
アッコちゃんシリーズも3作目だが、うーん、2作目を読んでいない。まあ、いいか。
いつも元気で前向きなアッコちゃんでした。自分も仕事に関係ないつながりを大切にしたいと思います。
辻村さんのエッセイとキョンキョンの書評集。
◆図書室で暮らしたい(辻村深月)
文句なしに好きな作家さんです。
「輪るピングドラム」をここまで熱く語る直木賞作家はいません。僭越にもこの人は私の同類項だって思いました。「ハケンアニメ」の王子って、監督の幾原邦彦さんですよね。
◆小泉今日子書評集
小泉今日子さんが読売新聞の読書委員として書いた、97冊の本の書評集。
まずは彼女の表現力、文章力に脱帽、自分もこういう書評を書いてみたいと心から思いました。
映画「毎日かあさん」で、少し逞しくなった二の腕を見て、いい感じに歳を取られたなと思いました。この書評も、本を自分の人生と絡めて自然体で綴られています。
素敵に人生を重ねられた小泉さん、改めてファンになりました。
ちなみに既読本は14冊、気になった本を数冊ピックアップして読んでみます。
なんとなくAKB本を2冊
◆リーダー論 (高橋みなみ)(講談社AKB48新書)
実際にペンを取ったのが本人かどうかは別として、彼女らしい実践的なリーダー論でした。
リーダーシップの取り方は、カリスマとファシリテーターの2つに大別されますが、彼女の場合は、ファシリテーターを突き詰めたら結果カリスマ的なところまで上りつめてしまったという感じ。
へらへらして垣根を下げて、ありがとうを連発し、声掛けして相手の本音を聞く、コミュニケーションの取り方も、スピーチの七か条も、下手なビジネス本より理に適っていて、さすがたかみなと思わせられました。
◆逆転力 ~ピンチを待て~(指原莉乃) (講談社 MOOK)
11年の正月に実弟に会った際に、彼が「押しメンは指原」と言ったのを聞いてかなりびっくりした記憶があります。それから指原の快進撃は始まりました。
12年の総選挙の直後に週刊文春にスキャンダルが載った時は正直終わったと思いましたが、どん底からの復活劇、常識では測れない女です。
計算高い、付和雷同、信念がない、いろんなことが言われたり、自分で言ったりしてますが、アイドルとして常識破りの人なんだなということは分かりました。彼女の処世術とへこたれない強さに拍手です。
逆説の日本史全21巻、とりあえず完読。
◆逆説の日本史 21 幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎(井沢元彦)
全21巻中10巻を費やした江戸時代がやっと終わり、御一新まで来ました。
薩長のやり口は陰湿、卑怯、乱暴。でも、徳川幕府も本来は豊臣家を殲滅して天下を手中にした軍事政権。それが武を忘れ官僚化し、危機管理能力を喪失して滅ぶ、因果応報というか、歴史は繰り返すというか。新しいものの方が環境対応能力に優れているわけで、徹底したリセットはやはり日本にとってよかったのかな。幕軍に勝海舟がいてくれたことが幸いでした
◆人生ドラクエ化マニュアル - 覚醒せよ! 人生は命がけのドラゴンクエストだ! -(JUNZO)
過去にドラクエにはまり、徹夜でゲームをしたことも数知れずのため、題名に惹かれてつい手に取ってしまった。簡単な本で、1時間くらいで読めてしまいました。どこかで聞いたことのある話の寄せ集めのようで、特に目から鱗の新しい話はなかったのですが、なんとなくためになったような気もします。
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