2月は15冊と少なめでした。
ハワイへ行く機中と、インフルエンザで寝込んでいた時の熱が下がり始めた2日間は、結構読書にいそしんだのですが、後半息切れ。
ミステリーを4冊。
◆屍人荘の殺人(今村 昌弘)
過去にゾンビものは色々あれど、ゾンビ自体をクローズサークルづくりや殺人の道具立てにしたところが斬新。本格ミステリーだけど、主人公っぽかった明智さんがあっさり死んじゃったり、懲悪ものでありながらやられる側にもちょっと良いところがあったりと、エンタメ小説としても実に面白い。「このミス」「本格ミステリ」ダブル1位、本屋大賞ノミネートも納得の1冊。
◆満願 (米澤 穂信)
山本周五郎賞、ミステリー三冠を取った米澤さんの短編集。昔図書館本で単行本を読んだが、文庫本になったので購入・再読。
それぞれの作品は何のつながりもない。時代も、登場人物もバラバラ。でも今読んでも、どの作品にもなんとも言えないすごみがある。初読の時よりも強い読後感があった。
◆いくさの底(古処 誠二)
若い頃、中国に出征していた祖父から良く戦争の話を聞かされた。中国は首都南京が陥落しても降伏をせず、終わりの見えない戦争状態が続く。広大な占領地に駐屯する軍隊の地元民とのふれあいと平穏な日常、見回り中の便衣兵の狙撃による突然の死、住民に紛れたスパイの探索、ほぼこの小説のとおりの、我々の通常の認識とはとは違う戦争の実態がそこにあった。
日常っぽい非日常の中で、このようなこともきっとあったのだろうなと思わせる、私にとっては格別のミステリー。
◆ワルツを踊ろう(中山 七里)
限界集落に住まう自己中心で排他的な老人たちに必死に溶け込もうとする溝畑了衛だが、悲劇的な結末に。被害者に同情の気持ちはわかないけど、了衛の発想もなんかおかしい。ただ、序盤で黒幕や展開が読めてしまったので、、、
歴史小説を4冊。
◆宇喜多の捨て嫁 (木下 昌輝)
これも単行本で読んだものを文庫で再読。謀略、裏切り、寝返り、次々と主君を変えた悪名高い戦国大名、宇喜多直家の真実。
初読の時はあまりにもインパクトの強い小説に一気読みしたため、かえって細部を忘れていた。今回も一気読みではあったが、ゾクゾクする面白さは初読みの時以上。
デビュー作の本作がいきなり直木賞候補となった木下さん、これを超える作品を書くのは至難の業?
◆秀吉の活(木下 昌輝)
木下さんをもう1冊。最新作は木下さんにしては大変珍しい、豊臣秀吉というメジャーな人物を主人公にした毒のない小説。「宇喜多の捨て嫁」みたいなものを期待して読むと肩透かしをくらう。
寧々、信長、弟の小一郎、黒田官兵衛、菊亭春季、秀吉さん、野心だけの平凡な男が、善き上司、伴侶、参謀に恵まれたということか。でも晩年はちょっと哀れ。
◆腐れ梅(澤田 瞳子)
怨霊が跋扈すると信じられていた平安時代に、菅原道真の怨霊信仰をでっち上げようとする人たちの話。異色の題材と言っていいのではないか。天神様を出世の道具にしようとした菅原文時ら体制側の人々に比べ、型破りの巫女、綾児のいかに痛快なことか。
1000年近い時が流れ、今や天満宮は受験の神様。綾児もびっくり!ですよね。
◆たゆたえども沈まず(原田 マハ)
原田さんお得意の美術ものだが、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」のように、絵を題材にしたサスペンスやミステリー仕立ての現代小説ではない。ストレートにフィンセント・ファン・ゴッホと彼を支えた弟のテオ壮絶な生きざまを描いた作品。
ゴッホが浮世絵に強い影響を受けていたのは間違いない。日本人に愛されて止まないゴッホの、日本人に愛される理由がなんとなくわかったような気がした。
画が売れず貧困にあえいだゴッホ。天国の彼が「ひまわり」が日本の会社に53億円で落札されたと知ったらどう思うだろうか。
ラノベ、ラノベっぽい軽めのものを4冊。面白い、続編も読みたいと思ったのは「校閲ガール」と「りゅうおうのおしごと!」かな。
◆わが家は祇園の拝み屋さん (望月 麻衣)
不思議体質の不登校娘が京都の祖母の和雑貨屋へ居候、イケメンの親戚が住むその家は不思議な依頼が舞い込む町の拝み屋さんだった。お気楽に楽しめるありがちな京都の物語。
◆神酒クリニックで乾杯を (知念 実希人)
カドフェス本。格闘技の達人の裏稼業の医者?ライトノベルを通り越して漫画っぽいキャラが活躍するミステリー、頭休めにちょうどよかった。
◆「校閲ガール ア・ラ・モード」(宮木あや子)
「校閲ガール」の続編は、ヒロイン河野悦子の周囲を彩るキャラ達を主人公にした短編集。悦子に負けず劣らずキャラ立ちした面々のエピソードは意外に良い話ばかり。時折登場する悦子が良い味を出している。それにしても、作家さんってこんな性格の方ばかりなんですかね。
◆りゅうおうのおしごと! (白鳥 士郎)
アニメが面白いので原作も読んでみた。
「まったく、小学生は最高だぜ!!」、教えがいのある、伸び盛りの小学生のひたむきな情熱に、竜王位獲得以来低迷していた九頭竜八一も、熱い気持ちを取り戻していく。
とはいってもそこはラノベ、可憐なあいちゃんにロリ萌え要素満載。姉弟子の「浪速の白雪姫」こと空銀子の気持ちにも気づかず、師匠の娘、清滝桂香お姉さまにあこがれる、鈍なところもお約束。
かなり昔の芥川賞受賞作。
◆猛スピードで母は (長嶋 有)
片親の家庭の子供、親には親の人生があって、もがきながら生きていて、そんな様子を子供心乍らに描写した、そんな記述がまあうまいなと思った。でも、芥川賞はちょっと苦手。
◆僕はまた、君にさよならの数を見る (:霧友 正規)
人の残りの人生の日数が見える僕が余命300日の彼女に逆ナンされる。お約束の展開、ややファンタジー色が入った安定の恋愛モノ、住野よるさんっぽいお話と思った。
今年もまた3月11日がやってくる。あれから7年か。。。
◆三陸海岸大津波 (吉村 昭)
1000年に一度でも、想定外でもなかった。明治29年の津波は死者26,360名、100年ちょっと前に、東日本大震災以上のの死者を出した津波を、我々は経験していたのだ。
吉村昭さんがこの本を書いたのは昭和45年、彼の労作を教訓として生かすことができなかったのが残念無念である。
ハワイへ行く機中と、インフルエンザで寝込んでいた時の熱が下がり始めた2日間は、結構読書にいそしんだのですが、後半息切れ。
ミステリーを4冊。
◆屍人荘の殺人(今村 昌弘)
過去にゾンビものは色々あれど、ゾンビ自体をクローズサークルづくりや殺人の道具立てにしたところが斬新。本格ミステリーだけど、主人公っぽかった明智さんがあっさり死んじゃったり、懲悪ものでありながらやられる側にもちょっと良いところがあったりと、エンタメ小説としても実に面白い。「このミス」「本格ミステリ」ダブル1位、本屋大賞ノミネートも納得の1冊。
◆満願 (米澤 穂信)
山本周五郎賞、ミステリー三冠を取った米澤さんの短編集。昔図書館本で単行本を読んだが、文庫本になったので購入・再読。
それぞれの作品は何のつながりもない。時代も、登場人物もバラバラ。でも今読んでも、どの作品にもなんとも言えないすごみがある。初読の時よりも強い読後感があった。
◆いくさの底(古処 誠二)
若い頃、中国に出征していた祖父から良く戦争の話を聞かされた。中国は首都南京が陥落しても降伏をせず、終わりの見えない戦争状態が続く。広大な占領地に駐屯する軍隊の地元民とのふれあいと平穏な日常、見回り中の便衣兵の狙撃による突然の死、住民に紛れたスパイの探索、ほぼこの小説のとおりの、我々の通常の認識とはとは違う戦争の実態がそこにあった。
日常っぽい非日常の中で、このようなこともきっとあったのだろうなと思わせる、私にとっては格別のミステリー。
◆ワルツを踊ろう(中山 七里)
限界集落に住まう自己中心で排他的な老人たちに必死に溶け込もうとする溝畑了衛だが、悲劇的な結末に。被害者に同情の気持ちはわかないけど、了衛の発想もなんかおかしい。ただ、序盤で黒幕や展開が読めてしまったので、、、
歴史小説を4冊。
◆宇喜多の捨て嫁 (木下 昌輝)
これも単行本で読んだものを文庫で再読。謀略、裏切り、寝返り、次々と主君を変えた悪名高い戦国大名、宇喜多直家の真実。
初読の時はあまりにもインパクトの強い小説に一気読みしたため、かえって細部を忘れていた。今回も一気読みではあったが、ゾクゾクする面白さは初読みの時以上。
デビュー作の本作がいきなり直木賞候補となった木下さん、これを超える作品を書くのは至難の業?
◆秀吉の活(木下 昌輝)
木下さんをもう1冊。最新作は木下さんにしては大変珍しい、豊臣秀吉というメジャーな人物を主人公にした毒のない小説。「宇喜多の捨て嫁」みたいなものを期待して読むと肩透かしをくらう。
寧々、信長、弟の小一郎、黒田官兵衛、菊亭春季、秀吉さん、野心だけの平凡な男が、善き上司、伴侶、参謀に恵まれたということか。でも晩年はちょっと哀れ。
◆腐れ梅(澤田 瞳子)
怨霊が跋扈すると信じられていた平安時代に、菅原道真の怨霊信仰をでっち上げようとする人たちの話。異色の題材と言っていいのではないか。天神様を出世の道具にしようとした菅原文時ら体制側の人々に比べ、型破りの巫女、綾児のいかに痛快なことか。
1000年近い時が流れ、今や天満宮は受験の神様。綾児もびっくり!ですよね。
◆たゆたえども沈まず(原田 マハ)
原田さんお得意の美術ものだが、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」のように、絵を題材にしたサスペンスやミステリー仕立ての現代小説ではない。ストレートにフィンセント・ファン・ゴッホと彼を支えた弟のテオ壮絶な生きざまを描いた作品。
ゴッホが浮世絵に強い影響を受けていたのは間違いない。日本人に愛されて止まないゴッホの、日本人に愛される理由がなんとなくわかったような気がした。
画が売れず貧困にあえいだゴッホ。天国の彼が「ひまわり」が日本の会社に53億円で落札されたと知ったらどう思うだろうか。
ラノベ、ラノベっぽい軽めのものを4冊。面白い、続編も読みたいと思ったのは「校閲ガール」と「りゅうおうのおしごと!」かな。
◆わが家は祇園の拝み屋さん (望月 麻衣)
不思議体質の不登校娘が京都の祖母の和雑貨屋へ居候、イケメンの親戚が住むその家は不思議な依頼が舞い込む町の拝み屋さんだった。お気楽に楽しめるありがちな京都の物語。
◆神酒クリニックで乾杯を (知念 実希人)
カドフェス本。格闘技の達人の裏稼業の医者?ライトノベルを通り越して漫画っぽいキャラが活躍するミステリー、頭休めにちょうどよかった。
◆「校閲ガール ア・ラ・モード」(宮木あや子)
「校閲ガール」の続編は、ヒロイン河野悦子の周囲を彩るキャラ達を主人公にした短編集。悦子に負けず劣らずキャラ立ちした面々のエピソードは意外に良い話ばかり。時折登場する悦子が良い味を出している。それにしても、作家さんってこんな性格の方ばかりなんですかね。
◆りゅうおうのおしごと! (白鳥 士郎)
アニメが面白いので原作も読んでみた。
「まったく、小学生は最高だぜ!!」、教えがいのある、伸び盛りの小学生のひたむきな情熱に、竜王位獲得以来低迷していた九頭竜八一も、熱い気持ちを取り戻していく。
とはいってもそこはラノベ、可憐なあいちゃんにロリ萌え要素満載。姉弟子の「浪速の白雪姫」こと空銀子の気持ちにも気づかず、師匠の娘、清滝桂香お姉さまにあこがれる、鈍なところもお約束。
かなり昔の芥川賞受賞作。
◆猛スピードで母は (長嶋 有)
片親の家庭の子供、親には親の人生があって、もがきながら生きていて、そんな様子を子供心乍らに描写した、そんな記述がまあうまいなと思った。でも、芥川賞はちょっと苦手。
◆僕はまた、君にさよならの数を見る (:霧友 正規)
人の残りの人生の日数が見える僕が余命300日の彼女に逆ナンされる。お約束の展開、ややファンタジー色が入った安定の恋愛モノ、住野よるさんっぽいお話と思った。
今年もまた3月11日がやってくる。あれから7年か。。。
◆三陸海岸大津波 (吉村 昭)
1000年に一度でも、想定外でもなかった。明治29年の津波は死者26,360名、100年ちょっと前に、東日本大震災以上のの死者を出した津波を、我々は経験していたのだ。
吉村昭さんがこの本を書いたのは昭和45年、彼の労作を教訓として生かすことができなかったのが残念無念である。
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