9月はなぜかあまり読めなかった。月間14冊は今年最低。
第163回芥川賞受賞作を2冊。
◆首里の馬(高山 羽根子)
オンラインで孤独な外国人にクイズを出す不思議な仕事に従事、プライベートでは私設の郷土資料館で、何の役に立つのか目的もないまま資料を整理する未名子は、社会から胡散臭い目で見られているのも気づかない。
ある台風の日、彼女の元へ、今はなき沖縄競馬の馬である宮古馬が迷い込む。仕事も、郷土館も失う彼女、しかし、馬に乗って街を歩くことで彼女は変わっていく。
芥川賞受賞作らしい、何とも現実味のない設定だが、不思議に読後感は心地よい。
◆破局(遠野遥)
主人公は慶応大学法学部4年生、高校時代はラグビー部でベスト8、大学ではラグビー部に入らず、高校のコーチをしている。やたら体を鍛えていて、公務員試験に受かった、一般的にはそこそこイケてる男のモノローグで話は進むのだが、自分を客観視しているようで、思考回路が何処かずれているような、男の話にどこか違和感が募り始める。性欲は、若い男はみんなそんなもんだけど、プライドが高く、思い込みが強い男の、破滅までの軌跡、なんか、気持ち悪い。
読破挑戦中の「新潮文庫の100冊」から5冊で。残りあと2冊。
◆パプリカ (筒井康隆)
ヒロインの千葉敦子=パプリカがキャラとして何とも魅力的。第一章は、医療サスペンスみたいで、あれれ、筒井さんらしくないなーと思っていたのですが、第二章はいかにも筒井さん、夢と現実のはざまが混とんとして、展開もワクワク、最終章も意味深でよいですね。
◆空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―
「新潮文庫の100冊」でなければまず読むことはなかったであろう本、選んでくれた新潮社の方に感謝。
おそらくは恵まれない環境から犯罪に走ってしまった彼ら、母親の詩にはちょっと涙。
◆小公子 (バーネット)
誰もが子供の頃に読んだ名作なんでしょうが、恥ずかしながら初読み、こんな話だったんだ。。。誰しも周囲に愛される人、そしてプラスの影響を与えられる人でありたいと思うけど、それを天然でやれてしまう主人公、うらやましい限りです。これも、いまさらながら読む機会を与えてくれた「新潮文庫の100冊」感謝。
◆レプリカたちの夜 (一條 次郎)
これは逆に「新潮文庫の100冊」なのでやむなく読んだ。
不条理な世界、最初は面白いかなと思ったけど、途中からは理解しようとするのをやめて読み飛ばしました。はい。
◆数学する身体 (森田 真生)
うーん、なるほど。芭蕉が句を詠むように数学者は数学をするのですか。分かるような気もします。岡潔さんは、以前小林秀雄さんとの対談「人間の建設」を読んで、良く分からなくって、数学者も極めると哲学者みたくなるんだなと漠然と思ってました。
◆銀花の蔵(遠田潤子)
1970年の万博前夜から現代まで、奈良の田舎の蔵で醤油を作った銀子の生涯、というとNHKの朝ドラみたいだけど、銀子の両親や祖母など、皆が出生の秘密とか心の闇を抱えていて、なかなかにおどろおどろしい展開。次第に明らかになっていく真実や逆境にもめげず、自分の人生を切り開いた銀子が逞しい。
子は親を選べないし、親も子を選べない。家族について考えさせられた。直木賞候補作品だけど、これと比べると受賞した犬の話の方が平板に思えた。
◆ライオンのおやつ(小川糸)
瀬戸内海の小島、レモン島にあるホスピス、「ライオンの家」で最期をむかえる海野雫さんのお話。終末医療、尊厳死、私も自分の最期の在り方は、しっかりと自分の意志で決めたいと思った。
◆風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)(原田マハ)
間が空いてしまったけど、やっと下巻を読めた。
俵屋宗達、生没年不詳の謎多き絵師が、なんと天正遣欧使節と同行し、カラバッジョにも会っていたという、奇想天外な歴史小説。改めて、天正遣欧使節の計画の壮大さ、困難さとその意義を実感。プロローグとエピローグの現代の部分がかなりおまけというか、蛇足っぽいが、ここをもう少し膨らませてミステリー仕立てにしたらどうだったのかな。
◆暴虎の牙(柚月裕子)
大上、日岡の広島ヤクザシリーズ最新作。ハラハラドキドキの展開にページを繰る手が止まりませんでした。沖は、正に狂犬、密告者は多分一番意外な奴ということで、予想してました。哀れな最期に、思わず絶句。
◆ 思い、思われ、ふり、ふられ (集英社オレンジ文庫)
実写映画、アニメのノベライズ、阿部暁子さんが書かれただけあって、読みやすかった。
恋愛は人を成長させる、おじさんにも、「青春っていいなー」と思わせてくれる一冊。この小説だけで、映画はもういいかな。
◆信長 空白の百三十日 (木下昌輝)
「宇喜多の捨て嫁」の木下さんが書いた信長についての新書。
足利義輝、義弟の浅井長政、松永久秀、荒木村重、信長って、よく裏切られるよなと思っていたのだが、ワンマン社長、パワハラ上司ではすまないレベルで、精神を病み、人の心がわからなくなっていたとする。
あんなに戦いまくってようやく畿内制覇だった信長に比べ、秀吉は彼を反面教師にできたのでしょう、後継者になるやあっという間に全国を統一してしまう。サステナブルな組織とはどうあるべきか考えさせられた一冊。
◆父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(ヤニス・バルファキス)
発音しにくい名前だなと思ったら、あのEUの緊縮財政政策に反発したギリシャの財務相が著者。邦題は煽りすぎだが、確かに壮大な経済の話。メソポタミア文明から囲い込み運動、産業革命といった経済史から、市場経済が必然的に破たんするからくりまで、さまざまなたとえ話(ギリシャ神話が多いのはちょっと辟易)で説明する。
その主張するところは当然反市場原理主義、政治と経済は不可分、赤字国債上等というものなのだが、ビットコインの危うさからシンギュラリティの経済に及ぼす可能性とその未来まで、読み物として実に面白い。
第163回芥川賞受賞作を2冊。
◆首里の馬(高山 羽根子)
オンラインで孤独な外国人にクイズを出す不思議な仕事に従事、プライベートでは私設の郷土資料館で、何の役に立つのか目的もないまま資料を整理する未名子は、社会から胡散臭い目で見られているのも気づかない。
ある台風の日、彼女の元へ、今はなき沖縄競馬の馬である宮古馬が迷い込む。仕事も、郷土館も失う彼女、しかし、馬に乗って街を歩くことで彼女は変わっていく。
芥川賞受賞作らしい、何とも現実味のない設定だが、不思議に読後感は心地よい。
◆破局(遠野遥)
主人公は慶応大学法学部4年生、高校時代はラグビー部でベスト8、大学ではラグビー部に入らず、高校のコーチをしている。やたら体を鍛えていて、公務員試験に受かった、一般的にはそこそこイケてる男のモノローグで話は進むのだが、自分を客観視しているようで、思考回路が何処かずれているような、男の話にどこか違和感が募り始める。性欲は、若い男はみんなそんなもんだけど、プライドが高く、思い込みが強い男の、破滅までの軌跡、なんか、気持ち悪い。
読破挑戦中の「新潮文庫の100冊」から5冊で。残りあと2冊。
◆パプリカ (筒井康隆)
ヒロインの千葉敦子=パプリカがキャラとして何とも魅力的。第一章は、医療サスペンスみたいで、あれれ、筒井さんらしくないなーと思っていたのですが、第二章はいかにも筒井さん、夢と現実のはざまが混とんとして、展開もワクワク、最終章も意味深でよいですね。
◆空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―
「新潮文庫の100冊」でなければまず読むことはなかったであろう本、選んでくれた新潮社の方に感謝。
おそらくは恵まれない環境から犯罪に走ってしまった彼ら、母親の詩にはちょっと涙。
◆小公子 (バーネット)
誰もが子供の頃に読んだ名作なんでしょうが、恥ずかしながら初読み、こんな話だったんだ。。。誰しも周囲に愛される人、そしてプラスの影響を与えられる人でありたいと思うけど、それを天然でやれてしまう主人公、うらやましい限りです。これも、いまさらながら読む機会を与えてくれた「新潮文庫の100冊」感謝。
◆レプリカたちの夜 (一條 次郎)
これは逆に「新潮文庫の100冊」なのでやむなく読んだ。
不条理な世界、最初は面白いかなと思ったけど、途中からは理解しようとするのをやめて読み飛ばしました。はい。
◆数学する身体 (森田 真生)
うーん、なるほど。芭蕉が句を詠むように数学者は数学をするのですか。分かるような気もします。岡潔さんは、以前小林秀雄さんとの対談「人間の建設」を読んで、良く分からなくって、数学者も極めると哲学者みたくなるんだなと漠然と思ってました。
◆銀花の蔵(遠田潤子)
1970年の万博前夜から現代まで、奈良の田舎の蔵で醤油を作った銀子の生涯、というとNHKの朝ドラみたいだけど、銀子の両親や祖母など、皆が出生の秘密とか心の闇を抱えていて、なかなかにおどろおどろしい展開。次第に明らかになっていく真実や逆境にもめげず、自分の人生を切り開いた銀子が逞しい。
子は親を選べないし、親も子を選べない。家族について考えさせられた。直木賞候補作品だけど、これと比べると受賞した犬の話の方が平板に思えた。
◆ライオンのおやつ(小川糸)
瀬戸内海の小島、レモン島にあるホスピス、「ライオンの家」で最期をむかえる海野雫さんのお話。終末医療、尊厳死、私も自分の最期の在り方は、しっかりと自分の意志で決めたいと思った。
◆風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)(原田マハ)
間が空いてしまったけど、やっと下巻を読めた。
俵屋宗達、生没年不詳の謎多き絵師が、なんと天正遣欧使節と同行し、カラバッジョにも会っていたという、奇想天外な歴史小説。改めて、天正遣欧使節の計画の壮大さ、困難さとその意義を実感。プロローグとエピローグの現代の部分がかなりおまけというか、蛇足っぽいが、ここをもう少し膨らませてミステリー仕立てにしたらどうだったのかな。
◆暴虎の牙(柚月裕子)
大上、日岡の広島ヤクザシリーズ最新作。ハラハラドキドキの展開にページを繰る手が止まりませんでした。沖は、正に狂犬、密告者は多分一番意外な奴ということで、予想してました。哀れな最期に、思わず絶句。
◆ 思い、思われ、ふり、ふられ (集英社オレンジ文庫)
実写映画、アニメのノベライズ、阿部暁子さんが書かれただけあって、読みやすかった。
恋愛は人を成長させる、おじさんにも、「青春っていいなー」と思わせてくれる一冊。この小説だけで、映画はもういいかな。
◆信長 空白の百三十日 (木下昌輝)
「宇喜多の捨て嫁」の木下さんが書いた信長についての新書。
足利義輝、義弟の浅井長政、松永久秀、荒木村重、信長って、よく裏切られるよなと思っていたのだが、ワンマン社長、パワハラ上司ではすまないレベルで、精神を病み、人の心がわからなくなっていたとする。
あんなに戦いまくってようやく畿内制覇だった信長に比べ、秀吉は彼を反面教師にできたのでしょう、後継者になるやあっという間に全国を統一してしまう。サステナブルな組織とはどうあるべきか考えさせられた一冊。
◆父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(ヤニス・バルファキス)
発音しにくい名前だなと思ったら、あのEUの緊縮財政政策に反発したギリシャの財務相が著者。邦題は煽りすぎだが、確かに壮大な経済の話。メソポタミア文明から囲い込み運動、産業革命といった経済史から、市場経済が必然的に破たんするからくりまで、さまざまなたとえ話(ギリシャ神話が多いのはちょっと辟易)で説明する。
その主張するところは当然反市場原理主義、政治と経済は不可分、赤字国債上等というものなのだが、ビットコインの危うさからシンギュラリティの経済に及ぼす可能性とその未来まで、読み物として実に面白い。
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