3月は19冊、いつもの月より少し多い。コロナのせいで外出が減ったからかな。
ミステリーでは、まずTVドラマになった若竹七海さんの葉村晶シリーズ初期作品を3冊。これにて葉村晶シリーズ全制覇です。
◆プレゼント
葉村晶初登場昨品。悲惨な環境にも動ぜずにクールを貫く、探偵になる前、20代の葉村晶もやはり葉村晶!「トラブル・メイカー」は小林・御子柴刑事との初邂逅、TVドラマの第1回になった話。葉村晶の生い立ちの色々が分かりました。
◆依頼人は死んだ
葉村晶をシシドカフカさんに脳内変換しての再読。新発見あり、再読して良かった。03月14日 著者:若竹 七海
◆悪いうさぎ
先にドラマを見ちゃったので結末は知っていたのですが、「世界一不幸な探偵」っぷりは映像よりも悲惨でした。事件の真相はおぞましいというか、現実味が薄いというか、悪党同士の自滅っぽいけど後味は良くない。異常な環境に育ったJKたちの生態と友情がおじさんたちには1周回って爽やか。
柚月裕子さんの佐方貞人シリーズを2冊。
◆最後の証人
19年のカドフェス本。佐方貞人シリーズの第一作ですが、時系列的には次の「検事の信義」よりも後、佐方がヤメ検弁護士になってからのこと。佐方が検事を辞めた理由同様の組織がらみの隠蔽が事件の鍵になっています。
被告人は一貫して無罪を主張しているというので、おかしーなーと思ってたら、そういう事か、見事に叙述トリックにひっかかった。息子を殺された母の執念、頁を繰る手が止まらない、傑作。
◆検事の信義
検事・佐方貞人シリーズの最新作。時代は20年前くらいかな、佐方が検事時代の話。検察でも警察でも、組織には組織自体が維持され、繁栄するための意思が働くし、その構成員も自らの保身や立身出世のために組織を利用する。そんな中で、よき上司、よき補佐役に恵まれ、自らの信念をつらぬく佐方が描かれています。
◆怪しい店 (有栖川 有栖)
火村英生シリーズは「鍵のかかった男」「狩人の悪夢」「インド倶楽部の謎」に続いて4冊目。
短編が5作、「潮騒理髪店」は田舎町で火村が立ち寄った理髪店に係わる日常系ミステリー、「ショーウィンドウを砕く」は犯人を語り部にした倒叙ミステリー。他に「古物の魔」「燈火堂の奇禍」「 怪しい店 」と普通の?ミステリーが3作。短編は短編で中々に興味深い。個人的にはいつもと違う2作が面白かった。
◆或るエジプト十字架の謎(柄刀 一)
タイトルから有栖川有栖さんの火村シリーズと思ってたら全然違った。初読みだけど、ベテランのミステリ作家さんで、この南未希風さんもシリーズものなんだそうで、大変失礼しました。
本格ミステリ寄りの作風なんですね。ちょっと苦手な感じかも。相棒でもワトソン役でもお色気担当というわけでもないエリザベス・キドリッジさんの印象が薄い。
◆紅蓮館の殺人 (阿津川 辰海)
著者は3年連続で作品が「本格ミステリ」のランキングに入っている新進ミステリー作家さん、良くも悪くも本格ミステリー。
山火事によってクローズドサークルになった山荘という舞台設定はともかく、その屋敷がたまたま何とも奇怪なからくり館。探偵役が超絶頭が切れるのはともかく、生業を超えて人生観、生き様になるとちょっと大袈裟では?職業は盗賊ってドラクエ?10年前に会った人にまた会っちゃうってのも偶然が過ぎるような。生死に係わる危機なのに全員誰もパニックにならないし。
固いことを言わないで読めば、これはこれで面白い。
朝井リョウさんを2冊。
◆どうしても生きてる
やはり朝井リョウはすごい!と思わせる1冊。仕事に纏わる短編が6編、「健やかな論理」はマンネリから死に魅せられた女性、「流転」は漫画家になる夢を諦めた男のその後、「7分24秒めへ」はリストラされる非正規雇用者の悲哀、「風が吹いたとて」は仕事上の不正で正義感に押しつぶされる夫を妻の視点から、「そんなの痛いにきまってる」は妻に仕事で抜かれてEDになり、不倫に逃げる男、「籤」は家族の中でいつも割を食ってしまう女性、と書いてしまえば薄っぺらになってしまうが、どの作品も生々しさ、ヒリヒリ感が半端ない。
◆時をかけるゆとり
エッセイ集。あのヒリヒリ感満載の小説を書く朝井リョウさんが、こんなに普通に面白い大学生だったとは、、、
◆欺す衆生(月村 了衛)
昨年の山田風太郎賞受賞作。今まで読んだ月村さんの本の中で一番面白かった。
豊田商事を思わせる横田商事の下っ端だった隠岐は、その経歴を隠しマジメに生きようとするも、かつての同僚だった因幡に詐欺ビジネスに引きずり込まれる。悪党たちの中で最低限の倫理観を持ち続けようとする隠岐だが、欺す歓びにどんどんはまっていく。修羅場をくぐり、因幡やタッグを組んできたヤクザの蒲生も葬り、壊れかけた家庭も仰天の方法で掌中に取り戻す。もはや敵なし、人でなしの隠岐。「衆生」とは生きとし生けるもの、仏教用語ですね。人ってそういう存在?
◆悪の華 (赤川 次郎)
ものすごく久々に読む赤川次郎さん、こんな作風の方だったけ?ピカレスク小説、バンバン人が殺されるのはともかく、その悲惨さみたいなものがなくて、動機も今一つ良くわからなくて、でも読みやすくて途中まで読んじゃったので、勢いで最後まで読みました。
◆【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草(古川 真人)
基本的に芥川賞・直木賞の受賞作は読むことにしています。でも、芥川賞は、分かり難い作品が多いなー。
歴史小説では、信長モノを2冊。木下昌輝さんが信長目線、天野純希さんが信長の敵目線で、同じ題材、伊井直盛と桶狭間、お市の方と姉川の戦い、下間頼旦と長島一向一揆、武田勝頼と長篠の戦、そして明智光秀の短編5編を書いてます。いずれも脳の偏桃体異常?で信長が恐怖を感じない障害を持っているという前提。
◆信長、天を堕とす(木下 昌輝)
「下天の野望」は桶狭間で自慢の馬廻衆が思い通り動かず、勝ち戦の中で自らの弱さを知る信長、「血と呪い」は妹を嫁がせた浅井長政の裏切り。「神と人」は一向宗、宗教勢との闘いで仏教の真理を問い、「天の理、人の理」は宿敵・武田家を滅亡させる戦い、「滅びの旗」は明智光秀との関係と本能寺の変。
恐れを知らない信長は、神になることで強さと恐れを知ろうとする、スーパースター信長の連作短編。
◆信長、天が誅する(天野 純希)
信長と敵対した人の目から見た信長の異常さ。自ら神になろうとしたのは秀吉も家康も一緒、為政の一手段なのか、それとも本気だったのか。信長の一番の理解者、似ていたのが明智光秀で、本能寺の変は計画的な謀略ではなく刹那的な決断ってのは、きっとそうだったんだろうなと思います。
◆ノーサイド・ゲーム(池井戸 潤)
池井戸さんお得意の勧善懲悪ストーリー・ラグビー版。自分はラグビー経験者でオールドファンなので、大変楽しく読みました。
ラグビー協会も、マネジメント人材を広く募集したりして4年前とはかなり変わったと思います。昔は早明戦とか一部の試合を除いて観衆はラグビー経験者ばかりのマイナースポーツ、今回のワールドカップの成功で幅広いファンが定着して、今の人気が続いてくれたらと思っております。
◆ラメルノエリキサ (渡辺 優)
良い。復讐の申し子、小峰りなの復讐の理由はあくまで自分のため。自分のことが好きで、自分が自分であるために自分流をつらぬく。自分が犯罪者の姉にならないためと言いながらの姉の妹愛も良い。両親に対する気持ちも、歪んでいるようでなんだかんだ言っても良い家族。突出した姉妹のキャラに、やり取りもテンポが良い。謎のことば「ラメルノエリキサ」、ミステリー仕立てのストーリーも楽しめました。
◆幼女戦記 12 Mundus vult decipi, ergo decipiatur(カルロ・ゼン)
なるほどなー、そういうことか。ゼートゥーア大将の作戦、予想以上でした。目的を持たなかった帝国の戦争も、この終盤にきて、よりマシな敗戦という明確な目的を持ち始めたということか。ターニャは、現場力に優れた中間管理職の悲哀ですね。さて1年ぶりの12巻でも終わらなかった本編、何時続きを読めるのだろうか。
◆池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」
大学時代は社会学部だったのでマルクス経済学には全く触れずじまい、この歳になって初めて「資本論」の一端に触れました。なるほど、こういう本だったのですね。
冷戦構造ってのはイデオロギーの対立で、共産主義陣営が自壊してしまったので、資本主義陣営は修正主義の流れを後退させてしまった。今や戦後最も社会主義が成功した日本の影は薄れ、共産党独裁の資本主義国家・中国が栄華を極めている感があります。
コロナウイルス禍を一番うまく制御しているのも中国ですよね。一番効率よく生命と財産を守り国民を幸せにするのはどんな体制か、いろいろ考えさせられました。
ミステリーでは、まずTVドラマになった若竹七海さんの葉村晶シリーズ初期作品を3冊。これにて葉村晶シリーズ全制覇です。
◆プレゼント
葉村晶初登場昨品。悲惨な環境にも動ぜずにクールを貫く、探偵になる前、20代の葉村晶もやはり葉村晶!「トラブル・メイカー」は小林・御子柴刑事との初邂逅、TVドラマの第1回になった話。葉村晶の生い立ちの色々が分かりました。
◆依頼人は死んだ
葉村晶をシシドカフカさんに脳内変換しての再読。新発見あり、再読して良かった。03月14日 著者:若竹 七海
◆悪いうさぎ
先にドラマを見ちゃったので結末は知っていたのですが、「世界一不幸な探偵」っぷりは映像よりも悲惨でした。事件の真相はおぞましいというか、現実味が薄いというか、悪党同士の自滅っぽいけど後味は良くない。異常な環境に育ったJKたちの生態と友情がおじさんたちには1周回って爽やか。
柚月裕子さんの佐方貞人シリーズを2冊。
◆最後の証人
19年のカドフェス本。佐方貞人シリーズの第一作ですが、時系列的には次の「検事の信義」よりも後、佐方がヤメ検弁護士になってからのこと。佐方が検事を辞めた理由同様の組織がらみの隠蔽が事件の鍵になっています。
被告人は一貫して無罪を主張しているというので、おかしーなーと思ってたら、そういう事か、見事に叙述トリックにひっかかった。息子を殺された母の執念、頁を繰る手が止まらない、傑作。
◆検事の信義
検事・佐方貞人シリーズの最新作。時代は20年前くらいかな、佐方が検事時代の話。検察でも警察でも、組織には組織自体が維持され、繁栄するための意思が働くし、その構成員も自らの保身や立身出世のために組織を利用する。そんな中で、よき上司、よき補佐役に恵まれ、自らの信念をつらぬく佐方が描かれています。
◆怪しい店 (有栖川 有栖)
火村英生シリーズは「鍵のかかった男」「狩人の悪夢」「インド倶楽部の謎」に続いて4冊目。
短編が5作、「潮騒理髪店」は田舎町で火村が立ち寄った理髪店に係わる日常系ミステリー、「ショーウィンドウを砕く」は犯人を語り部にした倒叙ミステリー。他に「古物の魔」「燈火堂の奇禍」「 怪しい店 」と普通の?ミステリーが3作。短編は短編で中々に興味深い。個人的にはいつもと違う2作が面白かった。
◆或るエジプト十字架の謎(柄刀 一)
タイトルから有栖川有栖さんの火村シリーズと思ってたら全然違った。初読みだけど、ベテランのミステリ作家さんで、この南未希風さんもシリーズものなんだそうで、大変失礼しました。
本格ミステリ寄りの作風なんですね。ちょっと苦手な感じかも。相棒でもワトソン役でもお色気担当というわけでもないエリザベス・キドリッジさんの印象が薄い。
◆紅蓮館の殺人 (阿津川 辰海)
著者は3年連続で作品が「本格ミステリ」のランキングに入っている新進ミステリー作家さん、良くも悪くも本格ミステリー。
山火事によってクローズドサークルになった山荘という舞台設定はともかく、その屋敷がたまたま何とも奇怪なからくり館。探偵役が超絶頭が切れるのはともかく、生業を超えて人生観、生き様になるとちょっと大袈裟では?職業は盗賊ってドラクエ?10年前に会った人にまた会っちゃうってのも偶然が過ぎるような。生死に係わる危機なのに全員誰もパニックにならないし。
固いことを言わないで読めば、これはこれで面白い。
朝井リョウさんを2冊。
◆どうしても生きてる
やはり朝井リョウはすごい!と思わせる1冊。仕事に纏わる短編が6編、「健やかな論理」はマンネリから死に魅せられた女性、「流転」は漫画家になる夢を諦めた男のその後、「7分24秒めへ」はリストラされる非正規雇用者の悲哀、「風が吹いたとて」は仕事上の不正で正義感に押しつぶされる夫を妻の視点から、「そんなの痛いにきまってる」は妻に仕事で抜かれてEDになり、不倫に逃げる男、「籤」は家族の中でいつも割を食ってしまう女性、と書いてしまえば薄っぺらになってしまうが、どの作品も生々しさ、ヒリヒリ感が半端ない。
◆時をかけるゆとり
エッセイ集。あのヒリヒリ感満載の小説を書く朝井リョウさんが、こんなに普通に面白い大学生だったとは、、、
◆欺す衆生(月村 了衛)
昨年の山田風太郎賞受賞作。今まで読んだ月村さんの本の中で一番面白かった。
豊田商事を思わせる横田商事の下っ端だった隠岐は、その経歴を隠しマジメに生きようとするも、かつての同僚だった因幡に詐欺ビジネスに引きずり込まれる。悪党たちの中で最低限の倫理観を持ち続けようとする隠岐だが、欺す歓びにどんどんはまっていく。修羅場をくぐり、因幡やタッグを組んできたヤクザの蒲生も葬り、壊れかけた家庭も仰天の方法で掌中に取り戻す。もはや敵なし、人でなしの隠岐。「衆生」とは生きとし生けるもの、仏教用語ですね。人ってそういう存在?
◆悪の華 (赤川 次郎)
ものすごく久々に読む赤川次郎さん、こんな作風の方だったけ?ピカレスク小説、バンバン人が殺されるのはともかく、その悲惨さみたいなものがなくて、動機も今一つ良くわからなくて、でも読みやすくて途中まで読んじゃったので、勢いで最後まで読みました。
◆【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草(古川 真人)
基本的に芥川賞・直木賞の受賞作は読むことにしています。でも、芥川賞は、分かり難い作品が多いなー。
歴史小説では、信長モノを2冊。木下昌輝さんが信長目線、天野純希さんが信長の敵目線で、同じ題材、伊井直盛と桶狭間、お市の方と姉川の戦い、下間頼旦と長島一向一揆、武田勝頼と長篠の戦、そして明智光秀の短編5編を書いてます。いずれも脳の偏桃体異常?で信長が恐怖を感じない障害を持っているという前提。
◆信長、天を堕とす(木下 昌輝)
「下天の野望」は桶狭間で自慢の馬廻衆が思い通り動かず、勝ち戦の中で自らの弱さを知る信長、「血と呪い」は妹を嫁がせた浅井長政の裏切り。「神と人」は一向宗、宗教勢との闘いで仏教の真理を問い、「天の理、人の理」は宿敵・武田家を滅亡させる戦い、「滅びの旗」は明智光秀との関係と本能寺の変。
恐れを知らない信長は、神になることで強さと恐れを知ろうとする、スーパースター信長の連作短編。
◆信長、天が誅する(天野 純希)
信長と敵対した人の目から見た信長の異常さ。自ら神になろうとしたのは秀吉も家康も一緒、為政の一手段なのか、それとも本気だったのか。信長の一番の理解者、似ていたのが明智光秀で、本能寺の変は計画的な謀略ではなく刹那的な決断ってのは、きっとそうだったんだろうなと思います。
◆ノーサイド・ゲーム(池井戸 潤)
池井戸さんお得意の勧善懲悪ストーリー・ラグビー版。自分はラグビー経験者でオールドファンなので、大変楽しく読みました。
ラグビー協会も、マネジメント人材を広く募集したりして4年前とはかなり変わったと思います。昔は早明戦とか一部の試合を除いて観衆はラグビー経験者ばかりのマイナースポーツ、今回のワールドカップの成功で幅広いファンが定着して、今の人気が続いてくれたらと思っております。
◆ラメルノエリキサ (渡辺 優)
良い。復讐の申し子、小峰りなの復讐の理由はあくまで自分のため。自分のことが好きで、自分が自分であるために自分流をつらぬく。自分が犯罪者の姉にならないためと言いながらの姉の妹愛も良い。両親に対する気持ちも、歪んでいるようでなんだかんだ言っても良い家族。突出した姉妹のキャラに、やり取りもテンポが良い。謎のことば「ラメルノエリキサ」、ミステリー仕立てのストーリーも楽しめました。
◆幼女戦記 12 Mundus vult decipi, ergo decipiatur(カルロ・ゼン)
なるほどなー、そういうことか。ゼートゥーア大将の作戦、予想以上でした。目的を持たなかった帝国の戦争も、この終盤にきて、よりマシな敗戦という明確な目的を持ち始めたということか。ターニャは、現場力に優れた中間管理職の悲哀ですね。さて1年ぶりの12巻でも終わらなかった本編、何時続きを読めるのだろうか。
◆池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」
大学時代は社会学部だったのでマルクス経済学には全く触れずじまい、この歳になって初めて「資本論」の一端に触れました。なるほど、こういう本だったのですね。
冷戦構造ってのはイデオロギーの対立で、共産主義陣営が自壊してしまったので、資本主義陣営は修正主義の流れを後退させてしまった。今や戦後最も社会主義が成功した日本の影は薄れ、共産党独裁の資本主義国家・中国が栄華を極めている感があります。
コロナウイルス禍を一番うまく制御しているのも中国ですよね。一番効率よく生命と財産を守り国民を幸せにするのはどんな体制か、いろいろ考えさせられました。
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