ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

20年10月に読んだ本

2020-11-01 10:19:59 | 読書
10月は17冊読みました。
「新潮文庫の100冊」をようやく読了、「ナツイチ」「カドフェス」にもゆるゆる挑戦中で、10月はそれぞれを3冊ずつ。

◆この世にたやすい仕事はない(津村 記久子)
仕事のストレスで14年務めた会社を辞め、単純で楽な仕事を求める私に職安の職員が勧めたのは、「みはり」「バスの広告アナウンス作成」「お菓子の袋のコメント作成」「ポスター貼り」「森林公園の森番」、次々と風変わりな仕事を紹介する。楽な仕事を求めてるはずが、つい前のめりになって仕事に取り組んでしまう私がおかしい。

◆許されようとは思いません (芦沢 央)
芦沢さんは好きな作家さんなので、以前単行本で読んだのを文庫本を購入して再読。この短編集はどれも印象的ですが、特に「姉のように」と表題作が好き。「目撃者はいなかった」も、負のスパイラルにはまる青年が愚かしくも哀れ。

◆グレート・ギャツビー (フィッツジェラルド)
第一次世界大戦後のアメリカは、成り上がりの金持ちが狂騒する、格差と差別の混とんとした世界。ロミオとジュリエットなのか、はたまた単なるストーカー?面白くはあったけど、名作って言ってよいのかな。もってまわった表現にどうも入り込めない感はあり。

◆残業禁止 (荒木 源)
ゼネコン「ヤマジュウ建設」の横浜のホテル建設現場はかなりブラック、所長を務める成瀬に、仕様変更、近隣住民のクレーム、残業時間上限規制と困難が舞い込むが納期は伸ばせない。優秀な部下は病に倒れ、残業できないイクメンに使えない新人のおかげで職場の雰囲気は悪化、しまいには使えない部下が自殺未遂をやらかし左遷されてしまう。
閑職に追いやられ開き直った成瀬が正論で逆襲する、痛快なお仕事小説。今年のカドフェス本ということで手に取ったが、予想外の面白さに一気読み。

◆ゴーストハント1 旧校舎怪談 (小野 不由美)
本シリーズは初読み、表題からいつもの小野さんのぞわっとする話と思いきや、学園もの長編なんですね。ナルと麻衣の軽妙なやりとりが面白い、力を抜いて楽しく読めた。

◆あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 (宮部 みゆき)
行き逢い神を呼び込んでしまい、家族が次々と不幸に見舞われる「開けずの間」は恐ろしい。 “もんも声”を持った女中が、もの言わぬ姫の付き人になってその理由を突き止める「だんまり姫」は面白い。他にも、お面の監視役として雇われた女中の告白の「面の家」、百両という破格で写本を請け負った男の数奇な運命、同じく写本をした勘一の運命は、、、の「あやかし草子」、三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した椿事「金目の猫」、シリーズ5冊目も安定の面白さ。

◆第三の時効 (横山 秀夫)
F県警捜査第一課の強行犯捜査の三人の班長、笑わない青鬼の朽木、公安上がりで冷徹な楠見、ひらめきの村瀬のライバル意識丸出しのぶつかり合いと、この3人の部下に振り回される課長の田畑を主人公にした短編集。「沈黙のアリバイ」の朽木、「第三の時効」「囚人のジレンマ」の楠見、「密室の抜け穴」の村瀬がすごくて、面白かった。

◆泣くな道真 大宰府の詩 (澤田 瞳子)
大宰府に左遷され腐る道真が、地方の真実に触れ立ち直るまでのお話。意外にアクティブな小野小町や、後に道真が雷神となることを匂わすエピソードもあって、澤田さんらしからぬ、毒もひねりもない、明るい、ユーモアのある作品。

◆じごくゆきっ (桜庭 一樹)
いかにも桜庭さんらしい、ユーモアのある、奇妙でグロテスクな短編が7編。表題作のみ既読感あり。「ゴッドレス」「ビザール」が面白かったかな。「ロボトミー」の狂気の義母、いやですねー。

図書館本を8冊。
◆ビブリア古書堂の事件手帖II 扉子と空白の時 (三上 延)
ビブリア古書堂の第二シリーズは、栞子さんに娘の扉子さんが加わるも、ストーリー展開は昔のまま。今回の謎解きは横溝正史。幻の本「雪割草」(今は刊行されてるみたいですね)と「獄門島」、未読なので読んでみようかな。

◆昨日星を探した言い訳(河野 裕)
「サクラダ・リセット」「いなくなれ、群青」の河野裕さんの近作。一風変わった二人のボーイ・ミーツ・ガール的な学園小説なのだけど、そこは河野さん、緑の目と黒い目、独特の世界観がピリッと効いている。大人びた二人の、でも中二病っぽいと思えなくもないしちめんどくさい恋愛ストーリーに、河野さんの回りくどい文体がマッチして、まずまず面白く読めた。拝望会、ちょっと「夜のピクニック」みたい。制道院学園という籠の中の青春が、時代の変化とともにあた方もなく消えていくことに、一抹の寂しさを感じた。

◆雲を紡ぐ(伊吹 有喜)
身につまされた。親にとっても子育ては初めてで、やり直しがきかない。子育てが終わってみて後悔すること多々あり、多様性を尊重しなければならないことは理解しても、自分の子供だと自分と同質であってほしいと思う気持ちが押し付けにつながる。貴重な体験をさせてもらっていると考え、子供が大きくなったら自主性を尊重し、応援だけをする、距離感が大切。
美緒は素敵なおじいさまと打ち込める仕事を見つけられてよかった。母もジジババも子供離れが大切。
これで163回直木賞候補作全冊読了。個人的には、犬よりかこっち。

◆四畳半タイムマシンブルース(森見 登美彦)
「四畳半神話大系」のアナザー・ストーリー、小津、明石さんら登場人物も、下応対も鴨幽水荘もすべて一緒。今度のはタイムマシンが登場するタイムリープ、タイムパラドックスもの。未来から来た田村くんの正体もお約束で安定の面白さ。

◆逆ソクラテス(伊坂 幸太郎)
「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」、小学生を主人公にした短編が5編。説教臭くなく、さらっと教訓が語られ、普通にいい話というか、こういう話を書いてもやはり伊坂さん伊坂さん。

◆背中の蜘蛛(誉田 哲也)
 第一部「裏切りの日」と第二部「顔のない目」は前振り、何の関連もない二つの殺人事件だが、いずれも捜査の方針とは関係のないところからもたらされた新情報で、膠着状態が一転犯人逮捕となった。そのことに違和感を抱いた本宮が、昔ながらの刑事の勘で真実を突き止めていく(かっこいい!)。監視カメラも、普及した当初はいろいろと議論になった。ビッグデータ解析、AI、技術革新とともに世の中の常識は激変していく。すごい世の中になったものだが、その許容範囲を決めるのは人間。面白かった。

◆罪の轍(奥田 英朗)
「オリンピックの身代金」に続き時代設定は先の東京オリンピック前夜、当時ってまだこんな時代だったんだと興味深く読んだ。モデルになった吉展ちゃん事件、かすかに覚えているが、TVと電話の普及による新しい事件だったという認識はなかった。格差社会も、不幸な生い立ちが犯罪者を作ることは今も昔も一緒。600ページ近い大作も、気にならずに読み切れた。さすが、昨年のミステリ・ランキングの上位作品だけのことはある。これで、昨年の「このミス」「ミステリが読みたい」「文春ミステリ」の1位から10位まで読了。

◆ZARA、ユニクロ圧勝の秘密を明かす 生き残るアパレル 死ぬアパレル(河合 拓)
一般向けのビジネス書というよりも、今、まさに、アパレル業界で苦しみながら会社を経営、管理している人向けの書。内容が専門的なので、素人さんには理解できないだろうが、書かれていることは正鵠を射ていると思う。昔はユニクロを馬鹿にし、今はユニクロがファッションをダメにしたとか言う人が業界には多いが、ただの負け惜しみ。ユニクロはZARAと世界一を争う、日本が誇るべき会社。問題の本質はそんなところにない。
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