ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

「奔る(はしる)合戦屋」(上)(下)北沢秋

2012-12-15 09:44:17 | 読書
「哄う(わらう)合戦屋」の前日譚、先に「哄う~」が刊行されているので、バッドエンドが最初から分かってしまっている。
順番を逆にしてくれていたら良かったのに、と思わずにはいられません。

数多の大名・豪族が群雄割拠する中、徐々に強者が弱者を従え、あるいは滅ぼし、有力な戦国大名が形作られようとしていた戦国時代の前期。
北信濃の大名、村上義清に仕える若き石堂一徹、天文7年ですから1539年ですね、ここから話は始まります。
類まれな武勇と戦術眼で主君に信頼され、両親、妻子、郎党にも恵まれ、手柄を立て続ける。
正に順風満帆の石堂家なのですが、それが、下巻の、最後の1章であっという間に崩れてしまう。
原因は、武勇の主君、村上善清との小さな亀裂。
それが原因で、一徹は愛する妻と子、義理の両親、信頼する郎党頭の三郎太を一遍に失ってしまう。

戦にはめっぽう強いが中長期戦略が考えられない主君。
戦国の世はやがて天下統一に向け、一人の勝者に収斂されていく、今はその過程のサバイバルゲームの最中で、武力だけではこのゲームに勝てないということが、村上義清には理解できない。
実際の歴史でも、村上義清は宿敵である武田信虎、武田晴信(後の信玄)に何度も戦で勝ちながら、結局は全領土を奪われてしまう。
いや、甲斐・信濃ニ国の領主となったのちの武田信玄ですらも、きっと一徹は使いこなせなかったでしょう。
もし一徹を使いこなせる戦国大名がいるとすれば、織田信長ただ一人でしょう。

才智と武勇を併せ持ったスーパースター、石堂一徹の活躍と悲劇を通じ、強い組織とは、リーダーシップとは、人望とは、いろんなことを考えさせてくれる一冊でした。

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