ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

22年6月に読んだ本

2022-07-01 14:41:49 | 読書
6月は15冊でした。なかなか読書ペースが上がりません。

◆同志少女よ、敵を撃て(逢坂冬馬)
ナチに母や村人を皆殺しにされた少女が、復讐のために凄腕のスナイパーとなって敵兵を次々と射殺する。戦争の悲惨さ、不条理さと特殊環境下での女性兵同士の友情をあますところなく描きつつ、戦記物としての描写も迫力満点。
本屋大賞受賞は伊達じゃない。むしろなぜ直木賞取れなかったのか、実績のない新人の傑作が不運にも「黒牢城」「塞王の盾」とかち合っってしまったということか。前例はないけど3作品受賞でもよかったんじゃないかなと思ってしまう、心を震わせる傑作でした。

◆星を掬う (町田そのこ)
母に捨てられた過去を持ち、DVの元夫に暴力で金を巻き上げられるどん底人生の千鶴が、ふとしたきっかっけで母と再会、母や母を慕うワケあり女性たちとのシェアハウス生活を始める。しかし母は若年性アルツハイマーを患い、壊れていく。
昨年度本屋大賞を受賞した町田そのこさんの、受賞作と雰囲気が似た作品、今年はノミネートされたものの10位。もう少し上位でもと思ったけど、元夫のクズっぷりがあまりにステレオタイプ過ぎか、ラストがうまくいきすぎか、でも、自分の人生は責任も含めて自分のもの、こころを心を動かされる良い作品でした。

◆ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン(小路幸也)
毎年春恒例の東京バンドワゴンシリーズ新作、もう第17弾なんですね。未だTVドラマのキャストに脳内変換して読んでますが、ドラマにはいなかった登場人物が増えてきてちょっと困ってます。
今回も、タイトルの「ハロー・グッドバイ」通りちょっとした出会いと別れがありましたが、基本的にはいつもの堀田家、偉大なるマンネリに拍手👏!

◆残月記(小田雅久仁)
「そして月がふりかえる」「月景石」「残月記」、月に纏わるファンタジー、長さが違う短中編が3編。どれも奇想天外な話で、万人受けはしない、読者を選ぶ作品なのかなと。ぞわりとする着想は良い。
今年の山本周五郎賞候補作品、大賞は残念でした。「月景石」くらいの長さの作品をこのクオリティで4,5編並べてくれたらと思わないでもない。

◆ヨルガオ殺人事件 下 (アンソニー・ホロヴィッツ)
昨年の「このミス」を始めミステリー本の1位を総なめした話題作。実際の事件と作中作「愚行の代償」の二本立てでが二度楽しめました。ただ作中作を読んでもさほど大きなヒントではないので、真犯人に気が付けるかというと、セシリーのようにハナから「こいつが怪しい」と決めつけてないと無理かな。
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ同様の正統派のミステリー、堪能いたしました。

◆GODZILLA 怪獣黙示録 (大樹連司)
アニゴジ未視聴。こういうのを読んじゃうと、子供の頃に観た怪獣映画は、なんと子供だましというか、牧歌的だったなーと思ってしまいました。

6月っていうと、新潮、角川、集英社、各社の文庫本のフェアの端境期で、21年のラストスパート&22年のフライングで、角川のを4冊、集英社のを5冊。
◆倒れるときは前のめり ふたたび(有川ひろ)
有川さんの小説はほとんど読んでいるファンです。
以前、出版社の方に「有川さんの文庫本って出版社がよく変わりますよね」と聞いたら「うーん、読者の方からすれば不思議に思われますよね」と歯切れの悪い反応、「版権回収」、出版業への愛情とそれゆえの厳しさ、要求の高さを併せ持たれた方なのでしょう。文章からもその男前な性格があふれています。
「倒れるときも前のめり」、有川さんの出身地・高知県が生んだ坂本龍馬の言葉だと「巨人の星」で星一徹が言ってましたが、竜馬の姉の乙女姉さんのようなはちきんさんぶりです。

◆どうか、彼女が死にますように (喜友名トト)
魔法使いという普通ならざる力を持つがゆえに過去にいじめにあった経験を持ち、それゆえに本心を隠して周囲に良い顔をする術を身に着けてしまった夏樹と、笑えない少女・更紗の物語。ありがちな日常系ファンタジーだが、おじさんは設定にちょっと無理があるのではと思ってしまい、あまり楽しめなかった。決して面白くないわけではないので、もっと普通に流し読みしちゃえば良かったのかな。

◆犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (横溝正史)
初読みではありますが、度々映像化されていたロングセラー小説ですので、ストーリーは何となく知っていました。よくできた作品です。しかし金田一耕助さん、名探偵ではあるのでしょうが、謎解きばかりで連続殺人を未然に防ごうという気はないのか、いつも後手後手ですね。

◆結界師の一輪華 (クレハ)
クレハさん、初読みでしたが、「小説家になろう」の投稿者だったみたい。結界師が国を守っているファンタジーの世界、契約結婚したはずのイケメンご当主さまに愛されちゃうヒロイン、いかにもWEB投稿作品っぽいお話でした。

◆春、戻る (瀬尾まいこ)
普通だったら、お兄さん、ストーカーとして通報されてますよね。常識的にはかなり危なくて不自然でも、瀬尾さんの作品は、登場人物がいい人で、ほんわかとしたものが多いから、あまり現実味のないこんな話も自然に成り立ってしまう。つらい過去に蓋をするのではなく、勇気をもって向き合えば、その中にも良かったことがあるはず。さくらさんのみならず、お兄さんも成長出来てよかったです。

◆リアルワールド (桐野夏生)
母親を殺してしまった高3男子ミミズとそれを取り巻くホリニンナ、ユウザン、キラリン、テラウチの4人のJKのお話。ステレオタイプに見えて個性と悩みを隠し持つJKは、それぞれがそれぞれの接し方でミミズとかかわりを持ち、結局彼の逃亡を助け、それが悲劇的な結末につながる。普通に考えればホリニンナが警察に通報して小説にもならずに終わりですよね。自分もそういえば高校生の時は常識とか国家権力とか嫌いだったもんなー。若さとはいつの世も無軌道なものだな。

◆隠れの子 東京バンドワゴン零 (小路幸也)
東京バンドワゴンのシリーズものということで読んでみたが、おそらくは堀田勘一の祖先であろう北町奉行の堀田州次郎という同心が主人公の一人というだけの小説。ちなみに州次郎には養母と養女がいるだけで、大家族でも何でもない。
超能力者の殺人集団にやはり超能力を持った州次郎らが挑むわけだが、江戸時代のサイキック集団バトルは東京バンドワゴン関係なしにそれなりに面白い。もしかしてサチの姿が見えるのも隠れの力の遺伝?

■つるかめ助産院(小川糸)
夫が失踪、捨て子で、里親の反対を押し切って結婚したまりあは頼る人もなく、一人で尋ねた夫との思い出の島で偶然出会った助産院で妊娠を知る。妊娠から出産までのまりあの心の復活の物語。しかし、出産てのは大変なんですね。私の場合、一人目は嫁は実家でのお産、二人目は医者に立ち合うかと言われ断ったので、実際のところを知らないんですよね。

◆絵金、闇を塗る (木下昌輝)
歴史的にはさほど有名ではない(失礼)幕末の異端の絵師・絵金が、大阪や土佐で、市川團十郎、武市半平太、岡田以蔵、歴史上の有名人物をその絵で翻弄する。こういうのって一つ間違うととんでも小説になるが、その辺の塩梅が絶妙、いかにも木下さんらしい歴史小説。
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