ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

6月に読んだ本

2015-07-04 18:48:42 | 読書
6月は21冊でした。
まず前半で直木賞受賞作を3作ほど手に取ってみました。

◆吉原手引草 (松井今朝子)(幻冬舎文庫)
良い本を読んだって気分。直木賞は伊達じゃない。
吉原を描いた本は宮木さんの「花宵道中」に続いて2作目だけど、こちらはヒロインの花魁・葛城が登場しないまま彼女を取り巻く人のインタビューで、色恋沙汰を匂わせながらのミステリー仕立てで話が展開していく。
序盤はさながら吉原のガイドブックのよう。単なる色街ではない、非日常を演出する疑似恋愛の場、華やかさの裏にある女性の苦界、どうしようもない閉鎖社会を舞台に次第に解き明かされていく真実、文句なしの佳作です。

◆鷺と雪(北村薫)(文春文庫)
直木賞受賞作ということで読んでみたが、ベッキーさんシリーズ三部作の最終作、しかも解説に順番に読むべしと書いてあった。
戦前の名家を舞台にした、なんともおっとりとしたお嬢、英子様が語り部で、運転手のベッキーさんが探偵役のミステリー。
こまごまとした歴史のエピソードを織り込んだ、時代を感じられるよくできた作品だけど、やはり「街の灯」「玻璃の天」と順番に読まなきゃダメかな。

◆悼む人〈上〉〈下〉(天童荒太) (文春文庫)
死に取りつかれ、死者を悼む旅を続ける静人。
そんな彼と、エグい記事専門の週刊誌記者・蒔野抗太郎、乞われて夫を殺し、その亡霊につきまとわれる奈儀倖世、そして末期がん患者である母、巡子、死に直面する3人のかかわりを描くかたちで物語は展開していく。
やがて、静人を触媒に、蒔野や倖世が変わっていく。
倖世の夫の朔也の話は、異常で、おどろおどろしいですよね。興味深くも重苦しくて、どう感想を書いたものか。ちょっと苦手なお話でした。

下旬に「新潮文庫の100冊」「ナツイチ」「カドフェス」の本が判明、早速読み始めました。

まずは「新潮文庫の100冊」から3冊。
◆悲しみよこんにちは(フランソワーズ・サガン)
再読かと思ったのですが、初読かもしれません。サガンのデビュー作、これを書いたときはヒロインのセシルと同じ18歳。
時代は違うけど、若さ特有の勢いのある作品でした。

◆魔術はささやく(宮部みゆき)
自殺者のウラにそんな事実があったとは、「龍は眠る」同様、多少反則気味ですが、荒削りなところもふくめて宮部さんの若いころの作品ということで、よろしいのではないでしょうか。日下守くんが若くて真っ直ぐで良い。

◆あつあつを召し上がれ (小川糸)
初小川糸さんでした。
食べ物にまつわる短編「バーバのかき氷」「親父のぶたばら飯」「さよなら松茸」「こーちゃんのおみそ汁」「いとしのハートロリコット」「ポルクの晩餐」「季節はずれのきりたんぽ」7編。
食べ物の描写が実に美味しそう、人生の節目の出来事と食事の絡みが絶妙。「こーちゃんのおみそ汁」にほろっとさせられました。

集英社文庫の「ナツイチ」から2冊。

◆夏のバスプール (畑野智美)
初畑野智美さん。目的も持たずに何となく生きている高校1年の涼ちゃんのお話。
川村さん、西澤くん、富、涼ちゃんは知らず知らずのうちに人を傷つけている。それに気づいた涼ちゃんの恋と贖罪と成長の物語、なのでしょうか、良く言えば。うんうん、若いころはそんなこともありそうだなと思いつつも、もう一つお話にのめりこめませんでした。

◆2.43 清陰高校男子バレー部1. 2 (壁井ユカコ)
春高バレーも何も始まらないうちに話が終わってしまって、ちょっと肩すかし気味。
でも、私は中、高、大とバレー部だったので、バレーボールものには無条件で共感してしまいます。
元バレー部として言わせてもらえば「高校時代はほんの一瞬」というのは実感。自分の高校時代も、エースが退部したり、有望新人を入部させるのに半年かかったり、「さあ、関東大会目指して頑張るぞ!」という体制ができるまでにかなり時間を要した。そのへんがセレクションで選手を集められる有名私立との決定的な差かな。
本とは関係ないけど、福井県って3、4試合勝てば全国へ行けるんですね。僕たちのころの東京は4つか5つ勝ってやっとベスト8だった。。。

結構ミステリーをたくさん読んだ気がする。
◆隻眼の少女(麻耶雄嵩)(文春文庫)
古い因習の残る田舎町の名家で、二世代にわたって起こった猟奇的な殺人事件。
土俗的な妖しさという意味では割と軽め、おどろおどろしさでは桜庭さんの「赤朽葉家の伝説」のが上かな。
謎解きは玄人受けする本格ミステリーなのでしょうけど、素人目に見て、難しいことを考えなくても、こいつじゃないならこれしかないなーと、理屈抜きに犯人にたどり着けてしまう。犯人の動機もちょっと無理やり感があるなー。
面白いことは面白いんだけど。

◆折れた竜骨 上・下 (米澤穂信)(創元推理文庫)
舞台は12世紀の英国、魔法が普通に日常に存在する世界。ミステリーよりもファンタジー要素が強い。謎解きに魔法のルールが絡むのもちょっと反則っぽいかなと思いつつも、十分に独特の世界観を楽しめました。

◆13階段(高野和明)(講談社文庫)
「ジェノサイド」の高野さんのデビュー作ということで読んでみましたが、なるほど、鮮烈なデビュー作と言ってよいと思います。
第四章の「過去」がちょっと長くて冗長な感じがしましたが、それ以外はテンポもよく、第5章、第6章で「やはりそうきたか」と思わせながら、最後にもう一つあるという、何ともよくできたお話。
最後の「俺もお前も終身刑だ」の一言が重いですね。よくできたミステリーであると同時に、刑法や死刑制度についてもいろいろと考えさせられました。

◆アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎)(創元推理文庫)
序盤から中盤にかけて全然違う話がカットバックで続き、そして最後の最後で急速に絡み合う。
なるほど、絡み合って見れば、伏線はちりばめられていた。
広辞苑が本屋襲撃の目的とはとても思えないので、ここに鍵があるのだろうなとは思ったけど、そういうことですか。
面白かったけど、序盤は頭を切り替えるのが大変で少し読みにくかった。

■その女アレックス (文春文庫)
このミス大賞をはじめ、ミステリー海外部門の各賞総なめの小説ということで読んでみたが、なるほど、むべなるかな。
ヒロインのアレックスの印象が二章、三章と章が進むごとに全く変わってしまう、よくできた小説。
逆境でもあきらめない強い女、無差別で衝動的なシリアルキラー、そして、、、結末は壮絶ですね。
カミーユをはじめ警察側の3人もキャラ立ちしてて良いです。真実よりも正義、か。

過去の本屋大賞候補作から3冊。
◆明日の記憶 (荻原浩)(光文社文庫)
50歳の営業部長を襲った病魔、若年性アルツハイマー。ぞわっとくる本でした。
自分が自分でなくなっていく。明日は我が身?自分がこうなってみて、誰が自分の事を思っていてくれて、誰がそうでないか、分かりますよね。
切ないお話でした。

◆キネマの神様(原田マハ)(文春文庫)
「楽園のカンヴァス」は絵画、そしてこの「シネマの神様」は映画、原田マハさんの作品は、好きなものに対する造詣と愛情に溢れている。
ギャンブル狂の父親がブログがきっかけで立ち直り始めるあたりでは、ちょっとご都合主義かなと思ったけど、そういうものを凌駕する理屈抜きの展開に、後半は一気読みでした。

◆家守綺譚(梨木香歩)(新潮文庫)
亡くなった友の古い家にひとり住む語り手が経験する不思議な物語。
森見登美彦さんの「きつねのはなし」とか、アニメだと「夏目友人帳」みたいなお話。
怪異を当然のこととして受け止める語り手や周囲の人、時代は戦前、場所は滋賀県よりの京都でしょうか。昭和初期の京都だったら、そりゃきっとこんなこともあったろうねって普通に思わせる、そんな小説でした。
夏に始まって春に終わる、四季折々の描写が何とも素晴らしい。好きになれる一冊でした。

積読本の消化を2冊。
◆アカペラ (山本文緒)(新潮文庫)
初山本文緒さん。
「2012年の新潮文庫の100冊」ということで、長い間積読本になっていたのだが、何とはなしに読んでみたら、なかなか面白かった。
つらいことも多いけど、でも人生は悪くない。前向きな少女がヒロインの「アカペラ」、逃げ続けのダメ男とそれを支える女性たちを描いた「ソリチュード」、薄幸の中年姉弟の絆を描いた「ネロリ」、どの話も女性が地味にたくましい、優しいお話でした。

◆きみが見つける物語 十代のための新名作 スクール編 (角川文庫)
ブックオフの100円コーナーで買って積読本になっていたもの、息抜きに読んでみた。
豊島ミホさん、はやみねかおるさん、加納朋子さんは初読。なるほどスクール編って感じのお話でした。
あさのあつこさんはあさのさんらしい一編、恩田さんも、村上春樹さんもです。
北村薫さんのは面白かったけど、なぜこれがスクール編にはいっているのか。
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