ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

11月に読んだ本

2014-12-01 21:20:16 | 読書
何といっても、11月は、新潮文庫の100冊を読了しました。
その最後の2冊が、これ。

◆夜間飛行 (サン・テグジュペリ)
ライト兄弟が初めて飛行機を飛ばしてから、わずか数十年後の話。
悪天候や不時着時の不慮の事故、危険な仕事に勇気と矜持を持って従事する人々の内面を、自身がパイロットであるサン・テグジェペリが描く。
観念的な文章にちょっと疲れた。

◆フラニーとズーイ (新潮文庫)
一言でいえば偏屈で理屈っぽい元天才の兄妹のお話。サリンジャーは「キャッチャー・イン・ザ・ライ」についで2作目だけど、ホールデン君とこのフラニーとズーイ、劣等生と天才の差こそあれ、まあ似たような話。
純粋な人が精神を病まなければならないようないやらしさに満ちた世の中で、それでも優しい人なってやろうじゃないかとか、そんな風に読めばいいのかな。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も村上春樹さんの訳だったので、この独特の読みにくさは原文のせいなのか、村上ワールドなのか、別の訳も読んでみたい。

ああ、これでやっと好きな本を読めると思いました。
なんか、本末転倒の「新潮文庫の100冊」挑戦でした。

◆徒然草 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
読んだのは、大学の受験勉強以来かも。
滑稽譚も交えた、卓越した人生訓。一見バラバラの話のようで、ピッと筋が通っているのは、一貫して背景にある無常観のためでしょう。
諸行無常、万物流転、悠久の時間の前に人生などは塵芥のようなもの。さればこそ、人はどう生きるのが良いのか。
多少の独断と偏見を交えながらも、兼好法師の弁舌は潔く清々しい。

◆Nのために (湊かなえ)
榮倉奈々さん主演のドラマが面白くて、本も買ってみたのだけど、しまった、一気読みしちまったぜ。
愛とは罪の共有、相手にすら教えずに罪を共有すること。希美、望、成瀬、西崎、奈央子、そして野バラ荘、夫々が夫々のNのために。すべての真実を知ることができたのは読者だけ、ってことか。
やはり湊さんのミステリーはあざとい。
ドラマではそれが三浦友和の駐在さんの役割になるのだろうな。まあ、ドラマは別物と思って視聴します。

◆さくら日和 (さくらももこ)
息抜きに読んでみた。相変わらず馬鹿馬鹿しくも面白い。爽やかな自虐ネタが笑える。
秀逸は何と言っても新福さんをたたえるパーティ。どうせやるならここまでやりたい、されたい、参加したいと思います。

◆乳と卵(らん) (川上未映子)
初川上未映子さん。独特の文体ですね。大阪弁もネイティブで。
しぼんだ乳に悩む母と卵のままでいたい娘のすれ違い、理解できないが故の嫌悪感と愛憎とかですかね。
男にはもう一つ良くわからない話でした。

◆空中庭園 (角田光代)
以前、映画で見た。小泉今日子主演で、ミーナ役がソニンたんだった。なかなか面白い映画で、そうか原作は角田さんだったんだ。
角田さんは、これで直木賞をとれなくて、対岸の彼女でとったんだけど、僕はこっちの方が断然好き。
南向きのベランダに作られた色とりどりのガーデン。作られたきれいごとの裏に潜むそれぞれの真実が中々に生々しい。
それがむなしいことだと薄々気づきながらも、必死にその庭園を守ろうとして壊れる寸前の絵里子が痛い。
しかし、貴史さん、ちょろ助とか、ぴょんだとか呼ばれて、どうしようもない男です。

◆東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)
リリー・フランキーさんの自伝、映画、TVドラマにもなった大ベストセラーということで読んでみた。
前半がちょっと冗長で、後半になってやっとエンジンがかかってきた感じ。
波乱万丈の半生、それにしてもしようもないオヤジといいお母さんだな。
親孝行、しなきゃなとは思ったけど、文学作品としては微妙、感動の度合いとしては、まあ普通くらい。

◆クライマーズ・ハイ (横山秀夫)
日航機墜落、覚えています。当時自分は新入社員で大阪に赴任していて、東京・大阪間は仕事やプライベートで結構頻繁に移動してたので、「げっ、マジかよ」って思ったのを記憶してます。
初横山秀夫さんだったのですが、すごい、力作ですよね。新聞社の内部の話、リアルすぎます。
隔壁のスクープの話、緊迫ですよね。自分だったら多分載せる決断をすると思うけど。

◆熱帯安楽椅子 (山田詠美)
ヒンズーの神々が棲む南の島での、ワヤン青年とトニ少年との、自由で、穏やかで、自然な愛欲の日々、ですかね。
肉体の快楽も、心の快楽も、どっちかがどっちかを束縛することもなく流れていく、南国独特の穏やかな退廃。
感覚的にすごくわかる部分はあります。
女性は、バリへ行くとこういう体験ができるのかな。男は、何処へ行けばこういう体験ができるんだろうね。

◆みんなのうた (重松清)
東大受験に3度失敗したレイコと、高校中退で家出したシングルマザーのイネが夢破れて田舎に帰ってくるところから話は始まります。
人情ものの重松さんにしては、軽妙の部類に入る作品。
どっとまとわりつく故郷の空気を煩わしい、束縛と感じるのか、暖かいと感じるのか。
私は東京の下町育ちですが、昔はこういう人間関係がありました。都会は都会で、流れ込んでくる人のために無人のビルが建ち、人間関係は空疎化しているのです。
諸行無常、万物流転、多様化し変化していく世の中で、絶滅危惧種的に残存している田舎のノスタルジックなお話でした。

◆きみが見つける物語 十代のための新名作 恋愛編 (角川文庫)
有川浩さんの植物図鑑のみ既読。でも長編小説を一部だけ掲載してもねー。
梨屋アリエさん、乙一さんのは恋愛モノにしては変化球過ぎるかな。
山田悠介さんのも恋愛というよりミステリー、でもそれにしては落ちが単純。
東野圭吾さんは短編もなかなかうまい。

◆葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
いきなりセックスだったので、すっかり騙されました。うーん、先入観とは恐ろしい。
最後の最後まで思い当たりもしませんでした。ジャイアンツとホークスの日本シリーズって、南海ホークスか!
実は、自分は都立青山高校の出身なので、あれ、港区白金って学区じゃないよなとか、うちって結構進学校だったのになーなんて思って読んでいたのですが、そういうことかよっ。

◆100万回の言い訳 (唯川恵)
マンネリというか、不完全燃焼状態の夫婦の結子と士郎、身につまされる話でした。
偶然始まった別居生活が、ふたりの日常に刺激的な変化をもたらす。
その刺激を楽しみながらも、一方では不安に感じ、結局は、自然に、平穏、安全な元のサヤに収まりました、って話ですか。
煮え切らない二人に比べて、志木子の決断は爽やかですよね。
陸人も、意味なく一途。
若いってことかな、これが。
自分的にはかなり面白かったです。唯川さんにしては随分厚い本だなと思ったのですが、読んでよかった。

◆Agatha Christie : And then there were none
中盤から息もつかせぬ展開と最後の大どんでん返し。文句なしに名作です。
登場人物の性格も際立って良く書かれているし、心理描写もうまい。
英語も格調高くて、登場人物の皆さん、折り目正しい英語をしゃべってくれるので、読みやすかったです。

◆そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー)(クリスティー文庫)

先に原書で読みました。
青木久恵さんの翻訳、翻訳にありがちな読みにくさがなくって、なかなかの名訳だと思います。
登場人物の性格、息もつかせぬ展開、疑心暗鬼の心理描写、そして、なんか変だぞと思わせて、最後のどんでん返し。
ミステリーの王道ですね、面白かった。

◆天地明察(上)(下) (冲方丁)

単に主人公・渋川春海の天文学への挑戦ではなく、改暦事業をテーマにした、江戸時代の社会派小説ですね。
難しい題材を、淡々とした語り口で仕上げています。
前半は、建部と伊藤、老人二人が良い。
終盤の大統暦との戦い、池井戸潤さんだったらくどくどと盛り上げるところでしょうが、実にあっさりとした記述で、それが春海らしくてまた良いです。
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