ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

「クドリャフカの順番」(米澤穂信)

2012-05-19 09:44:14 | 読書
米澤穂信さんの古典部シリーズも3作目。いよいよ文化祭です。
サブタイトルは「Welcome to KANYA FESTA」、作者があとがきにも書いているように、今回の主役の主役は文化祭そのもの、実にたくさんの個性的な部活が存在しています。

そんな文化祭で、クリスティーのABC殺人事件のような、でも些細な事件が起こります。
アカペラ部からアクエリアス、囲碁部から石、占い研究会から(タロットカードの)運命の輪、「あ」の名前のクラブから「あ」の付くものが、「い」のクラブからは「い」のものが盗まれる。
古典部のメンバーは、手違いで200部も印刷してしまった文集の販売に苦慮しながらも、この事件の謎に挑む、そんなお話です。

声優さんの発表を見るとこの話もアニメ化されるみたいなんで、アニメのみをご覧になる予定の方、以下ネタばれ注意です。

1作目の「氷菓」、2作目の「愚者のエンドロール」は、完成度の高いミステリーと思いましたが、この作品はミステリーとしてはちょっと?です。
ここまで手の込んだことをするには、犯行の動機が弱いように思います。
愉快犯というならともかく、単に春奈さんの原作を世に出したいだけなら、いくらでもほかに方法があるでしょう。
伏線も整理しないで放りっぱなしのものがいくつか。
そもそもが、タイトルの「クドリャフカの順番」ですが、小説としても、作中の漫画の原作としても随分変なタイトルです。
クドリャフカって、旧ソ連の人工衛星、スプートニク2号に実験動物として乗せられたライカ犬の名前ですよね。
スプートニク2号は、地球の周回軌道に乗るだけで大気圏再突入はしませんでしたから、クドリャフカは最初から名誉の死を遂げる運命だったってことになります。
そんな犬の名前をタイトルにした原作、どんな話だか「私、気になります」が、この小説の中では、一切言及されてません。
摩耶花の家から「夕べには骸に」の本がなくなっていたのも意図的なのか、偶然なのか、分からないし。
それに、これは前作もですが、黒幕?のホータローのお姉さんが、ほとんど核心に近い資料をポンと渡しちゃうのもなー、って思いました。

とまあ、ミステリーとしてはいろいろありますが、学園小説としては十分に面白かったです。
なによりもカンヤ祭に登場するたくさんの文化部の活動のユニークなこと♪
私の高校も、文化祭はたいそう派手でした。
私は終始一貫運動部系の人間でしたので、文化部のことは分かりませんが、こういう学園生活、楽しいだろうなとは思います。

前作で、タロットカードに例えると、ホータローは「力」でえるは「愚者」、摩耶花が「正義」で里志が「魔術師」って件がありました。
実に言い得て妙と思います。
力はそれ自体良いも悪いもない、ただの力です。
それが愚者のえるにより動かされるというのが今までのパターンなのですが、今回のホータローくん、謎解きのみならず、自主的に犯行の完遂まで幇助してしまう。

それを変化というのか、成長というのか、いやー、青春っていいですね。





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