ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

22年3月に読んだ本

2022-04-02 11:03:07 | 読書
久々に月20冊読みました。
まずは新刊を中心に単行本が5冊。

◆臨床の砦(夏川 草介)
「神様もカルテ」の夏川草介さんの描くとある地方都市のコロナ病棟の現実、限りなくノンフィクションに近い小説。
時期はワクチン接種も始まっていない中で第三波が到来した21年1月。この頃の陽性者数は今の1割程度、でも死者数は約半分、高い確率で死に至るこの病に対する恐怖と偏見が今より強くあった。
未体験の事態に行政が司令塔の役割を果たせない状況下、最前線の人が志と矜持をもって現場を支える様に心を打たれる。

◆雷神(道尾 秀介)
道尾さんらしい、伏線が回収されていくにつれて明らかになる救いのない現実。最後の2行がダメ押し。
30年の年月を経て繋がる連続殺人、ただ、いくら30年ぶりとはいえ、高校時代の親友は普通合えばわかるよね(と、ちょっと突っ込んでみる)。

◆機龍警察 白骨街道 (月村 了衛)
シリーズ最新作の舞台はミャンマー。罠と知りつつ姿、ユーリ、ライザの3人を丸腰でミャンマーに派遣せざるを得なかった特捜部、一方で日本では城木理事官の実家が絡んだ汚職が進行する。
ロヒンギャ難民とインパール作戦、現実と歴史の問題も絡めつつ、ミャンマーの奥地での緊迫の脱出劇。前作の狼目殺手ではなかった機甲兵装によるド派手なバトルが圧巻。ソージンテット隊長らミャンマー警察の4人が何気にカッコいい。
「敵」の輪郭が徐々に見え始めつつ、特捜部に新しい仲間も加わり、このシリーズ、まだまだ続きますね。

◆ヒトコブラクダ層ぜっと(下)(万城目 学)
上巻は先月読了。メソポタミア、世界史で世界四大古代文明って習ったけど、意外となじみがなく、今どこの国にあるのかも知らなかった。神話も、エレシュキガルとかイナンナ(イシュタル)とか、アニメやその手のゲームで名前を聞いたことがあるくらい。そんななじみの薄いメソポタミアで展開される万城目ワールド。
神話に連なる壮大なファンタジーであり、下巻は不思議な事件にどっぷり巻き込まれた榎土さん兄弟ら自衛隊と海兵隊、砂漠でかく戦えりみたいなお話。三人の上司の銀亀三佐がいい味を出していて、面白いには面白かったが、長い。。。

◆孤島の来訪者(方丈 貴恵)
昨年のこのミス13位、本格ミステリ7位作品。シリーズ2作目だが、前作の「時空旅行者の砂時計」より面白かった。
タイトル通りの孤島のクローズドサークルものだが、内容は「そして誰もいなくなった」+「ターミネーター」って感じで、奇想天外な特殊設定も楽しめた。鮎川哲也賞受賞のシリーズものだけあって読者への挑戦状、そして結末のどんでん返しもいかにも本格臭い。

文庫本を計15冊。
うち集英社文庫の「ナツイチ2021」から8冊。
◆鉄道員(ぽっぽや) (浅田次郎)
数年間積読にしていたが、もっと早く読めばよかった。「鉄道員(ぽっぽや」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」、表題作だけではなく、いずれ劣らぬ珠玉の短編が8編。
「ラブ・レター」、病死したあったこともない薄幸の中国人女性、手紙のまっすぐさとささやかなお願いが胸に沁みます。
「角筈にて」、幼いころ父のトラウマから妻を傷つけてしまったことを悔やむひと昔前の商社マン、私も商社だったのですが、最初の上司に少しだけ似ているかな。

◆帰郷 (浅田 次郎)
「帰郷」「鉄の沈黙」「夜の遊園地」「不寝番」「金鵄のもとに」「無言歌」、大東亜戦争に纏わる短編が6編。「鉄の沈黙」「無言歌」は戦時中の話、他は戦争で運命を狂わされた人の戦後譚。
子供の頃、上野公園の前で「金鵄のもとに」そのままの白衣を着た傷痍軍人を見た記憶がある。先の大戦から四分の三世紀が経過、「戦争を知らない子供たち」と言われた我々世代もすっかり歳をとった。もはや歴史になってしまった戦争や戦後の混乱期の記憶を生々しく語り継ぐ短編集。

◆青矢先輩と私の探偵部活動 (喜多 喜久)
青矢先輩が超ハイスペックな割には、謎の方がシンプルって感じもするが、まあ、そういう風に読まなければ、これはこれで。

◆捜し物屋まやま(木原 音瀬 )
売れない小説家の和樹は霊感のある義弟の白雄と捜し物屋を開業、そこに火事でゴミ屋敷を焼きだされた三井と、ドルヲタの弁護士、アラサー独身男4人が絡むドタバタストーリー。

◆ババア上等! 余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo!&Don’t(地曳 いく子,槇村 さとる)
スタイリストの地曳さんと漫画家の槇村さん、二人のアラカン女性によるファッション談義。
単にファッションにとどまらず、背伸びせず、できることをして素敵に歳を取る方法とまで言うと大げさだが、共感する部分大いにあり。それと同時になるほど女性は大変なんだなとも思った。
男は背広(スーツ)という正装があってオンオフの切りかえが容易だったが、エブリディカジュアルになり、いつの間にかワードローブのほとんどがユニクロになった。自分は素敵に歳をとれているのか?

◆ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX (村山由佳)
シリーズものなのに、最終巻のこの本だけ読んでしまった。ググって全体の流れもおおむね把握した。このお話の良さを理解したとはとても言い難いけど、とにかくこの1冊でお腹一杯になりまし

◆本日のメニューは。 (行成 薫)
「四分間出前大作戦」(ラーメン)、「おむすび狂騒曲」(おにぎり)「闘え!マンプク食堂」(定食屋)、「或る洋食屋の一日」(洋食屋)、「ロコ・モーション」(キッチンカー)、とある地方都市の市井の人が奏でる、食べ物屋さんに纏わるハートフルストリー。最初の4編は後継者のいない年配者のお店、そして最後を飾るのが脱サラして新たにキッチンカーを始める若い夫婦のお話。各話がゆるやかにつながりほっこりとした気分にさせられる。この手のテーマの作品は多々あれど、これは結構好き、良かった。

◆白蓮れんれん (林 真理子)
白蓮事件については、NHKの朝ドラ「花子とアン」で知った知識のみ、ドラマの仲間由紀恵さん、吉田鋼太郎さんに脳内変換して読んだ。
大正デモクラシーの世でも、不倫は命がけ。ドラマでは吉田鋼太郎さんが気の毒に思えたのが、実態は少し違った?白蓮さんはかわいそうな籠の鳥にも思えるし、夫の財産で好き放題贅沢をしたのだから自業自得のようにも思えるし。
まあ、本人が自分の人生を全うしたのだから他人がとやかく言う問題じゃないのかな。

角川文庫の「̚カドフェス2021」から3冊
◆夏の災厄 (篠田 節子)
コロナも当初武漢が封鎖されたり、報告しようとした医師が弾圧されたり、中国や米国の生物兵器陰謀説なんてのもあった。ワクチンの副反応とか、これはCOVID-19予言の書?
行政や大学病院が混乱し、事なかれに終始する間に、最初は小役人っぽかった小西や実は優秀な永井所長、肝っ玉母さん風の派遣の看護師・房代、思想的偏向が見られる医師・鵜川、市井の人が思わぬ成長をみせ、難病に立ち向かっていく。はからずも今の世相にマッチした戦慄のエピデミック・ミステリーであり、痛快なエンタメ小説でもある。

◆歌集 滑走路 (萩原 慎一郎)
著者のことは全く知らなかった。カドフェスに選本されていなければ絶対に手に取ることはなかった本。短歌についても、百人一首か明治神宮のおみくじくらいしか目にすることはなかったが、なるほど口語の和歌ならこういう描写や表現ができるのか。滑走路を疾走し、大空へ離陸するに至らなかった著者の心を思う。この本に出合わせてくれたカドフェスに感謝!

◆藪の中・将軍 (芥川 龍之介)
すごく久しぶりの芥川龍之介、改めて、多彩な知識と技巧を持った作家さんだったななと思いました。「好色」「神々の微笑」「将軍」「藪の中」が印象的。もし秀吉がキリスト教を弾圧しなかったら、本地垂迹説みたいなことになっていたのかな。神社までできた乃木将軍を、その死後10年目でここまで描いたのはちょっとびっくり。

◆無理 上・下 (奥田 英朗)
積読本崩し中につき、下の方の地層(5年前?)にあった本書を発掘。帯に「寝不足、必至!(ご注意)」とあったが、ホントに、2日で上下巻一気読みして寝不足になった(笑)。
わがままで無気力な市民に嫌気がさす市役所員、悪徳商売に身を染める暴走族上がり、土建屋と癒着した市議会議員、新興宗教にすがる孤独な女性、東京の大学を目指す女子高生。衰退する地方都市の市井の人たち5人の話がオムニバスに進む。どうあがいても浮かび上がれないどん底の生活、志や公共心を持たない人たちの人生が、わずかなことをきっかけにどんどん暗転していく。何が心に残るということもないが、まあ、理屈抜きに面白い。

◆そして生活はつづく (星野 源)
この本も5年くらい積んでいた。星野さんの09年頃のエッセイ、例のドラマのかなり前ですね。
生活力がないところが自分と似てるなと。自分も洗面台びしょびしょにするし、食事は食べこぼすし。でも、こんな彼が新垣結衣さんと結婚したのはなんとなく納得がいかない。南キャンの山ちゃんと蒼井優さんくらい納得がいかない。

◆夫のちんぽが入らない (こだま)
話題になった本だが、失礼ながら「コミュ障で自分に自信が持てない、自分を好きになれない不幸な女性が、行き当たりばったりに生きた半生を露悪的に語った本」という印象を持った。
自分なら、入らないのも、学級崩壊によるうつ症状も、さっさと病院のお世話になってよりよい状況を作れていたと思う。出会い系サイトの大仁田やアリハラとの関係等間違いだらけと思える対応も、結果的に大事に至らず落ち着くところに落ち着いたのは、偶然か、幸運か、はたまた兄妹のような夫婦の愛の力か。
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