もう1月も終わりか。なんか早いですね。
今月は17冊でした。
◆ユートピア(湊かなえ)
キャッチコピーは「善意は悪意より恐ろしい」、恐ろしいのはすみれ、それとも子どもたちふたり?話の展開が少し分かりにくいけど、落ち着いて読むと、なるほど最後のページが恐ろしい。
でも常識的な人たちもいて少しだけ希望が持てるラストかな。
自分の生まれ育った東京の下町も、鼻崎と少しだけ似たところがあるので、地元民のよそ者に対する気持ち、分かります。
◆「戦争まで」 歴史を決めた交渉と日本の失敗(加藤陽子)
新潮文庫になった「それでも日本人は「戦争」を選んだ」の続編的な本。
今回は歴史の転換期となったリットン調査団、日独伊三国軍事同盟、開戦直前の日米交渉を、中高生への講義を通じて掘り下げたもの。
自分としては、このあたりの歴史は十分に知っているつもりであったが、なるほど、当時の資料を読み込み、歴史をリアルタイムで把握することにより、見えてくるものがたくさんあるのだなと、目から鱗の気持ちで読ませていただいた。
歴史を学ぶ意義を実感させてくれる良著。
◆半席(青山文平)
青山さんお得意の江戸時代、それも幕末ではなく、太平が続き、幕藩体制の矛盾が露わになってきた19世紀初頭。
こんどのは倒叙ミステリー。犯人は割れているが、ホワイダニット、その動機となった武士特有の心持が、哀しみと少しの可笑しみをもって描かれている。
探偵役の片岡直人とその上司の内藤雅之のコンビがなかなかに良い。
◆2.43 清陰高校男子バレー部 second season(壁井ユカコ)
元バレー少年だったので、このシリーズは、スピンオフの「空への助走 福蜂工業高校運動部」も含め、自分の青春を重ねて感情移入して読んでいます。
話が少年ジャンプ連載の「ハイキュー」によく似ているけど、ま、スポーツものの王道のストーリーってことで。
◆決戦!本能寺
斎藤利光、織田信房、細川幽斎、鳥井宗室、天下人にならんとする織田信長を屠ろうとした黒幕に様々な名前が挙がる、歴史作家さんたちのアンソロジー。
おどろおどろしい迫力という意味ではやはり木下昌輝さんの「幽斎の悪采」が秀逸。
ひねりなく明智犯人説の冲方さんの「純白き鬼札」は、ホワイダニット、謀反の動機がそっちかという感じ。
あと、初読みの作家さんだが宮本昌孝さんの「水魚の心」の徳川家康がカワイかった。
◆オリンピックの身代金(上)(下) (奥田英朗)
もうじき東京オリンピックなので読んでみたが、面白かった。
「空中ブランコ」のような、コミカルな作品のイメージが強かった奥田さん、なるほどこういう痛快なサスペンスも書くんだ。
主人公の島崎の国家に一人で反逆する意志の強さ、優しさ、哀しさ、警察の奮闘よりもどうしてもそちらに目がいってしまう。
それにしても、あの頃の日本は、まだこんなに貧しかったのか。大きな地域格差があって、大卒が珍しくって、日本人が一つのことに向かって熱狂できた時代のお話。
◆人魚の眠る家(東野圭吾)
脳死と臓器移植、母親の気持ちはとってもわかるけど、やはり自己満足。重たい話題が神秘的かつグロテスクに描かれた作品だけど、安易なハッピーエンドではないラストに救われました。
◆なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合 (電撃文庫)(夏海公司)
このシリーズも早や15巻、スルガシステムのブラックぶりとドMのスーパー新人、工兵くんの活躍を、可笑しみ8割、共感2割で読んできましたが、今回のは素直に笑えない。
藤崎・室見チームは正攻法で勝負してきているのに、勝つためというよりも負けないために搦め手から相手の足を引っ張る、手段を選ばないやり方は工兵くんらしくない。
いつも少し元気をもらえてたのですが、今回ばかりはちょっと違ったかな。
◆結物語 (西尾維新)
オフシーズン完結編は、暦くんとそのハーレムの女性の5年後、それぞれが自分の道(それもかなりスーパーな)を行っていて、安易につるんでいないところが良い。
みんな暦くんから巣立っていった。でも、やはり最後はそこに収まるわけか。羽川翼ファンの自分としては、少し残念。
やれやれ、やっとこれで終わりかと思ったら、今度はモンスター・シーズンだと!
◆倒叙の四季 破られたトリック (講談社ノベルス)(深水 黎一郎)
裏ファイル「完全犯罪完全指南」が導く倒叙ミステリの短編「春は縊殺」「夏は溺殺」「秋は刺殺」「冬は氷密室で中毒殺」が4編。
最後にどんでん返しも用意されていて、なかなかに読み応えあり。
◆ブラタモリ 5 札幌 小樽 日光 熱海 小田原
◆ブラタモリ 6 松山 道後温泉 沖縄 熊本
毎回思うのですが、あの歩くしか手段のない時代に、江戸時代のツーリズムって、すごいですよね。
小田原城は、年末に実際に行ってみてきました。
小樽は30年以上前に1回行ったきり。お寿司がおいしかった記憶しかないが、そうか、あのころが一番さびれていたときか。
沖縄はNAHAマラソンとかで何度も行っていて、国際通りや公設市場はもちろん、首里城にも行きましたが、、知らなかったことがいっぱいで。
熊本、この回の放送から1か月も経たないうちに地震にあってしまったのですよね。
◆夜行(森見登美彦)
「鞍馬の火祭」で失踪した長谷川さんをしのぶ旅行で友人たちの口から語られる奇妙な話。その話にまつわる、夭折した岸田道生という銅板画家の「夜行」という連作。
よくわからないがひたすら不気味な話が4つ続く。
そして最後の鞍馬の話。不思議だけど、これだけは不気味というのとちょっと違う。謎解き?謎解きになっていないんですけど。
いつもの腐れ学生のドタバタ劇とは全く違う、もう一つの森見ワールド。
◆悟浄出立 (万城目学)
「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤墳」「父司馬遷」、中国の故事を題材にした万城目さんの歴史小説。森見さんの「山月記」のような、悟空の大冒険的な二次創作ものを想像していたら全然違った。もっとシリアス。
「虞姫寂静」の虞美人のプライドと命を賭けた情念、「法家孤墳」の法治国家という理想と死した旧友への想いは心に迫るものがあった。
◆砕け散るところを見せてあげる (竹宮ゆゆこ)
中盤くらいまでは普通にいじめをテーマにした作品なんだなと思っていたのですが、玻璃のお祖母さんがどうやら、、、となったあたりで、おいおい、ちょっとやりすぎじゃないのと思ったのですが、清澄が怪我をして病院に運びこまれたときの、お母さんの「お父さんもこっちに向かっているから」の一言で「ん!」となって、、、最後はこんな結末かよと。
でも「イニシエーション・ラブ」の時のような「やられた!」感には今一つ。UFOの例えが分かりにくいし、タイトルの意味も謎。
◆涙香迷宮(竹本健治)
17年の「このミス」1位をはじめ各社のミステリー・ランキングの上位を総なめにした、16年のミステリー界一番の話題作。
いや、とにかくすごかった。当たり前だけどいろは歌の暗号、黒岩涙香ではなく竹本さんが考えたのですよね。すご過ぎです。
それでいて、ミステリーの方はお約束の嵐の山荘、そしてちゃんと適度な難易度で完結している。
最後の涙香と幸徳秋水の問題ですが、「『私は日露戦争を支持するよう涙香に刃物で脅されたが、屈せずに社を辞めてきた』と他の新聞で書け」、違うかな?
今月は17冊でした。
◆ユートピア(湊かなえ)
キャッチコピーは「善意は悪意より恐ろしい」、恐ろしいのはすみれ、それとも子どもたちふたり?話の展開が少し分かりにくいけど、落ち着いて読むと、なるほど最後のページが恐ろしい。
でも常識的な人たちもいて少しだけ希望が持てるラストかな。
自分の生まれ育った東京の下町も、鼻崎と少しだけ似たところがあるので、地元民のよそ者に対する気持ち、分かります。
◆「戦争まで」 歴史を決めた交渉と日本の失敗(加藤陽子)
新潮文庫になった「それでも日本人は「戦争」を選んだ」の続編的な本。
今回は歴史の転換期となったリットン調査団、日独伊三国軍事同盟、開戦直前の日米交渉を、中高生への講義を通じて掘り下げたもの。
自分としては、このあたりの歴史は十分に知っているつもりであったが、なるほど、当時の資料を読み込み、歴史をリアルタイムで把握することにより、見えてくるものがたくさんあるのだなと、目から鱗の気持ちで読ませていただいた。
歴史を学ぶ意義を実感させてくれる良著。
◆半席(青山文平)
青山さんお得意の江戸時代、それも幕末ではなく、太平が続き、幕藩体制の矛盾が露わになってきた19世紀初頭。
こんどのは倒叙ミステリー。犯人は割れているが、ホワイダニット、その動機となった武士特有の心持が、哀しみと少しの可笑しみをもって描かれている。
探偵役の片岡直人とその上司の内藤雅之のコンビがなかなかに良い。
◆2.43 清陰高校男子バレー部 second season(壁井ユカコ)
元バレー少年だったので、このシリーズは、スピンオフの「空への助走 福蜂工業高校運動部」も含め、自分の青春を重ねて感情移入して読んでいます。
話が少年ジャンプ連載の「ハイキュー」によく似ているけど、ま、スポーツものの王道のストーリーってことで。
◆決戦!本能寺
斎藤利光、織田信房、細川幽斎、鳥井宗室、天下人にならんとする織田信長を屠ろうとした黒幕に様々な名前が挙がる、歴史作家さんたちのアンソロジー。
おどろおどろしい迫力という意味ではやはり木下昌輝さんの「幽斎の悪采」が秀逸。
ひねりなく明智犯人説の冲方さんの「純白き鬼札」は、ホワイダニット、謀反の動機がそっちかという感じ。
あと、初読みの作家さんだが宮本昌孝さんの「水魚の心」の徳川家康がカワイかった。
◆オリンピックの身代金(上)(下) (奥田英朗)
もうじき東京オリンピックなので読んでみたが、面白かった。
「空中ブランコ」のような、コミカルな作品のイメージが強かった奥田さん、なるほどこういう痛快なサスペンスも書くんだ。
主人公の島崎の国家に一人で反逆する意志の強さ、優しさ、哀しさ、警察の奮闘よりもどうしてもそちらに目がいってしまう。
それにしても、あの頃の日本は、まだこんなに貧しかったのか。大きな地域格差があって、大卒が珍しくって、日本人が一つのことに向かって熱狂できた時代のお話。
◆人魚の眠る家(東野圭吾)
脳死と臓器移植、母親の気持ちはとってもわかるけど、やはり自己満足。重たい話題が神秘的かつグロテスクに描かれた作品だけど、安易なハッピーエンドではないラストに救われました。
◆なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合 (電撃文庫)(夏海公司)
このシリーズも早や15巻、スルガシステムのブラックぶりとドMのスーパー新人、工兵くんの活躍を、可笑しみ8割、共感2割で読んできましたが、今回のは素直に笑えない。
藤崎・室見チームは正攻法で勝負してきているのに、勝つためというよりも負けないために搦め手から相手の足を引っ張る、手段を選ばないやり方は工兵くんらしくない。
いつも少し元気をもらえてたのですが、今回ばかりはちょっと違ったかな。
◆結物語 (西尾維新)
オフシーズン完結編は、暦くんとそのハーレムの女性の5年後、それぞれが自分の道(それもかなりスーパーな)を行っていて、安易につるんでいないところが良い。
みんな暦くんから巣立っていった。でも、やはり最後はそこに収まるわけか。羽川翼ファンの自分としては、少し残念。
やれやれ、やっとこれで終わりかと思ったら、今度はモンスター・シーズンだと!
◆倒叙の四季 破られたトリック (講談社ノベルス)(深水 黎一郎)
裏ファイル「完全犯罪完全指南」が導く倒叙ミステリの短編「春は縊殺」「夏は溺殺」「秋は刺殺」「冬は氷密室で中毒殺」が4編。
最後にどんでん返しも用意されていて、なかなかに読み応えあり。
◆ブラタモリ 5 札幌 小樽 日光 熱海 小田原
◆ブラタモリ 6 松山 道後温泉 沖縄 熊本
毎回思うのですが、あの歩くしか手段のない時代に、江戸時代のツーリズムって、すごいですよね。
小田原城は、年末に実際に行ってみてきました。
小樽は30年以上前に1回行ったきり。お寿司がおいしかった記憶しかないが、そうか、あのころが一番さびれていたときか。
沖縄はNAHAマラソンとかで何度も行っていて、国際通りや公設市場はもちろん、首里城にも行きましたが、、知らなかったことがいっぱいで。
熊本、この回の放送から1か月も経たないうちに地震にあってしまったのですよね。
◆夜行(森見登美彦)
「鞍馬の火祭」で失踪した長谷川さんをしのぶ旅行で友人たちの口から語られる奇妙な話。その話にまつわる、夭折した岸田道生という銅板画家の「夜行」という連作。
よくわからないがひたすら不気味な話が4つ続く。
そして最後の鞍馬の話。不思議だけど、これだけは不気味というのとちょっと違う。謎解き?謎解きになっていないんですけど。
いつもの腐れ学生のドタバタ劇とは全く違う、もう一つの森見ワールド。
◆悟浄出立 (万城目学)
「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤墳」「父司馬遷」、中国の故事を題材にした万城目さんの歴史小説。森見さんの「山月記」のような、悟空の大冒険的な二次創作ものを想像していたら全然違った。もっとシリアス。
「虞姫寂静」の虞美人のプライドと命を賭けた情念、「法家孤墳」の法治国家という理想と死した旧友への想いは心に迫るものがあった。
◆砕け散るところを見せてあげる (竹宮ゆゆこ)
中盤くらいまでは普通にいじめをテーマにした作品なんだなと思っていたのですが、玻璃のお祖母さんがどうやら、、、となったあたりで、おいおい、ちょっとやりすぎじゃないのと思ったのですが、清澄が怪我をして病院に運びこまれたときの、お母さんの「お父さんもこっちに向かっているから」の一言で「ん!」となって、、、最後はこんな結末かよと。
でも「イニシエーション・ラブ」の時のような「やられた!」感には今一つ。UFOの例えが分かりにくいし、タイトルの意味も謎。
◆涙香迷宮(竹本健治)
17年の「このミス」1位をはじめ各社のミステリー・ランキングの上位を総なめにした、16年のミステリー界一番の話題作。
いや、とにかくすごかった。当たり前だけどいろは歌の暗号、黒岩涙香ではなく竹本さんが考えたのですよね。すご過ぎです。
それでいて、ミステリーの方はお約束の嵐の山荘、そしてちゃんと適度な難易度で完結している。
最後の涙香と幸徳秋水の問題ですが、「『私は日露戦争を支持するよう涙香に刃物で脅されたが、屈せずに社を辞めてきた』と他の新聞で書け」、違うかな?
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