とくおかレディースクリニック~ブログ~

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7月のラボ便り

2024年07月03日 | Weblog
7月のラボ便り

皆様こんにちは。

ジメジメと蒸し暑い日が続いていますが、
体調に気をつけてお過ごしください。

今回のラボ便りでは、「人為的卵子活性化」についてお話させて頂きます。

「人為的卵子活性化」は、
顕微授精をしたにも関わらず、受精しない場合に行われる技術です。

体外受精や顕微授精を行なっても受精が起こらない場合、
受精障害の可能性があります。

受精障害が起こる原因として考えられることには、以下が挙げられます。

1.卵子の透明帯が固く、精子が卵子の透明帯を通過できない
2.採取した卵子が未熟で、卵子自体に受精する能力がない
3.精子の機能的な問題により、卵子の殻の部分である透明帯にくっつけなかったり、透明帯を通過できない
4.精子が透明帯を通過後、卵細胞膜に到達した際に精子が卵子を活性化する因子をうまく放出できず、卵子を活性化することが出来ない

原因は、卵子側、精子側、卵子と精子の両方にあることが考えられます。

顕微授精後に受精障害を引き起こす場合、
成熟した卵子細胞質の中に精子を注入するところまでは行えている為、
「4.精子が卵子を活性化できていない」可能性が考えられます。

正常な受精では、卵子の透明帯を精子が通過すると受精反応が生じ、
精子と卵子の細胞膜が融合すると、
精子内の卵子活性化因子(PLCζ)が卵細胞質内に放出されます。

卵子活性化因子は細胞内のカルシウムイオン貯蔵器官にある小胞体に働きかけカルシウムイオンを放出させます。
カルシウムイオンの上昇は波のように周期的に起こるため、
このような現象をカルシウムオシレーション(カルシウム変動)と呼びます。
このカルシウムイオンの上昇が引き金となって、
卵子の減数分裂が再開し、受精が成立します。

もし精子の卵子活性化因子が欠損している場合、
顕微授精により卵子内に精子が注入されても、
卵子内のカルシウムイオン濃度が上昇せず(卵子活性化が生じない)、
その結果受精が成立しないと考えられます。

顕微授精により受精しなかったあるいは受精率が極端に低い場合、
顕微授精後に人為的に卵子を活性化することができると、
受精率が改善がする可能性があります。
この方法を、「人為的卵子活性化」と言います。

「人為的卵子活性化」にはいくつか方法があり、
カルシウムイオノフォア処理法、
塩化ストロンチウム処理法、
電気刺激法などがあります。

当院では、カルシウムイオノフォア処理法を用いています。

方法としては、
顕微授精を行った卵子を高濃度のカルシウムイオンが含まれた薬剤の中に浸し、
人為的に卵細胞外のカルシウムイオンを卵細胞内へと拡散させ、
卵細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させることで、
卵子の活性化を促し、受精の手助けをします。

この人為的卵子活性化は、全ての方に有効というわけではありません。
ですが、卵子活性化障害が原因の低受精率の場合は、
人為的卵子活性化を行うと受精率の向上につながると考えられます。

何かご不明な点がございましたら、スタッフまでお声がけ下さい。




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