大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:113『我が食のトラウマ』

2020-10-26 06:08:42 | 小説5

かの世界この世界:113

『我が食のトラウマ』語り手:ブリュンヒルデ      

 

 

 大通りをヤコブの家に通じる道に曲がった時からいい匂いがしている。

 

 ちょうど昼に差しかかっていたので、レストランかなにかがあるんじゃないかと思った。

 オーディンの娘に生まれたが、贅沢に育ったわけではない。

 父のオーディンは元来放浪の神であるので、生活は質素だ。ヴァルハラは大きくて立派な城だが、七歳まで、父の事は城の管理人くらいにしか思っていなかった。むろん、平の管理人ではないが、せいぜい管理部長くらい。城にいる者たちも七歳まではブリュンヒルデとかヒルデとか、ひどいのになるとブリと呼び捨てだった。管理人の娘なら、そんなものだろうと疑うことも無かった。

 食事も城に仕える者たちといっしょ、当たり前のように大食堂で食べていた。大食堂はバイキング形式で、トレーを持って自分の好きなメニューを取る……というのは建前で、子どもが大人たちに交じって好きなものを取るのは至難の業。なんとなく子ども用、大人用、大人用でも戦士のテーブルとか女官たちのテーブルとか事務職のテーブルごとに集まる傾向があった。

 小さな子は大きな子が面倒を見てもらうので、知らず知らずのうちに大食堂での作法が身についていく。

 トール元帥の戦士たちが食べているのがとても美味しそうで、早く大人になって食べてみたいと、他の子どもたち同様にヨダレを垂らしていた。

 七歳になって王女の待遇になった。

 王女の待遇と言っても、呼ばれ方がブリュンヒルデから殿下に変わっただけと言っていい。改まった時に『ブリュンヒルデ殿下』とか『ブリュンヒルデ姫』とか、儀式の時は『天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花にしてヴァルキリアの陣頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫』と伝統的尊称で呼ばれる。学校に上がって侍女が付くようになって、その侍女が融通の利かない奴で、呼ぶたびに尊称で呼ぶ。そのうえドンクサくて、しょっちゅう間違う。間違ったら言いなおしだ。登校前の忙しい時に五回も六回も言い直されると遅刻してしまう。じっさい遅刻してしまうんだけど「侍女のやつが、何度も言い間違えるからあ!」とは言えない。ただ「すみませんでした」と謝って廊下に立たされる。

 この侍女が交代すると言うので「誰でもいいけど、天の下知ろしめすオーディンの娘にしてグラズヘイムの花にしてヴァルキリアの先頭に立つ我らが麗しのブリュンヒルデ姫とは呼ばない人にして!」とだけ注文を付けた。

 すると、次の侍女は「殿下」と簡単に呼んでくれる。

 いいっちゃいいんだけど、そのころ、よく便秘になって朝のトイレが長くなることが時々あった。すると、その侍女はトイレのドアを叩いて「殿下! 殿下! はやく!殿下!」と叫ぶ。むろん「遅刻しますよ!」いう意味なんだけど、わたし的には「早く出んか!」に聞こえる。

 まあ、そんな少女期が過ぎて、なんとか姫騎士と自他ともに認められるようになって、大食堂でもトール元帥の戦士たちの列に並んで好きなものが食べられるようになった。

 で……不味かった。

 憧れの騎士飯がこれかあああああ……というくらい不味かった。

 子どものころからの期待が大きすぎたせいかもしれない、わたしが早くにブァルハラを出ることになった原因の一つは、この大食堂の不味さにあることは確かだ。

 そういう食の原体験があるせいか、ヤコブの家から漂ってくる美味しそうな匂いは凄まじかった!

 グ~~~~~~~~~~~

 四号の乗員全員のお腹が鳴った。

 もし、大食堂のトラウマのように食べたらぜんぜん違った! ということになれば発狂するに違いないぞ~!

 

 この香りは、この匂いはほとんど犯罪的だあああああ!

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« せやさかい・175『大阪一... | トップ | ポナの季節・75『㊙コーヒ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説5」カテゴリの最新記事