在籍確認をすればいいと分かった。
1年以上活動実績が無い部員は、生徒会規定で正規の部員とは認められない。
活動実績とは、日々の部活への出席が基本なのだけれど、今時毎日の出席を確認しているような部活は、ごく一部に過ぎない。
で、運動部なら選手登録や試合。文化部ならコンクールや発表会へ名前を連ねていることが有効なのだが、それも出来ない場合は所定の用紙に、本人の署名捺印されていれば暫定的に在籍していることを確認できることになっている。
「あのー……」
と声を掛けただけで教室中の注目を浴びてしまった。
1年以上活動実績が無い部員は、生徒会規定で正規の部員とは認められない。
活動実績とは、日々の部活への出席が基本なのだけれど、今時毎日の出席を確認しているような部活は、ごく一部に過ぎない。
で、運動部なら選手登録や試合。文化部ならコンクールや発表会へ名前を連ねていることが有効なのだが、それも出来ない場合は所定の用紙に、本人の署名捺印されていれば暫定的に在籍していることを確認できることになっている。
「あのー……」
と声を掛けただけで教室中の注目を浴びてしまった。
下級生が3年生の教室にやって来たのだから目立つ。それも男子が女子の車いすを押しながらなのだから、何事かと思われる。
「えと……松井先輩はいらっしゃいますか?」
「松井君、下級生の面会やで~」
千歳の声に、いかにも学級委員という感じの女子が声を張り上げてくれた。
「え、おれに?」
運動部の部長らしい引き締まった体の男子が顔を向けた。
最初に声を掛けたのが千歳ということもあって、教室の注目は引き締まった松井と車いすの可愛い下級生に暖かく集中した。3年生にもなると、人のことを暖かい目で見るという反応ができるようだ。
「あ、いえ松井須磨さんのほうなんです」
「えと……松井先輩はいらっしゃいますか?」
「松井君、下級生の面会やで~」
千歳の声に、いかにも学級委員という感じの女子が声を張り上げてくれた。
「え、おれに?」
運動部の部長らしい引き締まった体の男子が顔を向けた。
最初に声を掛けたのが千歳ということもあって、教室の注目は引き締まった松井と車いすの可愛い下級生に暖かく集中した。3年生にもなると、人のことを暖かい目で見るという反応ができるようだ。
「あ、いえ松井須磨さんのほうなんです」
「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
砂を噛んだように教室の空気が気まずくなった。
「あ……その松井さんやったら、タコ……あの部屋、なんていうんやったっけ?」
学級委員風は、病原菌が入った瓶をを放り出すように背後のクラスメートたちに聞いた。
「……生徒指導分室」
「1階の突き当り。『分室』とだけ書いてあるから。ま、行ってみい」
別人の松井が車いすの傍まで来て、指差して教えてくれた。
「どうもありがとうござい……」
ピシャ!……お礼を言う前に教室のドアは閉められてしまった。
「……なんや、イワクありすぎいう感じやなあ、松井さんて」
車いすを押す啓介の声は緊張してきた。
「ドンマイドンマイ、やっぱ押してもらうと車いすも快調よねえ」
千歳はワクワクしてきているようだ。
生徒指導分室は1階と言っても、今まで踏み込んだことのない校舎の外れだった。
「……失礼しまーす」
3回目のノックにも反応が無かった。
「入ってみようか……」
「う、うん……」
分室のドアはロックされておらず、ノブを回すと簡単に開いた。
「失礼し……あれ?」
教室の1/4ほどの分室はゼミテーブルが4つ引っ付けられて島のようになっていて、その向こうに背を向けたソフアーがあったが人の気配がなかった。
「留守かなあ……」
「ね、あれ……」
千歳が指し示したソファーの背から、わずかに足の先が出ている。
車いすを寄せて回り込むと、ソファーに俯せで寝ている女生徒がいた。
「あ、あの、松井先輩ですか?」
「う、う~ん」
「あ……その松井さんやったら、タコ……あの部屋、なんていうんやったっけ?」
学級委員風は、病原菌が入った瓶をを放り出すように背後のクラスメートたちに聞いた。
「……生徒指導分室」
「1階の突き当り。『分室』とだけ書いてあるから。ま、行ってみい」
別人の松井が車いすの傍まで来て、指差して教えてくれた。
「どうもありがとうござい……」
ピシャ!……お礼を言う前に教室のドアは閉められてしまった。
「……なんや、イワクありすぎいう感じやなあ、松井さんて」
車いすを押す啓介の声は緊張してきた。
「ドンマイドンマイ、やっぱ押してもらうと車いすも快調よねえ」
千歳はワクワクしてきているようだ。
生徒指導分室は1階と言っても、今まで踏み込んだことのない校舎の外れだった。
「……失礼しまーす」
3回目のノックにも反応が無かった。
「入ってみようか……」
「う、うん……」
分室のドアはロックされておらず、ノブを回すと簡単に開いた。
「失礼し……あれ?」
教室の1/4ほどの分室はゼミテーブルが4つ引っ付けられて島のようになっていて、その向こうに背を向けたソフアーがあったが人の気配がなかった。
「留守かなあ……」
「ね、あれ……」
千歳が指し示したソファーの背から、わずかに足の先が出ている。
車いすを寄せて回り込むと、ソファーに俯せで寝ている女生徒がいた。
「あ、あの、松井先輩ですか?」
「う、う~ん」
寝返りを打った顔は整ってはいたが、目と口が半開きになってヨダレが糸を引いていたのだった。