RE.乃木坂学院高校演劇部物語
え……( ゜Д゜)!?
同じテーブルにいた隊員の人達がいっせいに西田さんに注目した。
「自分は、北海道の機甲科におりましてなぁ。ある時、アメさんと共同訓練になりました。その日は、対空射撃訓練……機甲科じゃ珍しいことなんですけどね。幹部の偉いさんのそのまた上で決まったらしい」
「高射特科じゃないんですよね?」
大空さんの質問は、タヨリナ三人組にはチンプンカンプン。
「六一式の車長をやっておりました。イントルーダーが吹き流しの標的を引っ張って飛んでくるんですがね……むろん最初は普通にやっとりました。車載機銃で吹き流しを撃つんでですわ」
「車載機銃で当たるものなんですか?」
「あのころは、自動追尾なんかありませんので、目視でやっとりました。みんな良い腕をしとりましたよ。八割方は当たりましたな。で、アメさんも本気になってきたんでしょうなあ。それまで水平に部隊の前を横断するように飛んでおったのですが。本式に真正面から実戦と同じ攻撃姿勢でやってきおりました。ほとんどの機銃が沈黙しました。だって、真正面からだと、曳航機のイントルーダーと吹き流しが重なって、危なくて撃てない。間違って曳航機に当たれば大ごとですからな」
「誤射したんですか?」
「そんなヘマはしませんよ。真っ直ぐわたしの六一に低空で向かってきおりました。距離一千で、微かに吹き流しが十一時時の方向に流れたのを見過ごさずに射撃しました。アメさんは、まさか撃ってくるとは思わんかったんでしょうなあ。ビックリして機首を右に降りましてな。直ぐに射撃を中止しましたが、右のエンジンをぶっとばしてしまいました」
「それじゃ、事故の原因は米軍の方じゃないんですか?」
「そのころは、ビデオもない時代ですからなぁ。部隊のみんなは証言してくれましたが。泣く子とアメさんには勝てません、ワハハハ」
昼からは、障害走路というのをやった、要は障害物競走。
飛び越え障害、ロープ登り、柵越え、鉄条網くぐりなんかが十一種類ある。
「かかれ!」
教官の号令で二人一組で始めんの、西田さんは峰岸先輩とペアであっという間にゴールに着いたみたい。遠くで「完了!」って声がした。
忠クンは、企業グル-プの先発の人といっしょ。丸太橋のところでモタツイテるんで、わたしとマリちゃん(マリ先生)が待ちきれずに出発。後に里沙と夏鈴、次に企業グループの残りが続いた。
ロ-プ登りで、忠クンのペアを抜かしちゃった……って、わたしの運動神経がいいわけじゃないのよ。ペアはお互い助け合っていいことになっていて、わたしたちのペアが、制限時間内で完了できたのでは、ひとえに「マリちゃん」のお陰ではありました。
企業グル-プが、忠クンたちといっしょにゴールしたのは。なんと一時間後。里沙と夏鈴はさらに、その五分後だった。
なんと、西田峰岸ペアの記録は、駐屯地記録歴代一位だった!
「自分と、もう一度やっていただけませんか?」
企業グル-プの教官が、顔はにこやかに、でも目は闘争心向き出しで言ってきた。
「バディー(ペアの自衛隊用語)ではなく、競技としてですな?」
西田さんは、闘争心をみなぎらせて……る。わりには目は笑ってた。
「用意……かかれ!」
先任教官の合図がかかったとき、西田のおじさんは、こう叫んだ。
「レンジャー!!」
この言葉に、あきらかに相手の教官は、ギクっとした。
勝負はあっけなかった。西田のおじさんが、十秒の差を付けてゴール。ついさっき、自分で作った新記録もあっさり塗り替えてしまった。
それから、自衛隊体操。人の動きを見て真似るのは得意だったのであっさりクリアー。忠クンと企業グル-プは少し時間がかかった。
そして……恐怖の5000メートル走。これはコタエました(^_^;)。
☆ 主な登場人物
- 仲 まどか 乃木坂学院高校一年生 演劇部
- 坂東はるか 真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
- 芹沢 潤香 乃木坂学院高校三年生 演劇部
- 芹沢 紀香 潤香の姉
- 貴崎 マリ 乃木坂学院高校 演劇部顧問
- 貴崎 サキ 貴崎マリの妹
- 大久保忠知 青山学園一年生 まどかの男友達
- 武藤 里沙 乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
- 南 夏鈴 乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
- 山崎先輩 乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
- 峰岸先輩 乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
- 高橋 誠司 城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
- 柚木先生 乃木坂学院高校 演劇部副顧問
- 乃木坂さん 談話室の幽霊
- まどかの家族 父 母(恭子) 兄 祖父 祖母