かの世界この世界:171
ひょっとしたら分岐?
ハチャメチャな異世界を巡ってきたけど、あとから思うと分岐のようなところがいくつもあった。
その時は分岐だなんて思っていなかったから、流れるままに身を任せたけども……。
いま形を現わそうとしている仲間は、はっきりイメージを思いうかべないと、とんでもない事態になりかねない。冴子との関係がこじれたのも、肝心の時にきちんとした選択ができていなかったからという気がしてくる。
ええと……ええと……
ケイト……ブリュンヒルデ……タングリス……タングニョースト……ロキ……ポチ……とストロボのように巡っていく。
あ……あ……
迷っているうちに、その巡りそのものが薄くなってき始めた。このままでは消えてしまう。
シュボン!
唐突にエフェクトが入ったかと思うと、それはブリュンヒルデの姿に固着した。
「もう、自分で出てきたぞ!」
まずはブリュンヒルデとの再出発になった。
「懐かしい、もう会えないかと思ったわ(#*0*#)」
「そのわりには迷っていたようだな」
「ごめん、ちょっと気弱になっているのかもしれない」
「まあいい、わたしの旅も中断してしまったからな」
「他の仲間は?」
「バラバラだ、この先再び現れるのか、テルと二人旅になるのかも判然としない」
「し、しかし……足元が定まらないわね……」
ヒルデの姿こそ定まったけれど、周囲は穏やかになったとはいえ、相変わらず鈍色の渦で、慣れないスカイダイビングをしているような感じ。
「キャ」
「す、すまん、不可抗力だ(n*´ω`*n)」
わずかに流れが変わったかと思うと、急にヒルデの顔がわたしの胸に密着した。
互いに押して離れたかと思ったら、クルンと回って、今度はお尻同士で密着、ドンケツして離れたら、またまた回転して、今度はあやうく女子同士でキスしてしまいそうになる。
「アハハ」
「しかし、どうして、こんなに不安定なんだろ(^_^;)」
「ここは、ムヘンでもヴァルキリアの世界でもないからな……ちょっと待て」
なにやらゴソゴソしたかと思うと、ヒルデはアーマーの胸板からスマホを取り出した。
「スマホ……あ、わたしも持ってる」
胴着のポケットをまさぐると、わたしもスマホを持っていた。
そしてGPSを使うと表記が出てきた。
「The Japanese mythology?」
「えと……日本神話?」
「どうやら、テルの国の異世界のようだな」
北欧神話にも暗いわたしだけど、日本神話も似たり寄ったり、アニメやラノベで知っているだけで、全体の流れと言うと、小学一年のそれと変わらない。
「あ、なにか現れるぞ!」
斜め上から気配が降りてくる。
互いに、それに気づくと、シャリンと音をさせて剣を鞘走らせた。
最初からボス戦……それは勘弁してほしい……
口に出さずに身構えていると、気配は20世紀フォックスのロゴのような形を現した。
『天地(あめつち)のはじめ』
それは、巨大なタイトルとなって、二人の前に立ちふさがった……。
☆ 主な登場人物
―― この世界 ――
- 寺井光子 二年生 この長い物語の主人公
- 二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
- 中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
- 志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
―― かの世界 ――
- テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
- ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
- ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
- タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
- タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
- ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
- ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
- ペギー 荒れ地の万屋