やくもあやかし物語・23
永遠の十七歳、アキバのメイドだよ……わたし。
そいつはニッコリ笑って、人差し指で自分を指しながら言った。
付喪神(つくもがみ)どころか、とんでもない妖怪!?
一目散に逃げた(;゚Д゚)。
アキバのメイドなんてあり得ない。だってアキバに行ったことなんてないんだもん、アキバ関連のグッズだって持ってない。行ったこともグッズも持っていなくて、その付喪神が出るなんてあり得ない。きっと、ほかのアヤカシが図書室に現れたりペコリお化けの定位置を乗っ取って出てきたんだ。ああいうアヤカシは悪さをするんだ。
体力ないから家までは走れない。
途中の袋小路にお地蔵さんの祠があったことを思い出した。越してきて間が無いので、わざわざ袋小路に入って手を合わせたことは無いけど、そこしかないと思った。
ほんとうは、祠の前できちんと手を合わせなきゃならないんだろうけど、そんなことをしていたら追いかけてくるあいつに見つかってしまう。
わたしは祠の陰に隠れた、土台に背中を預け、しゃがんで手を合わせた。
お地蔵さんの功力だろうか、あいつが追いかけてくるような気配は無かった。
五分……十分たっただろうか、祠の陰から、そっと顔を出す。あいつが追ってくる気配はしなかった。
安心すると、目のピントが手元の祠にあう……小さな賽銭箱の横に『お守り石』と墨で書かれた箱がある。
なんだろう?
腰を上げて小さくひっくり返ってしまった。
ダッシュしたせいか増えた体重のせいか、ぶざまに後ろに手を突く。
ヨッコラショ、
小箱の上に短冊大の張り紙。
――身を護って下さったり、願い事を叶えてくださいます。願い事が叶ったらお返しください――
箱の中には親指の先ほどの大きさの真っ白い石が数十個入っている。祠のくたびれ方とは対照に、とても清げ、いかにも霊験あらたかな気がする。
こういうのって、ただで持ってちゃうといけないよね。
しかし、中坊の悲しさ、お財布には三十円しか入っていない。いくら気は心とは言え三十円はね……せめて百円はしなくっちゃ。
閃いた!
お財布の中にはスイカとテレホンカードが入っている。
スイカは越してくる前に時々使っていた。テレホンカードは万一の時に使いなさいと離婚する前のお父さんがくれたものだ。
どちらも、いまは使わない。
ちょっと迷ってスイカを置いて手を合わせる。
――明日にでもお賽銭持ってきますから、スイカでお願いします――
『お守り石』を一つ、一番大きい奴……は置いといて、二番目に大きいのをハンカチに包んで、心を込めて手を合わせた。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている
霊田先生 図書部長の先生