大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:74『タングリスと以心伝心の目配せ』

2020-09-17 06:23:09 | 小説5

かの世界この世界:74     

 『タングリスと以心伝心の目配せ』   

 

 

 乾杯の後は宴になった。

 いつの間にか広場のあちこちにテーブルが出され、そのテーブルを中心に人々が思い思いに集まってビールを飲んだり、ふんだんに用意された料理に手を伸ばして盛り上がっている。二十人ほどの楽隊は、三つほどに散らばってポルカのような軽快な音楽を奏で、町の人たちが二人一組で手を取り合ってステップを踏んでいる。

 誰が指揮をしているわけでもないのに、ステップの輪は広場の噴水ステージを二重に取り巻く大きな輪になって、文字通りのフェスティバルになった。

「俺たちも入っていいかなあ」

 ロキが目を輝かせながらも、しおらしくタングリスに聞く。

「ああ、いいとも。ここから見ていてやる」

「よし、行くぞ!」

「こら、引っ張んなあ!」

 ロキはケイトの手を取って踊りの輪の中に入っていく。

――見物だけとはつまらない――

「うわーー」

 声がしたかと思うと、タングリスもブリュンヒルデも町長や町の若者に手を引かれていってしまった。

 臆したわけではないが、わたしは山車の陰に回ると、クルクルと踊っている人やビールの泡を飛ばしている酔っぱらいたちをかいくぐって、迎賓館のポーチに移った。宴もたけなわなのだろうが、一人ぐらいは冷めた目で控えていないといざという時に対応できないと思ったからだ。

 タングリスも分かっているようで、踊りの輪の中で揉みくちゃになりながらも――あとで代わる――と以心伝心の目配せ。

「いやあ、クリーチャー相手の戦闘の方が楽かもしれんなあ」

 二十分もすると、ジョッキを二つ持ってタングリスがやってきた。

「みんなタフだ。気は抜けないが、ま、一杯ひっかけてからでもいいだろう」

「そうだな、我々も、ようやくチームになりかけてきたな」

 縁の下の力持ち同士、小さく乾杯。特に言葉を交わすこともないが、これからの旅への覚悟と労いを交わすことができた。

「さ、交代だ」

 ポーチの陰から立ち上がると、相変わらず盛り上がっている踊りの輪。だが、さすがに疲れたのか充電しているのか、柱にもたれかかったり、テーブルに突っ伏している者がチラホラ。

「大丈夫かい?」

 そんな一人の肩に手を置いて……驚いた。

 石化している!?

――メドューサが入り込んでいる!――

――声を立てるな、パニックになる――

 タングリスが二度目の目配せをした。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 


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