東京ゲルを襲ったシンラは100人に満たなかった。
一年をかけて一人、多くても三人でゲルに合法的に侵入、市民として浸透を重ね、完全にセキュリティーにかからないようにし、ゲルが防災訓練になる日を待ってセンターを襲った。
一年をかけて一人、多くても三人でゲルに合法的に侵入、市民として浸透を重ね、完全にセキュリティーにかからないようにし、ゲルが防災訓練になる日を待ってセンターを襲った。
防災訓練とは、シンラが強襲してきたときのための訓練であるが、一般市民に不安を感じさせないように防災訓練と称している。
実態は、軍事的な防衛訓練で、指揮系統はゲルのCICと言っていい地下指揮所に集中する。ここには司令部要員が集められ、戦闘員たちはゲルの外周付近に集中している。
外からの攻撃に晒されているという前提で実戦さながらに行われ、ゲルの市民たちはゲルに数か所あるシェルターに集められる。
強制ではないために、シェルターでは訓練終了後にアトラクションや、イベントが行われるのが通例で、ヒナタのいる第一シェルターにはAKPのチームPのメンバーも訓練の招き猫兼イベント要員として集められていた。
そして襲撃指揮官がなんとAKPメンバーのユーリであったのだ。
武器は、イベントの道具に紛れたり、一般市民に化けた者が個別に避難用品に偽装して持ち込んでいた。
そして襲撃指揮官がなんとAKPメンバーのユーリであったのだ。
武器は、イベントの道具に紛れたり、一般市民に化けた者が個別に避難用品に偽装して持ち込んでいた。
シェルターにも防衛要員が配置はされているが、数も少なく、人にしろアンドロイドにしろ一線級の者はおらず、実質上無防備であったと言っていい。
ヒナタは、シェルターの第五層の中にいたが、その存在は秘密になっていた……はずであった。
ユーリを指揮官とする襲撃部隊は防災訓練の終了と共に動きだした。
訓練終了の弛緩した空気と、イベント開始の最終準備に入ったところで始まった。誰も最初は襲撃だとは思わなかった。パルス弾が飛び交い倒れる者が出始めても、最初は演出の一環かと思われたくらいだ。
ユーリを指揮官とする襲撃部隊は防災訓練の終了と共に動きだした。
訓練終了の弛緩した空気と、イベント開始の最終準備に入ったところで始まった。誰も最初は襲撃だとは思わなかった。パルス弾が飛び交い倒れる者が出始めても、最初は演出の一環かと思われたくらいだ。
ユーリたちは、一般市民を無差別に撃って混乱させたあと、アンドロイドの防衛要員から片付けた。シリアルをコピーするためである。最前線の兵士ではないので、シリアルをコピーされると容易には敵味方の区別がつかなく、たった10分でシェルターの防衛要員は壊滅した。
ヒナタは、それ以上は思い出したくなかった。
襲撃部隊は、その後駆けつけた一線級の兵士たちに大半は破壊されたが、ユーリを含む数体はゲルを抜け出し、日本そのものから脱出した模様である。
ヒナタは、それ以上は思い出したくなかった。
襲撃部隊は、その後駆けつけた一線級の兵士たちに大半は破壊されたが、ユーリを含む数体はゲルを抜け出し、日本そのものから脱出した模様である。
被害は第一シェルターに集中していたので、東京ゲルそのものは、ほとんど無傷であった。
ヒナタは幹部たちの反対を押し切って、次の週末には東京ゲルに戻って来た。
ヒナタは幹部たちの反対を押し切って、次の週末には東京ゲルに戻って来た。
スグルのメモリーを集めるためだ。
ピンポーン♪
結城三郎という表札のインタホンを押した。
『どなた様ですか?』
結城三郎という表札のインタホンを押した。
『どなた様ですか?』
かわいい女の子の声がした。
サブはガラにもなく照れていた。
「まさか、ヒナタ本人が来るとは思ってもみなかったんでな。みっともないとこ見せてすまん」
サブ(結城三郎)はごま塩の頭を掻いた。
「わたしのシリアルは、東北ゲルのCPに取り込ませてあります。分からなくても当然。気にしないでください」
「昔のオレなら、それぐらい見破れた。第一線を離れて十年、錆びついたもんだな。で、なんでオレみたいなロートルのところにやってきたんだ」
「スグルと究極受信をやりました」
「え、究極受信……それじゃ、スグルは……」
「え、究極受信……それじゃ、スグルは……」
「はい、人格消滅しています。わたしもボディーを失ったんで、今のボディーは予備の新品です」
「第一シェルターにゲリラが混じってイザコザがあったってことしか報道されてないけど、そんなに深刻だったのか……胸を見せてくれないか」
ヒナタは、カットソーをめくって胸を見せた。
「新品なんで、あの傷はありません……あの子はミナちゃんですね」
お茶を運んできた女の子が部屋を出てから訊ねた。
「すまねえ。ヒナタが来るんだったら……」
「いいえ、いいんです。ミナちゃんはわたしの身代わりで死んだんですから、サブさんにはたった一人の娘さんだったのに」
「ハハ、それが、今は二人なんだ」
「え……?」
「おい、二人とも入ってこい」
少し間をおいて、ヒナタと同年配の少女と、先ほどの女の子が入ってきた。
「……両方ミナちゃんですね。こちらがわたしの犠牲になったころの……そして、こちらが、そのまま歳を重ねたミナちゃん」
少し間をおいて、ヒナタと同年配の少女と、先ほどの女の子が入ってきた。
「……両方ミナちゃんですね。こちらがわたしの犠牲になったころの……そして、こちらが、そのまま歳を重ねたミナちゃん」
二人のアンドロイドがニコリとして頭を下げた。
「いい歳をして、お人形遊びみたいで面目ねえ……」
サブの目から涙が零れ落ち、それは自由の利かない膝の上でシミになっていった。
サブを最初に訪ねてヒナタは正解だと思った。