せやさかい 番外
002『相野先輩と海老のシッポ』さくら
002『相野先輩と海老のシッポ』さくら
秋アニメのアフレコの後、ラジオの生放送まで時間があったんで放送局の社食で早めの晩ご飯(遅めの昼ご飯とも言える(^_^;))をいただく。
ちかごろは、テレビもラジオも斜陽産業やけども、放送局の食堂はけっこう繁盛してる。ぜんぶで100人は入れるというフロアーは八分の入り。
教室が八分の入りやったら「今日は欠席が多いなあ」やけども、食堂は四人掛けに二人とか三人とかで座って、入り口には順番待ちの人らも並んでて、満席の印象。
「やっぱ……不景気なんだねえ」
ご一緒してくれてはる相野千春さんが声を潜めて言う。相野さんは去年の春アニメ『やくも あやかし物語』でブレイクしたベテラン声優さん。なんでか気が合って、仕事の合間なんかにご飯とかごいっしょしてくれはる。
「そうですかぁ、けっこう入ってるように思いますけど」
「景気がよかったら外に食べに行ってるわよ……って、わたしたちも社食だけどね」
「う~ん、東京の人てぇ……雰囲気大事にしはりますよね」
「うん、見栄っ張り。ここの社食だってけっこう美味しいのにねえ」
そう言いながらエビフライのシッポを口に放り込む相野さん。口の中でポリポリっと小気味のええ音がする。ウチも海老のシッポをポリポリ。
相野さんと仲良くなったのは、声優仲間でご飯食べに行って、二人とも海老のシッポを食べるのが分かった時やしねえ。
「やっぱり、開会式の噂してる人が多いねえ……」
「あ、ああ……」
ちょっと恥ずかしい……開会式をライブで観てて、ウチは感心ばっかりしてた。オリンピック旗が逆さに掲揚されたのはさすがに笑ったけど、ウチ的には「ポカやりよった!」と笑っておしまい。
合間のパフォーマンスもお祖父ちゃんが言うてたアバンギャルドとかいう前衛芸術やと思て感心してた。
真ん中にデブのネエチャンが居って、その両側に変なコスとメイクの人らが並んでフニャフニャしてるのは、わけも分からんとアバンギャルドォ!と感心してた。
せやけど、あれはキリスト教の『最後の晩餐』をパロったものやと聞いてびっくりした。
うちの家業的に言うと『阿弥陀来迎図』を茶化すようなもんで「そらアカンやろ!」という性格のもんや。
「国の名前を間違ってアナウンスしちゃうし、ほら、あのセーヌ川を馬に乗ってぇ……」
「ああ、ジャンヌダルクかFateのセイバーかっちゅう」
「あれは、オリンピックの旗を持ってなきゃ黒死病を運んでくる悪魔の姿」
「え、そうなんですか!?」
「うん、モノクロ的な演出だったし、フードで頭を隠してたでしょ。あれで大きな鎌とか持ってたら、そのものなんじゃないかなあ、ゴヤの黒い絵とか思い出す」
「は、はあ(^_^;)」
「トドメはマリーアントワネットの生首ね」
「え?」
「え、観てたんでしょ? 」
「アハハハハ(^_^;)」
「あそこさコンシエルジュリー って云って、リアルにマリー・アントワネットが幽閉されてた館だしね、ちょっとシャレにならないよ」
ああ、たしかに見たけど、あそこは留美ちゃんといっしょにおばちゃんのパンの仕込手伝いながらやったから、なんやヘビメタがすごいなあて思ってた。坊主三人は喜んでたしぃ……。
「こんどのハローウィンじゃ真似するのが出てくるだろうねえ」
あの晩、夢にマリーアントワネットが現われてダミアを連れて行った。
そもそも、五年前子猫のダミアを拾った時にパリオリンピックの年に迎えに来ると夢の中で言うてたし……マリーアントワネットには分かってたんかも。
「せやけど、相野さん、よう知ってはりますねえ」
「アハハ、さくらがオムツしてたころから声優やってるからね」
やっぱりこの業界を生き抜いてる人はちゃうと感心した。
仕事を終えて家に帰ると、阿弥陀さんの前に新しい小さな骨壺。
ウチのすぐ後に帰ってきた留美ちゃんといっしょに静かに手を合わせた。
☆・・主な登場人物・・☆
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)
酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行)
声優の人たち 花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎
さくらの周辺の人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官) 相野千春(声優の先輩)