『変なものが写ってます!』
それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。
監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。
それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。
監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。
すると、ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!
――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――
「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」
驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていたんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なし、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。
で、まだ、サプライズがある。
「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのだ。
「周り中偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」
というわけで、その場でカメラテスト。
驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていたんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なし、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。
で、まだ、サプライズがある。
「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのだ。
「周り中偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」
というわけで、その場でカメラテスト。
笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたBKB47の音源で盛り上がったり。上野百合さんが――あんたたち、やりすぎ!――って顔してたので、BKB47は一曲の一番だけで終わりました。
「監督、変なものが写ってます!」
編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
と、監督。
わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。
「監督、変なものが写ってます!」
編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
と、監督。
わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。