韓国の中央日報10月15日日本語版は、イ・チャンウィ/ソウル市立大法学専門大学院教授の「菅時代の韓日葛藤を国際法と常識で解決を」を題した論文を掲載した。結論は、“韓国は国際法を遵守すべきだ”であり、正論である。この論文は慰安婦合意についても触れているが、ここでは徴用工問題に関わる部分を主に引用する(赤字)。
・・・金大中・朴槿恵大統領を除けば、ほとんどの歴代大統領は韓日関係を政略的に利用したという批判を受けている。ところで、文在寅政府と与党は再び反日フレームで外交の根幹を揺るがしていて憂慮される。最悪の韓日関係をこのまま放置し続ければ、結局われわれが外交的失敗を自ら招くことにもなりかねない。(中略)
外交は相手がいるものだが、完全な勝利は不可能な領域だ。政権が変わるたびに日本に謝罪を要求するのは国際社会の常識ではない。国家間紛争は国際法によって実現可能な合意を引き出せばよい。独島と徴用、慰安婦問題は『竹槍歌』で国民を扇動したからといって解決できるようなものではない。政治家は不十分な合意でも国民を説得する勇気がなければならない。(中略)
日本の通商報復に拡大した徴用問題は、結局、1965年韓日請求権協定の解釈がカギだ。
(中略)
三権分立のために政府が司法府の決定に関与できないという論理も国際的に通じない。国内法を理由に国際法上の義務違反を正当化することができないのは、現代国際法の確固たる原則だ。
多くの先進国は司法自制の原則を尊重する。日本はそのような脈絡で韓国の国際法違反を非難する。そのような指摘を受けて司法府の独立を言及するのは苦しい弁明になる。世界10位圏経済大国に釣り合わないものだ。(中略)
国益のために、そろそろ時代錯誤的な反日フレームは捨てよう。韓国外交の正当性は国際社会の法と常識を無視しては、確保されない。
イ教授の意見のキモは、“徴用問題は、1965年の日韓請求権協定の解釈が鍵だ”である。<国内法ではなく国際法を適用すべきだ>という考え方は評価するが、“解釈”とはどういう意味なのか判然としない。
解釈に関する部分はともかく、<時代錯誤的な反日フレームは捨てよう。韓国外交の正当性は国際社会の法と常識を無視しては、確保されない>は正論だと評価する。
一方、中央日報は徴用工問題に関する世論調査の結果を次にように報じている(赤字)。
「韓国最高裁の判決に従い、(日本企業に対して)強制執行(=資産現金化)を行うべき」に対する回答は、今年は36.6%で昨年の58.2%から大きく減少した。
反面、「法的責任は日本企業が果たすが、実際の金銭的支援は韓国政府や民間が代わりに務めるような政治的決断が必要である」(18.2%)、「第三国の委員を交えた仲裁委員会を設置するか、国際司法裁判所(ICJ)に訴える」(13.2%)は回答が増えた。大法院判決以外の解決法を講じるべきだという意見が全体の6割を超えた。
この世論調査における設問は、中央日報が徴用工問題の解決案として、回答者に選択肢として示したものだろう。日本側がこれらの解決案を受け入れられるかどうかは別として、設問の意味を考えてみたい。
まず、最初の「法的責任は日本、金銭的負担は韓国」という案:
韓国側から見て、「法的責任は日本製鉄にある」ことはすでに大法院の判決によって示されており、今更繰り返す必要はないはずだ。一方、「金銭的負担は韓国」という部分は韓国の譲歩であり、実現は難しいだろう。それでも、この案を選択した人が18.2%もいたとことは、高く評価したい。
次に、第三国による仲裁委員会とか国際司法裁判所に訴える案:
原告が日本製鉄の資産を差し押さえる前の段階なら、この方式の意義はあったと思う。しかし、実際には差し押さえが終わっているから、韓国はどういう主張をすることになるのか。“現金化したいが、日本が報復するのは困るので、なんとかしてくれませんか”だろうか(笑)。
いずれにせよ、この世論調査の設問の内容から考えて、中央日報は“韓国の司法が原告の勝訴という判決を下したことはまずかった”と認識し、なんらかの解決案を模索していることは明らかである。
イ教授の論文にせよ、中央日報の世論調査に示された解決案にせよ、徴用工問題を<司法が決めたことが優先される>という論理で押し切ろうとしている文在寅大統領の戦略に疑問を呈しているわけで、これまでとは違った流れが生まれたと認識していいだろう。