ドイツのベルリン市ミッテ区の公道に設置されていた慰安婦像に関し、茂木敏充外相がドイツ政府に撤去するよう要請し、区長が韓国系市民団体に撤去命令を出した(このブログ10月13日)。しかし、韓国系市民団体が巻き返して、裁判所に判断を委ねることになったのは各位すでにご存知のことと推察する。
爺の予想では、ドイツの裁判所は結論を先送りして、結論を出さないだろう。つまり、慰安婦像は撤去されないままになる。
この件で昨日(10月22日)、読売新聞は「反日の拡散は放置できない」というタイトルの社説を掲げた。その一部を引用するが(赤字)、爺が興味を持った部分は下線を施した箇所である。
市民団体は、少女像の目的について、「戦時下の女性に対する性暴力への反対」を表現するためだと説明している。・・・だが、今回の少女像は反日的な政治宣伝の要素が強く、公共の場での設置には問題がある。碑文は、・・・「日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を拉致し、性奴隷の境遇を強いた」とも書いている。・・・慰安婦問題について、日本が努力を重ね、外交的には日韓合意で決着していることを、相手国には丁寧に説明する必要がある。
各地にある慰安婦像は皆、「日本軍が女性を拉致して性奴隷にした」と書いてあるのだろう。事実に反することだが、河野談話は女性の強制連行を認めているのだから、反論しても迫力に欠ける。まったく腹が立つ話だ。
これについては、爺が何回か言ったように、朝日新聞は拉致の誤報に対する謝罪広告を韓国の新聞に掲載するよう申し入れ、拒否されたら、そのむねを外国人記者に発表すべきである。
話を元に戻す。この問題は外交的には2015年の合意で決着しているわけで、韓国人がこれを蒸し返すのには、爺としては憤懣やるかたなく、頭から湯気が出る思いだ。この読売の社説も慰安婦問題に触れているが、要するに“打つ手がない”という印象である。
ところが、決着したはずの慰安婦合意に水を差すメディアがある。朝日新聞だ。同紙の9月18日の社説を部分的に引用する。(赤字)
・・・過去の傷を少しでもやわらげることが、被害者中心の考えではないか。関係者の高齢も考えれば、すでに築かれた日韓合意の枠組みを活かした救済を急ぐのが、妥当な道であろう。
そのためには、日本側も協力に動かねばならない。安倍政権は、合意を境に問題がなくなったかのような姿勢だったが、その冷淡な言動が韓国の反対運動を勢いづかせてきた。・・・
菅義偉政権はこじれた関係のリセットに向け、新たな対話を始めてはどうか。両国はいま徴用工問題に直面している。慰安婦合意の趣旨を双方が再確認することは、複合的な危機を回避するためにも必要だろう。
朝日新聞は、「安倍政権は合意を境に問題がなくなったかのような姿勢だった」と批判するが、的外れも甚だしい。安倍政権は“これでおしまい”にするために、国内での批判を知りつつ、あえて譲歩したと思う。そして、合意に達すれば、問題は解決したと考えるのが常識である。
ところが、朝日は“菅政権は新たな対話を始めてはどうか”と提案している。日本政府が自ら問題を蒸し返すなど、とんでもない話だ。韓国に関する限り、譲歩は解決にならないことを、これまで十分学習したではないか。
そして朝日は「その冷淡な言動」と批判するが、かりに安倍首相が慰安婦たちに両手をついて謝罪しても、「涙をみせなかったのは、心がこもっていなかったからだ」と批判するだろう。首相が涙を流しても、「天皇が謝罪すべきだ」と言うだろう。
韓国(実際には文大統領と支持団体のリーダーだった尹美香)は慰安婦合意を反古にしたいために、“日本の謝罪は心がこもっていなかった”とか、“被害者の立場で解決すべきだった”などの口実を並べているにすぎない。尹美香は慰安婦問題が決着するとカネ蔓を失うことになるので、決着せぬよう妨害したのである。慰安婦たちが補償金を受け取らぬよう説得したのは、その一環である。
なぜ、朝日はここまで韓国の肩を持たなくてはならないのか、理解に苦しむ。この社説はまるで韓国の言い分そのものであり、韓国人をさぞ勢いづかせたことだろう。日本の国益を損なう主張である。
徴用工問題も、かりに合意に達したとしても、時が経てばまた蒸し返さるに違いない。要するに、韓国は日本を貶め続けたいのである。だから、ゴールポストは永遠に動くと考えておかねばならない。