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日本学術会議:6人が任命されなかった理由

2020-10-28 17:38:37 | メモ帳
日本学術会議(以下「会議」)の会員候補105名から6名が任命されず、その理由も説明されないことが論議を呼んでいる。

一般公務員なら、その人事権は内閣や都道府県知事にあるから、任命しない理由を示す必要はない。しかし、「会議」の場合はこれまで候補者を任命しなかった例は皆無であり、慣習を破る以上、常識的には内閣は任命しかった理由を説明すべきである、と爺は認識していた。

ところが、10月28日の産経新聞に「内閣には会員任命の拒否権あり」と題した百地章日本大学名誉教授の論考が掲載された。その論旨は長くなるので省略するが、百地氏は「内閣が学術会議に任命拒否の理由をいちいち示す必要はない」と明言し,ている。

さらに、今回「会議」はポスト数だけの名簿を内閣に提出したが、これまではポスト数より多めの人数の名簿を事前に提出し説明してきたから、「会議」側は内閣に裁量の余地を認めていたことになる。

一方、任命しなかったことが契機となって、これまで「会議」が職務(勧告・答申)を遂行していなかったこと、「会議」が中国科学技術協会と提携していたこと、会員推薦の根拠が不透明であることなどの問題点が噴出した。

歴史的に見ても、「会議」が設立された戦後間もなくの頃は、共産党勢力が強い発言力を持ち「会議」を牛耳っていたが、長い年月を経て世界の状勢は大きく変化したにもかかわらず、今なお「会議」には共産党と親密な会員が多いという事情も、白日のもとに晒された。

一方、内閣が提出された候補者の内の6名を任命せず、しかもその理由も説明しないという異例の措置を強行するからには、各方面から不協和音が出てくることは十分予想されていたはずだ。ではなぜ内閣はこのような一見“失策”とも思える措置を強行したのか。

内閣は安倍政権時代から、「会議」の言動を苦々しく思い、どこからメスを入れるか模索してきたが、提出された名簿からあえて何人かを任命せず、その理由も説明しないという荒業で突破口を開くことを決意したのではないだろうか。言い換えると、批判の嵐を十分予想した上で、“肉を斬らせて骨を切る”戦法を選択したと思われる。「会議」が廃止されるか改革にとどまるかは予断を許さないが、現状のままで済むことはないだろう。

この程度の事案が内閣総辞職の理由になるとは思えないが、いずれにせよ1年以内に選挙がある。マスコミや野党から批判されても、総辞職という覚悟があれば怖いものはない。菅首相はそこまで腹を括っているのではないだろうか。