連休中に碧南市藤井達吉現代美術館さんに伺い
生誕130年 佐藤玄々(朝山)展を拝見しました。
朝山は明治21年福島県の相馬市に生まれ、昭和38年まで、日本近代彫刻に大きな足跡を残した芸術家です。
とはいえ私も山崎朝雲のお弟子さんという認識くらいしか持たず、「狛犬」にご興味があるとおっしゃられたお客様に
この展覧会をお教え頂き、また以前からお世話になっています学芸の先生が関われるお仕事と知り、早速出かけた次第です。
近代彫刻といえばやはり、高村光雲、光太郎、平櫛田中、小張孤雁、そして碌山などを思い出しますが、
この朝山は大正時代にフランスに留学してブールデルの指導を受け、西洋彫刻を学んだということですので、それ以前の彫刻家が扱うような歴史的、宗教的題材、例えば大黒様の彫刻一つをとっても、全てに「魂」というには大袈裟かもしれませんが、作家の意思、芸術的創作意欲というものをつぎ込んでいるという印象を受けました。
職人から個人へ、そして仏像や置物から、芸術作品へ、まさに近代化に尽力した彫刻家という印象を受けます。
作品達の重量感は、木彫作品とは思えないほどのもので、今迄ブロンズ作品にしか感じた事のない感覚を覚えました。
上のパンプレット 2の「冬眠」蝦蟇の姿はまさに内にエネルギーを込めて作られています。
またその仕上げ、肌合いも材料の見極め、それによる刃物の当て方によりそれぞれに微妙な風合いを出しています。
3の白菜はよく木彫家がその技を競うかのように表現する題材ですが、そのスタンスは違い、白菜の大きさ、重さ、外葉の乾き具合などが木彫作品として表現され好ましく感じれました。
木彫作品の彩色については、大工で晩年椿ばかりを彫っていました父の苦労を目の当たりにしていましたので、大変興味深く拝見しました。
そして5の麝香猫(じゃこうねこ )には圧倒されました。
岩絵具を使っているとどうしても材料である木にに馴染んでいかないというような記述を読みましたが(曖昧な記憶で恐縮です)水彩絵の具などにいろいろな物を混ぜて試行錯誤し、この大変美しい光、色彩を生んだのだろうと想像します。
玄々は師匠の朝山に破門にされたために名付けた名前と聞いていますが、その玄々の代表作、日本橋三越本店に設置されている「天女 (まごころ)像」が実際には見られず、3D映像のお部屋が設けられていましたが、やはりこの天女像が見たい!という気持ちが一層強くなってしまいました。
まごごろの像除幕式
その点でも少し地味であるのか?と思える展覧会でしたが、佐藤朝山が一生にした仕事の量に比べ、アトリエ消失などからこうした展覧会では多くの作品を鑑賞できないという事実に際しながら、この展覧会を開こうとされる美術館さんの「意志」に心をうたれましたし、何と言っても家に戻ってからの印象。。玄々作品のインパクトの強さに今頃驚いています。
この展覧会は既に福島美術館さんの会期を終え、碧南で2月24日まで、そして3月にはいよいよ三越本店さんで開催される予定だそうですので(6日から12日まで)関東圏にお住いのお客様はこちらにお出かけくださればよりお楽しみいただけるかと存じます。
求龍堂さんから図録が出ています。よろしかったらこちらもご参照ください。
佐藤朝山作品図録