つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

良寛さん その人と書

2020年01月16日 | おススメの展覧会、美術館訪問
佐橋は常々、良寛の書は芸術ではないでしょ。と言っていました。

そして、つい最近、私の尊敬するお客様からもそのような意味の言葉をお伝えいただきました。

良寛は作品としての書をあまり書いていないということもその理由であると思います。

物乞いの手紙。お礼のお便り。良寛の文字を見るのは、そうしたものが殆どを占めているからです。

勿論良寛は王羲之から始まる各書家の書を熱心に臨書、研究しています。

その上で、良寛は、書の歴史を逸脱するような、世界に類を見ない書を書き、その書は現代にも通用する
大きな魅力をもち続けています。


徳川美術館さんへは軽い気持ちで午後3時ごろ入らせていただきました。

けれど、2人が作品を見終わったのは、閉館ギリギリ午後5時でした。

出口での2人の感想は、同時に「疲れたぁ〜」「何だか知らないけれど見てしまう。もっと読みたくなる。
離れられなくなる。よかったねぇ。もう一回来よう」でした。

私はすかさず佐橋に「で、良寛は芸術でない?」と聞くと
「何?それ?」


「へ?」
「あなた良寛は芸術でないと以前言ったでしょ、わたしに」

「そうだった??
 あのね、、書は芸術ではないかもしれないね。」

「ほんと?
 わたしもそう思った。だけど、良寛はやっぱりわたし好きだわ」


 感想になっていないかもしれませんが、今回の良寛の展覧会は特に素晴らしかったと思えました。







左は良寛の父、以南が芭蕉を描き、自身で讃を書いたもの。
右は、以南の描いた芭蕉像に息子である良寛が讃を書いたものです。

以南の文字が良寛の文字に似ていてとても驚きました。

父以南も、息子良寛も共に松尾芭蕉を追慕していました。
良寛はずっとずっとお父様、お母様の事を思っていたのだと思えます。

そして、良寛の文字を見ながら、現代の書家石川九楊さんが良寛の文字について解説を書かれているものを
読ませていただいた時の事を思いだしました。





良寛の文字は細く、消え入るような線でありながら強くしなやかです。
またその線と線は交錯を嫌い、決して交わらず、距離をとり、遠回りをさせ引かれます。


人の中に生きず、生きられず、自然の中に生きようとした人の文字であり、
それに触れるとき、その深い孤独と緊張感、そしてわずかな温もりに触れるような
気持ちになれるのだろう思えます。

芸術とは何でしょうか??光太郎と同じように、良寛もいつも私に問いかけをしてくれます。

徳川美術館さんの

特別展 没後190年記念
良寛さんーその人と書

は今月31日までの開催です。




今日は佐橋が東京に出張ですし、お客様もまだいらっしゃらないので、頑張ってオススメの展覧会の
記事を三つ書かせていただきました。

ちょっと疲れましたので、お休みをいただいて、また記事を書かせていただきますね。

大寒に向かい、お寒さ極まります。どうぞみなさまご自愛くださいますようお願いいたします。




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ラリック展 

2020年01月16日 | おススメの展覧会、美術館訪問
三重県パラミタミュージアムさんでは

宝飾とガラスのモダニティ ユニマットコレクション
ラリック・エレガンス展が27日(月)まで開かれています。







パラミタミュージアムさんは、岡田文化財団さんが運営されている美術館さんです。
岡田家のご地元、三重郡菰野町にあり、背景に広がる鈴鹿山脈を目指して車を走らせながら、名古屋からの道々、たくさんの冬の風景を楽しませていただきました。



ラリックはもともと、宝飾デザイナーとして出発しています。
こちらも16、7歳の頃から修行を積み、20代前半には、既にその才能を開花させています。

現代に近い、ラリック社制作のガラス作品は、随分と見てきたつもりでおりましたが、
初期の宝飾品のデザインを見られたのは今回が初めてであったように思います。

繊細でありながら、大胆なデザインにかなりの時間見入ってしまいました。
アクセサリーにあまり興味のない私でさえ、何度「欲しい!」と言ってしまったことでしょう。

ユニマットさんのラリックのコレクションは、機会あるごとに各美術館さんでご覧になれるようです。

池田満寿夫をはじめとするパラミタミュージアムさんの常設展示も大変個性的で楽しめます。
是非一度伺ってみてください。



上の植物の画像はパラミタミュージアムさんのお庭のユズリハです。


新葉が成長し古葉が落ちる性質から譲る葉⇒譲葉という名前がついたといわれています。
また、父から子に財産を譲るという意味があることから心機一転新たな気持ちにさせてくれる植物として縁起の良い木とされこの葉を正月飾りに用いたりされます。

という説明がありました。





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関根正二展 

2020年01月16日 | おススメの展覧会、美術館訪問
朝の寒さにお布団の中でぐずぐずしていると起きるのが遅くなり、あっという間に1日が終わってしまうように、

展覧会の会期も、どんどん終わりに近づいてきてしまいましたので、連休中に伺った展覧会を慌ててご紹介をさせていただきます。

19日日曜日までの三重県立美術館さんの関根正二展には、この「少年」を見に行きました。

大正6年、関根18歳の作品です。

この無骨な坊主頭と花を捧げ持つ指の繊細さと紅いほっぺ、赤い花びら。

この作品が、関根正二の全てを物語っているように思えます。

同じ夭折の画家、村山槐多の作品に暴力的なものを感じるとき、
関根には、恋する男の無垢の悲しみが常に付き纏う気が致します。

「夜空の星が怖い」と言っていた子供の頃と同じように、彼の優しく素直な心は
画家としての資質に溢れていたように感じるのです。

伊藤深水、安井曾太郎、出会い、影響を受けた画家たちの品位も汲みながら
関根の残した仕事はかなり大きなものだったのではないかと今回は特に思えました。







絵を描き始めた16、7歳の頃からすでに色々見えていて、






19歳、神と人間の間に深く埋もれ消えていった画家。


生誕120年・没後100年  関根正二展
はこのあと、2月より神奈川県立近代美術館 鎌倉別館さんに巡回いたします。

ご興味をお持ちくださいました方は是非お出かけくださいませ。

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