さて、小杉放菴の作品をもう一点ご紹介いたします。
天狗さんが3匹です(調べましたところ、天狗は~人でなく~匹と数えるそうです)
天狗には色々な説があるようですが、ここに描かれた天狗は平家物語に書かれている「人にて人ならず、鳥にて鳥ならず
犬にて犬ならず、足手は人、頭は犬、左右に羽根がはえ、飛び歩くなり」にぴったりの容姿です。
ちょっとお顔が犬には見えず、どちらかというと鳥?のようにも思えますが。。
また天狗は慢心の権化と言われるように普通鼻が高いというイメージがありますが、こちらは何とも剽軽なおじさんのお顔で
日本独特の山岳信仰に基づく山伏の装束も、余り似合っていませんね。
小杉放菴の作品の魅力は、放菴が国学者の父をもち、漢詩に通じ、東洋の多くの思想、神話、古典、また絵画を池大雅、浦上玉堂などに深く学びながら、結局一人の人間の「いのちの問題」に立ち返ろうとした、そのひた向きさ、純粋性にあるように感じています。
生きることは、結局貴く、明るく、清く、美しいことである。生まれてきたばかりの赤ちゃんに誰もが感じる、あの感謝と祈りの気持ちを放菴は描き続けたと言えばよいのかもしれません。
だからこそ、仙厓の作品を多く収集した出光佐三は自ら請いて放菴と出会ったのだろうとも思えます。
「愛らしく、明るかるべき日本の風景」は小杉放菴が好んだ言葉です。
こちらは「腰掛落款」といわれる印譜(放という文字と庵という文字が印影に腰を掛けているように見えるからだそうです)、昭和22年以降の作品であることがわかります。
小杉放菴 軸 「天狗」 紙本・彩色 31.7×38.7㎝ 共箱
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