没後25年有元利夫展 天空の音楽(東京都庭園美術館9・5迄)
有元利夫(S21~S58)に対する憧れのようなものが、私のなかにも確かにあります。1980年代後半、私たちがこの仕事に足を踏み入れた頃、夭折の画家として有元はすでに画壇のスターでした。
風化を意図的に施した画面、美しい色彩と不思議でユーモラスな登場人物は当時とても斬新で魅力的に感じられました。その作品はとても高価で、私たちにとっては今も高嶺の花です。
この夏、有元利夫の作品が久しぶりに一堂に見られると知り、東京の庭園美術館に出かけました。朝香宮(あさかのみや)邸として1933年(S8)年に建てられた建物をそのまま美術館として公開しているのが白金台の東京都庭園美術館です。
緑に囲まれた庭園、アールデコ様式に日本の感性を加えた落ち着いた建物、フランスなど外国から輸入された内装装飾の数々は有元の作品を一段と趣深いものとしていました。
庭園美術館と夭折の画家という背景、そして何よりも彼の作品の作り出す世界がとてもよいムードを織りなしています。
いつものように。。私たち夫婦は美術館をバラバラに歩きましたが。。デートコースにもぴったりで若い方達も多かったように感じます。鑑賞の皆さんはみなゆっくりと美術館を歩き、有元の世界に浸っているように見受けられました。
「羽が生えてきた」有元利夫は最期にそう言い残し意識を失ったと聞いています。
彼は作品とともに詩のような美しい言葉をいくつか残しました。
「羽が生えてきた」には
どこまでも“有元利夫”に徹した彼の生きざまが感じられるのではないでしょうか?
有元利夫は絵を描くことが楽しかったのだろうか?名古屋に戻り考えました。
作る という喜びは確かにその作品から大いに感じ取ることができます。けれど・・描くという喜びはどうだったのだろう?
作る という事と 描く という事にどんな差があるのか?聞かれたら 答えに難しく困りますが
有元の世界を十分満喫した心に あとから訪れる この未消化の物は一体何なのだろう?
25年前とは少し違った私で、しばらく有元作品について考えてみたいと思います。
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