あるきメデス

あちこちを歩いて、見たこと、聞いたこと、知ったこと、感じたことなどを…

国際ウオーキングトレイル実踏 第1日 湯ヶ野~大鍋越~松崎(静岡)

2012-03-02 22:52:02 | 国際ウオーキングトレイル実踏
 2012年2月22日(水)

 日本海の新潟県鳥首岬をスタートし、太平洋は静岡県の石廊崎を目指して歩き継ぎ、
毎年、春秋に実施している国際ウオーキングトレイル実踏は、最終の10年目となる。

 昨年秋の前回のゴール、天城温泉禅ノ湯ユースホステルのある慈眼院の山門で記念撮
影をして、通算50日目となる初日は、8時38分にスタートした。


 今日の行程は、県道115号をひたすら西へ進み、大鍋越(おおなべごえ)と呼ぶ峠
を越えて、伊豆半島西岸の松崎町那賀(なか)までである。

 河津七滝(ななだる)や天城(あまぎ)トンネルに通じる国道414号から県道115
号に下り、河津川の橋を渡って支流の大鍋川沿いへ。暖かい伊豆でも今年の寒さはほかと
同様、大鍋集落の梅も、まだ開花していない。

 点在する大鍋の静かな民家や、行く手の山並みなどを眺めながら進む。県道だが自動車
の通行はほとんど無く、安心して歩ける。

 集落の中ほど、山すそにあった子守(ねのかみ)神社に寄り小休止する。朱塗りの橋を
渡り、上がる石段の横に石積みの棚田があり、ワサビを栽培している。


 子守神社の創立年代は不詳だが、天正12年(1584)10月の棟札が残り、毎年10
月15日には神秘的なお神楽が奉納されるという。


 神社から500mほど進んだあたりで、軽ザックを背負ったウオーキングスタイルの女性
が下って来た。声をかけると、磐田市に住み、この先に別荘を借りてご夫妻で来ていると
いうWさん。伊豆半島の各地で別荘を探して回った末、一昨年ここを出るという方を知り、
借りたとのこと。


 日々、あるいは季節ごとに変わるこの地の自然が好きで、気に入っているという。家にい
る夫を紹介するからと、一緒に戻ってくれることになった。

 間もなく県道は、右からの支流へのカーブ点となり、「この先約6㎞は落石や路肩崩壊の
ため通行規制」の看板が立っている。

 Wさんの別荘は、支流の方に入ってすぐ近く。夫のSさんは、その支流に入って居られた
が、すぐに自宅に戻ってこられた。


 別荘の裏手には、夫が自作されたという露天風呂があり、お湯は、河津温泉の湯をポリ
タンクに汲んで運ぶとのこと。200リットルと500リットル入る大きなポリタンクと、
キャンピングカーが横に置いてある。

 アイスコーヒーを頂き失礼したが、思いがけぬ出会いだった。

 支流沿いに点在する住宅が尽きたところで橋を渡る。折り返して対斜面を緩やかに上がり、
大鍋川左岸高見の林間を進む。


 右カーブ点で東側の展望が開け、眼下に通過してきた大鍋の集落が見下ろせる。その先で
舗装が終わり、標高337m点付近には、通行規制の柵が設けられていた。


 高度が上がり、行く手に大鍋越えあたりかと思われる稜線が見えてきた。最北部まで回り
込んで橋を渡る。何回か続くヘヤピンカーブのあちこちに、石積みの段に造られたワサビ畑
が現れる。


 伊豆森林管理所の専用林道の分岐点には、くさりが貼られ通行止めの表示が立っていた。

 各々の地形を生かした段々状のワサビ田が次々に現れ、静岡県が日本一のワサビの生産地
であることが実感できる。

 何度も続くヘヤピンカーブが終わり、傾斜も緩んでこれまで無かったカーブミラーのある
右カーブ点に着く。

 今日の最高点、標高627mの大鍋越である。南西への稜線に伸びる「高峰歩道」の標柱
が倒れていた。12時半近いので、ここで昼食とする。

 20分ほどで食事を済ませ出発した。右カーブしたすぐ先の、南側では林道工事中。重機
など3、4台の機械が入り、斜面が削られ林は消えている。今どき、こんな工事は珍しい。


 すぐ先に、県の大鍋雨量観測所の小さい建物があり、屋根上に無線のアンテナ塔が立つ。


 松崎町に下るこちらの斜面は、展望が開けて上ってきた河津町側より斜度も幾分きつい。
カーブミラーも多く舗装も異なり、町による道路管理の相違が分かる。


 しばらくは右左にカーブが続き、高度はどんどん下がる。


 パイプで通行止めとなっているカンス林道への分岐を過ぎ、再びワサビ畑が増え、収穫し
たワサビを運ぶモノレールの設けられたところも多い。


 白い花の咲き出したワサビ田もあり、春の近いことを感じる。杉木立の間を右に大きく回
り込み、ヘヤピン状に戻って池代川が近づき、橋を渡った。

 県道は池代川の左岸沿いとなり、ワサビ田を眺めたりせせらぎの音を聞いたりしながら下
って行く。


 杉林の中に古びた二つの小屋のあるところで右岸へ。最奥の集落池代の民家が現れ、近く
の高台にあった智泉寺に上がって休憩する。

 本堂前に広がる庭園には、六地蔵や古い石仏などが並び、ツツジなど植え込みも多く趣あ
る寺だ。

 境内からは池代の家並みが望まれ、石段下には日に5本出る松崎行きの池代バス停がある。


 近くに、松崎の特徴的な景観のひとつ、なまこ壁の土蔵のある民家が現れ、今日初めての
店、成沢商店の前を通過する。

 日吉神社のそばから北側の持草川沿いに入る車道入口に、シャクナゲで知られる長九郎山
登山道の案内図が立っていた。

 近くの人の話では、通常は5月22日頃がシャクナゲの見頃だが、今年は寒いので遅れる
だろうという。この先、大沢からの登山路は閉鎖されていることも教えてくれた。

 素泊まり民宿「ししの宿」や民宿池代荘の近くを通過、五軒屋バス停の先で家並みが途切
れる。県道は池白川の右岸に回り、大沢集落が近づく。


 白梅が見頃になっているライダーハウス「BBBRoad」の少し先、北側の急斜面に白梅が咲
きミカンの実る、ちょっとした花畑のように見える一角があった。


 真下から斜面中腹まで上がって眺めると、その下の畑で草取りをしている奥さんが居られ
た。大沢集落の「民宿こんや」のおかみさん。今日の宿が三餘荘だと言うと、よい宿だとか
奥様はどこから来られたとか話し、畑の隅にあるミカンをもいでくれた。

 大沢集落の入口となるカーブ点の川向こうに、「野天風呂」のちょうちん下がる建物があ
り、自噴の露天風呂に500円で入れるという。橋のたもとのバス停の名も「野天風呂」に
なっていた。


 近くの流れの傍らに、「依田佐二平翁石像」と記された石造りの立像がある。この地出身
で第1回衆議院議員となった人で、今日の宿ゆかりの土屋三餘(さんよ)の門人らしい。

 その先500mほど、那賀川となった流れの右岸に桜並木が続く。中ほどに大沢温泉ホテ
ルのりっぱな建物があり、いつのものか大きな水車も残っていた。


 民宿旅館こんやの看板の見えたあたりで県道は橋を渡るが、そのまま桜並木の遊歩道を少
し進み、朱塗りの橋を渡って道の駅「花の三聖苑」に入った。

 地元産品の直売所や食堂のあるふつうの道の駅とは違う雰囲気。それもそのはず、郷土の
三聖人の業績を中心に、松崎の歴史、文化を紹介する複合施設とのこと。


 公園風なエリアには、明治初期の公立小学校「旧大沢学舎」↑、松崎の歴史などを紹介す
る「三聖会堂」↓、土産店や食事処のある和風の建物、日帰り温泉「かじかの湯」などが並
び、県道側入口には大きな花時計も設けられている。


 時間も経過しているので、個々の施設には入らずに通過する。県道に出て、中川小の近く
で通学用の吊り橋「しろかに橋」を渡る。



 那賀川左岸に続く、枝張りのよいソメイヨシノの桜並木に沿って、遊歩道を2㎞近く進む。
樹下のナノハナがかなり咲いている。


 南郷集落が途切れるあたりで対岸の那賀(なか)集落が近づく。橋を渡り那賀集落に入り、
17時ちょうど、歴史を感じられる長屋門をくぐり、三餘荘ユースホステルに着いた。



 広い邸内の中心に池を巡らし、ツツジや老松を配したりっぱな日本庭園があり、ペアレン
トの土屋九彦さんは、この家の15代目当主で6月で90歳になられるとか。50年近く、
このユースを経営されていて、松崎の偉人、土屋三餘のお孫さんにあたるという。

 奥様手作りの夕食をごちそうになり、土屋さんからご祖父三餘の業績などを説明していた
だいた後、奥の土蔵を活用した三餘塾資料館をご案内いただく。

 耐火のため三重になっている扉を開けて土蔵に入ると、中もなまこ壁になっている。

 中には、土屋三餘ゆかりの古文書や書、写真、趣味の楽器、食器や酒器など、たくさんの
ものが展示されていて、三餘の偉大な業績の一端を垣間見ることが出来た。


【コースタイム】天城温泉禅の湯YH8・38ー子守神社9・24~30ー標高191m付近(W
 さん宅) 9・59~10・10ー大鍋川支流の橋10・20ー次の支流の橋11・00ー林道分岐点
 11・18~28ー大鍋越 (昼食)12・26~45ーカンス林道分岐13・10ー343m点(橋)
 13・52ー智泉寺14・30~47ーBBRoad15・37ー野天風呂BS15・55ー道の駅花の三聖苑
 16・14~20ー三餘荘YH17・00

(天気 晴後曇、距離 24㎞、地図(1/2.5万) 湯ヶ野、仁科、歩行地 河津町、
 下田市、松崎町、歩数 41,000、累積標高差 約2,270m)

 ちなみに、土屋三餘の詳細については、松崎町のウェブサイトのこちらをご覧下さい。
 



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