愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

からだの初期化を試みよう 23 アローン操体法 余話-1 背伸び(5)

2015-12-15 14:11:32 | 健康
日常、運動に縁の遠かった人が、久しぶりに運動すると、数時間後からその運動に関わった部分の、特に筋肉に張れや痛みを覚えます。例え、普段運動をして鍛えていたとしても、運動が激しい時、または違った運動を行ったとき、同様に“筋肉痛”を覚えます。

一方、例えば、腕で骨折した場合、副木を添えて肘を曲げた状態で固定し、肘の屈伸を制限して回復を待つことがあります。その期間が長引いた場合、回復して、固定を除いた際、動きが制限されていた箇所の筋肉は細まって弱まり、また腕を伸ばしたとき、激痛を覚えるようである。

それらの状況を考えてみます。まず、“筋肉痛”について。

運動後の“筋肉痛”については、現在必ずしも、決定的な原因が明確にされているわけではなさそうである。筋肉組織での局所循環障害、または、いわゆる、疲労物質(乳酸?)の蓄積など示唆されています。

筋肉が収縮する方向にある状態で、収縮する方向とは反対方向に引っ張られて強制的に引き伸ばされた(伸長性収縮またはエキセントリック収縮と言われている)場合、筋肉組織が傷つくことになる。この筋肉組織の損傷が、後々痛みを起こす原因の一つであろうとの考えもある。この点について考えていきます。

例えば、階段を下りる運動を想像してみます。右足を一段目に降ろし、それに続いて、左足を下の段に向けて降ろしていくと、その足が下の段に着くまでの間、からだは宙に浮き、すでに着段している右足が数十kgの体重を支えることになります。この体重を支える役目を果たす筋肉は、主に、太ももの前方にある筋肉(大腿四頭筋)で、それがしっかりと収縮して、体重を保ちます。右脚の大腿四頭筋は、からだを降ろしていくときには、左足が下段に届くまで、収縮した状態で引き伸ばされていくことになります。すなわち、伸長性収縮を強いられていることになります。

この伸長性収縮による傷は微細ではあろうが、降段の際、降りる段数が多ければ、当然、伸長性収縮の回数も増えて、無視できない程度に傷の蓄積が進むことになるでしょう。登山で下肢を痛めるのは下りの際である とはよく聞くことです。重いリュックを背負った状態では、傷害の程度はなおさら重くなるでしょう。

“肩こり”の場合でも、同様の状況にあるのではないでしょうか。前回述べたように、首の後ろから肩にかけて在る僧帽筋で代表される筋肉群は、頭部と腕を支えるために収縮したストレスの掛かった状態にありながら、時に前かがみが強まる、あるいは物の上げ下げなど、絶えず伸長性収縮の機会に晒されているものと想像されます。

ちょっと横道にそれて、細菌の感染時に起こる炎症反応について触れます。からだのある組織で細菌の感染があった場合、細菌を排除し、からだの恒常性を維持するため、直ちに生体防御反応が起こります。炎症及び免疫反応です。

細菌などが体内に侵入すると、まずそれを異物として認識することから反応は始まります。続いて、感染部位の近傍の毛細血管に変化が起こり、細菌を排除するのに必要となるいろいろな成分を誘き寄せ、また血液中から血管壁を通して感染部位に集めます。それら成分には、いろいろな物質や、白血球その他貪食細胞と呼ばれる特殊な細胞が含まれます。貪食細胞は、異物を細胞内に取り込んで(貪食という)殺菌・分解します。凡そ、その辺りが炎症反応と言われる過程でしょうか。

炎症反応が進行する過程で、痛みを起こす“発痛物質”が生成されることも注目されます。

続いて、貪食細胞によって処理され、生成された細菌の残骸を排除するために、リンパ球などの免疫担当細胞が働いて、さらに異物の排出処理は進んでいきます。

炎症・免疫反応に続いて、傷ついた患部組織の再生修復過程に進みます。この段階では、毛細血管の新生や結合組織の造成などが起こり、最終的に実質組織に置き換わり、組織の再生修復が終わります。

異物の認識から組織の再生修復に至る各段階で、体内で生成された無数と思えるほどの物質、高分子のタンパク性または低分子の非タンパク性物質が、それぞれコミュニケーションを図りながら、炎症及び免疫反応が順序良く進むように任務を遂行していくのです。

最終段階の再生修復過程で注目したい一点は、結合組織の造成に関わる「繊維芽細胞」の働きです。この細胞はコラーゲンなど高分子物質を生成・分泌し、結合組織の生成に関わっています。この点は、体操について考えていく上で、非常に重要と思えるので、別の機会に詳しくみていくつもりです。

話を“筋肉痛”に戻します。最近の研究成果で、細胞がストレスに晒されたり、何らかの原因で損傷を受けたとき、それらの局所では、上に述べた細菌感染時と同様の炎症・免疫反応が進んでいく ということが明らかにされてきています。どの細胞でも、もともと細胞内に、炎症反応の引き金となるような、内に秘めた物質が存在していて、ストレスや傷によって、それら物質が細胞外に出て、炎症反応の引き金を引くということです。このような物質も単一ではなく、複数あるようです。

筋肉細胞も例外ではなく、ストレスに晒された、または傷ついた筋肉組織では炎症が進行していくことを意味します。すなわち、“肩こり”や“筋肉痛”の発現に、炎症・免疫反応が深く関わっているものと思われます。ただ、ストレスや傷が軽い場合は、知覚されることなく、修復されるものと思われます。

激しい運動では、筋肉ばかりでなく、靭帯を含めて多くの組織で傷害を起こしているであろうことは、容易に理解できることです。プロ野球で、投手が役目を果たした後、炎症を抑えるために、肩から肘にかけて冷却している状況はよく目にするところです。

以上、“肩こり”や“筋肉痛”にあっては、炎症・免疫反応、局所での循環障害、疲労物質(?)の蓄積等々、複数の現象が交錯して現れるものと考えられます。これらの現象は、その程度によっては、睡眠を十分とったからと言って、一晩や二晩で消失するものではないことは、日常経験しています。

次回は、長期間にわたって動きを抑えられていた筋肉組織についてみていきます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする