愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題397 漢詩で読む『源氏物語』の歌 (十三帖 明石)

2024-04-01 09:25:59 | 漢詩を読む

[十三帖 明石 要旨] (27歳春~28歳秋) 

須磨で逢った嵐は止まない。落雷で廊が焼け、源氏は調理場に避難し一日中念仏を唱え、祈った。明け方、まどろんだ源氏の夢に故桐壺院が現れ、住吉の神の導きに従ってこの地を去るようにと告げられる。

 

都でも悪天候が続いている。故院は、朱雀帝の夢にも現れ、憤怒の形相で帝を睨みつけた。それ以来、帝は眼を患い、そのうちに右大臣が亡くなり、弘徽殿の女御も病に倒れる。

 

須磨で夢を見た翌朝、明石の入道が源氏を明石に迎える。入道は、娘の出世を願い、都人に縁づけたいと住吉社に祈願してきたと話し、娘を源氏に紹介する。以後、源氏は娘に度々文を送るが、梨の礫である。

 

入道は思い余って、娘に代わって文を送るが、源氏は不快に思い、代筆の返事などは不要ですと断った。源氏は、改めて娘に「どうしたのか、と聞いてくれる人もいないので、鬱鬱と一人で悩んでいます」と胸の内を訴えると、娘から初めて次の歌が送られてきた。

 

思ふらむ 心のほどや やよいかに  

   まだ見ぬ人の 聞きかなやまん  (明石の君) 

 

源氏はこの文を見て、書き方も、教養も都の立派な女性に劣らないと感動して、歌を送り続けます。両人は八月に初めて契り、明石の君は懐妊する。

 

凶事が続く都では源氏を呼び戻すことを決め、召喚の宣旨を下し、源氏は朱雀院の命で突然都へ召喚される。源氏は御子を宿した明石の君を残し、別れを惜しみ、都へ戻るのでした。 

 

本帖の歌と漢詩 

ooooooooo   

思ふらむ 心のほどや やよいかに  

  まだ見ぬ人の 聞きかなやまん   (明石の君) 

  [註] 〇やよ:やあ、おい、さあ(呼びかけるときに発する語)。  

 (大意) 私を想っているというお心のほどは さあどんなものでしょうか、まだ逢ったこともない人のことを世間の(/チチの)噂だけで悩むものでしょうか。 

 

xxxxxxxxxx  

<漢詩> 

   問真心話   真心話(マゴコロ)を問う    [上平声二冬韻] 

君道苦於恋, 君は道(イ)う 恋に苦しむと、

但疑春意濃。 但(タダ)し疑う 春意(オモイ)の濃(コサ)を。

只憑世閑話, 只(タ)だ世(ヨ)の閑話(ウワサバナシ)だけに憑(タヨ)り、

猶是未相逢。 猶を是(コ)れ 未(イマダ) 相逢(アイアウ)ことなきに。 

 [註]〇春意:春情、思い; 〇憑:頼みとする; 〇閑話:むだばなし、噂。   

<現代語訳> 

 真心の程を問う 

貴方は 私を想っていると仰るが、どの程度の思いか知れたものではない。ただ世間(/父)の噂話だけを頼りにしていながら、なお未だお互い逢ったこともないと言うのに。 

<簡体字およびピンイン> 

  问真心话     Wèn zhēnxīn huà  

君道苦于恋, Jūn dào kǔyú liàn,  

但疑春意浓。 dàn yí chūnyì nóng.      

只凭世闲话。 Zhī píng shì xiánhuà. 

犹是未相逢, yóu shì wèi xiāng féng,  

ooooooooo   

 源氏の歌:

 

いぶせくも 心のものを なやむかなや

  やよやいかにと 問う人もなみ   (光源氏) 

 [註]〇いぶせくも:気分がはれず 鬱陶しい; 〇やよや:呼びかける時に発する語、おいおい。

 (大意)胸もふさがる切なさに 悩んでいます いったいどうかしたの と尋ねてくれる 人もありません。

 

 

【井中蛙の雑録】 

・NHK大河ドラマ『光の君へ』は弥々佳境に入りつゝあります。ところで、題の『~ へ』とは、“捧げる”または“伝える”等々の相手を指すと思えるが。題中『光の君』とは?“まひろ”、“道長”、“源氏物語中の光源氏”、……?。筆者は、目下、捕らえ兼ねています。

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