特に、高倉健さんのファンというわけではないのですが、健さんのエッセイの評判が結構高いとのことで読んでみました。
健さんは1931(昭和6)年生れですから、もう70歳半ばを過ぎていらっしゃいます。
本書は、健さんが60歳代のとき、ラジオ番組ニッポン放送「高倉健旅の途中で…」で語られた内容を書き起こしたものです。
(p35より引用) 言葉というのはいくら数多く喋ってもどんなに大声を出しても、
伝わらないものは伝わらない、そういう思いは自分の中に強くあります。
言葉は少ないほうが、自分の思いはむしろ伝わるんじゃないかと思っています。
いかにも健さんらしい飾らない実直な言葉で語られているのですが、それでいて繊細な優しい感性が伝わってきます。
また、健さん自らの体験だけでなく、健さんが出会った魅力的な人々のエピソードも紹介されています。その中からひとつ、健さんの知人松久信幸シェフの言葉です。
(p104より引用) 人生には苦しいこともあるし、嘘と言いたくなるほど辛いこともある。
でも、神様は絶対に無理な宿題は出さない。
その人に与えられた宿題は、絶対にその人自身がクリアできるものなんです。
乗り越えようなんて思わなくても、一歩ずつ進んでいけば、
いつの間にか乗り越えてしまっている。
その時、初めて自分に自信が持てるんだと思います。
そして、こちらは健さん自らの言葉。
(p112より引用) 人間にとっていちばん贅沢なのは、心がふるえるような感動。
お金をいくら持っていても、
感動は、できない人にはできません。・・・
一週間に一回でもいいですから、心が感じて動けることに出会いたい-。
とても贅沢だとは思いますが、
感じることをこれからも探し続けたいと思ってます。
この言葉に表れている常日頃の心持ちが、健さんのエッセイで紹介されている数々の気づき・感動の源になっているのだと思います。
大変失礼な言い様ではありますが、感性の豊かさは年齢とは無関係だと改めて感じ入りました。
旅の途中で 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2003-05-30 |