ドラッカーは「組織社会」の到来を指摘し、その組織の運営方法として「マネジメント」を提唱しました。
「組織」についてのドラッカーの名言・至言は数多くありますが、今回本書を読んで、改めて再認識させられたのが、「組織の目的」に関する以下のフレーズです。
(p217より引用) 組織の目的は組織の外にしかない。顧客と市場である。
「組織の存在」自体を自己目的化させないために、折に触れて思い出さなくてはならない言葉だと思います。
さて、以下、組織やマネジメントの周辺的な事項に目を向けたドラッカーの指摘を記してみます。
まずは、逆説的な言い方でマネジメントの本質を語ったくだりです。
(p61より引用) 少なくとも、すでに起きたことのある問題で同じ混乱を三たび起こしてはならない。混乱に対処できるようになることは進歩とは言えない。対処以前の問題として、予防するか、日常の仕事にルーティン化してしまわなければならない。
「よくマネジメントされた組織は、日常はむしろ退屈な組織である」
「退屈」とはいえ、その中では、マネジメントサイクルが自律的に動き続けているわけです。いわゆる「水面を進む水鳥」の図なのでしょう。
もうひとつ、興味深い逆説的な指摘をご紹介しておきます。
理想的な「マーケティング」について語った言葉です。
(p83より引用) 「販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」
顧客に寄り添う行動が実践されていれば、こちらから顧客に働き掛ける「販売行動」は不要のはずとの考えなのでしょう。
さて、そのほか、本書で紹介されているドラッカーらしさが感じられるくだりです。
ひとつめは、ドラッカーが採る「会社」の位置づけについてです。
ドラッカーは、株主のために働く会社は否定します。会社組織は「多様な当事者間における均衡ある利益の実現」を図るものだと考えています。
(p126より引用) 長期的な成果は短期的な成果の累積ではない
近年声高に唱えられている株主重視の「シェアホルダー説」ではなく、ひろく利害関係者のバランスを考慮した会社経営を目指す「ステークホルダー説」を支持しているのです。
ふたつめは、「変化を当然のこととする」考え方をイノベーションに敷衍させた指摘です。
(p134より引用) 企業家に天才的なひらめきがあるというのは神話にすぎない。・・・
イノベーションは、変化を利用することによって成功するのであって、変化を起こそうとすることによって成功するのではない。ということは、変化は当然のこととして受け止めなければならないということである。
この「変化」は、まさに社会の潮流の変化です。
ドラッカーは独立した経済を否定します。それは社会の制約要因のひとつに過ぎないとの考え方です。この点を象徴的に示すのが、1934年、ケインズのセミナーを聴講していた際のドラッカーのエピソードです。
(p221より引用) そのとき突然、ケインズおよび出席していた優れた学徒の全員が、「財と経済の動き」に関心を持っており、彼自身は「人と社会の動き」に関心を持っていることを悟った。
自らを「社会生態学者」として位置づけるドラッカーの原点でもありますし、近年、脚光を浴びている「行動経済学」の考え方に通じる瞬間でもあります。
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