OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

言葉の風景、哲学のレンズ (三木 那由他)

2024-06-15 07:42:29 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストを見ていて、タイトルに惹かれて手に取ってみました。
 哲学者三木那由他さんによる “哲学的な視座” からのエッセイ集です。

 トランスジェンダーである三木さんならではの起点からの興味深い指摘や思索の紹介が数々ありましたが、そういった類のものとはちょっと違ったユーモラス?なエピソードをひとつ書き留めておきましょう。

 三木さんはかれこれ30年来の “GLAY(日本のロックバンド)ファン” とのことですが、言語哲学を学んだあと、歌詞の解釈に新たなバイアス?がかかったというのです。

 その歌詞は、こうです。

(p125より引用) 避けられぬ命題を今 背負って迷ってもがいて 真夜中 出口を探している 手探りで

 「pure soul」という楽曲の歌詞なのですが、この中の “命題” という単語に鋭敏に反応してしまうようになったそうです。

(p126より引用) GLAYファンを停止していた時期に言語哲学なんてものを学んでしまったせいで、私の心のなかの哲学者が「命題」という言葉に反応してしまうのだ。・・・・・・
 はっきり言って邪魔で、心のなかの哲学者には「いまいいところだから静かにしてて!」と言いたくなる。でも、「意味」とか「言葉」くらいの日常的に見かける表現ならともかく、「命題」などという凝った言葉になると、あまりに哲学哲学しすぎていて、意気揚々と語りかけてくる心のなかの哲学者に、ただGLAYの曲に集中したいだけの私は競り負けてしまうのである。そうするともう、ずるずると心のなかの哲学者に引きずられてしまって、ちょっとあとの「賽を振る時は訪れ 人生の岐路に佇む」という歌詞も、ついつい「ふむ、複数の可能世界がまだ文脈に残されているのだな」と頭の隅で考えながら聴いてしまったりする。

 “哲学者” なら、さもありなん、と思わせるネタですね。

 私も、たとえば(「可能性」ではなく)「蓋然性」といった単語を耳にすると、ちょっと反応することがありますね。もちろん私はアカデミックな世界にいる者ではありませんが、はるか昔、学んだことの断片が顔を出すようです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕メタモルフォーゼの縁側

2024-06-14 15:03:05 | 映画

 
 2022年に公開された日本映画です。
 
 BLコミックを小道具に、年の離れたふたりの人間関係を描いたオリジナルシナリオの作品ですが、芦田愛菜さんと宮本信子さんが主役なだけに、とても落ち着いた優等生的な仕上がりですね。
 
 正直、ふたりの演技力や存在感を考えると、作品の出来はかなり物足りない印象です。
 まあ、たまには観る映画にこういった感じのものを混ぜるのも、心穏やかでいいかもしれません。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ダウントン・アビー/新たなる時代へ

2024-06-13 11:58:34 | 映画

 
 2022年に公開されたイギリスとアメリカ合衆国の合作映画です
 
 テレビドラマシリーズの続編を映画化したものとのことですが、確かにテイストは “ホームドラマ” 的ですね。
 
 ストーリー展開もいくつかのエピソードが並行して進みつつも分かりやすく、Happy Endに収束していきます。そういったお決まりの安心感は万人受けする王道パターンなのでしょう。
 
 その点、物足りなさを感じるかもしれませんが、私はこの “ほどほど” が程よいのです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔ドラマ〕SHERLOCK(シャーロック)

2024-06-12 07:10:48 | 映画

 
 2010 年から放送されたBBC制作のテレビドラマです。
 
 シリーズ1から4まで特別編を含めると13話。それぞれが1時間を超える長尺で、一流の映画だとっても十分通用するしっかりした作りです。
 
 ストーリーは一筋縄ではいかないとても凝ったもので、正直その複雑さと奇抜さにはついていけないところがありました。
 
 キャスティングも、主役の ベネディクト・カンバーバッチをはじめマーティン・フリーマン、アンドリュー・スコットら映画俳優としても有名どころが配されていて、見応え十分のドラマですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕永遠に美しく…

2024-06-11 15:07:57 | 映画

 
 1992 年に公開されたアメリカ映画です。
 
 ブラックコメディ作品ですが、こういったノリは好き嫌いがはっきり分かれるでしょうね。ちなみに私には全く合いませんでした。
 
 ラストで語られるメッセージも、そのあとのシーンで混ぜ返されてしまったようで・・・。
 
 キャスティング的には、メリル・ストリープ、ブルース・ウィリス、ゴールディ・ホーンとかなりの重量級が並んでいます。
 それぞれコメディもこなす演技派だとは思いますが、まあ、こういったテイストの作品であれば “この面々でなくては、”といった感じでもありません。そのあたりも、ちょっとちぐはぐな印象でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール (ビル・パーキンス)

2024-06-10 09:51:59 | 本と雑誌

 少し前に、大江英樹さんによる「90歳までに使い切る お金の賢い減らし方」という本を読んだのですが、その中で本書が紹介されていました。

 私も「定年」を目の前に控え、僅かではありますが手元にある “資産の処し方” について考えてみなくてはならない歳になりました。そのあたりのヒントにと手に取った著作ですが、結構参考になるアドバイスや新鮮な気づきが得られました。

 その中から特に有益だと感じたところを覚えとして書き留めておきます。

 まずは、著者が本書で伝えたいメッセージを端的に記しているくだりです。

(p19より引用) 今しかできないことに金を使う。
 それこそが、この本で伝えたいことの核だ。
 90歳になって水上スキーを始めるのは難しい。今それを我慢すれば、その分の金は貯まるだろう。だが、十分な金を得たときには、すでにそれができない年齢かもしれない。過去に戻って時間を取り戻すこともできない。
 金を無駄にするのを恐れて機会を逃がすのはナンセンスだ。金を浪費することより、人生を無駄にしてしまうことのほうが、はるかに大きな問題ではないだろうか。

 全く同意です。(が、私はまったく実行できていません)

 そして、著者は、こういう言い方もしています。

(P230より引用) 私たちは、さまざまなことを体験し、発見したいと思っている。仕事をすれば、それらを叶える手段(金)が手に入る。だから私たちは、働き、金を稼ぐことに必死になる。だが、いつのまにかそれ自体が目的になってしまい、もともと求めていたものが何かを忘れてしまっている。それでは本末転倒だ。

 まさにそのとおりだと思いますし、遅まきながら私も完全に「使うフェーズ」に入っています。
 ただ、この歳になっても、「自分のやりたいこと」が明確にあるわけでもなく、(自分で言うのも無責任極まりないのですが、)それについて真剣に考えたことすらないんですね。これが、出遅れている致命的な要因です。

 とてもマズイ状況だということは痛感しているので、ともかく、まずはここからです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕オデッセイ

2024-06-09 12:50:27 | 映画

 
 2015 年に公開されたアメリカ映画です。
 
 “火星でのサバイバル”がモチーフのSF作品ですが、万人向けのエンターテインメントとしてはよくできていますね。
 
 もちろん純粋に科学的裏付けがあるものではありませんが、それなりにもっともらしく、また超人的な能力で切り抜けるといったシーンもなく、“人間の知恵と意思” “仲間たちの想い”で奇跡を生んだストーリーは素直に楽しめます。
 
 マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ペーニャ、ショーン・ビーン、キウェテル・イジョフォーといった面々も、それぞれに役柄にフィットしたキャスティングで、こちらも見事だったと思います。
 
 あとは、1970年代のディスコミュージック、これも効いていましたね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕サブウェイ123 激突

2024-06-08 21:35:49 | 映画

 
 2009年に公開されたアメリカ映画です。
 
 地下鉄を舞台にしたサスペンス作品は何作か観たことがありますが、どれも似たようなプロットです。
 
 本作も設定やストーリーにはこれはという特徴はありません。
 物語の中に残されたいくつもの“引っかかり”がそのまま結末を見ないままに終わったというのは何とも不満を感じるのですが、こういうつくりもあるのでしょうね。
 
 まあ、この作品の場合は、相対峙する主人公たちを演じるのがデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタというのが最大の見どころなのですから、ストーリーは二の次なのかもしれません。
 ともかく、こういった狂気のキャラクタを演じさせるとジョン・トラボルタの物理的な存在感と迫力が際立ちますね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕月の満ち欠け

2024-06-07 09:21:02 | 映画

 
 2022年に公開された日本映画です。
 
 長編小説が原作の映画化作品とのことですが、かなり強引な設定の物語だという印象を受けました。とても “理屈っぽい” やりとりが続きます。
 
 その故か、演出も台詞回しもワザとらしさ感満載で、ちょっとバタ臭い感じですね。BIG BOX前、高田馬場の道を走るこれみよがしの当時の車もかえって気になります。
 あとは、子役さん、ちょっとこの役どころを担うには荷が重すぎたようですね。
 
 ちなみに、ロケ先のひとつは以前の勤務先のビルの一室のようでした。日比谷公園を臨んだ景色、手前の窓と手すりにも見覚えがありますから、間違いないと思うのですが・・・。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ザ・コントラクター

2024-06-06 10:40:40 | 映画

 
 2022年に公開されたアメリカ映画です。
 
 可もなく不可もなしといった印象のアクション作品ですね。
 
 ストーリーは敵味方がはっきりしたシンプルな流れで、これといった見どころがあるわけではありませんが、主人公のサバイバルシーンはなかなかリアリティがあって、丁寧に演出されていたように思います
 
 主演のクリス・パインは、こういったアクション作品の主役を演じるには少々“優等生”的でインパクトは今ひとつですね。とはいえ、私としてはこの歳になってくると、この程度のハードさ加減で十分です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナマケモノ教授のムダのてつがく ―「役に立つ」を超える生き方とは (辻 信一)

2024-06-05 09:57:05 | 本と雑誌

 いつも聴いているピーター・バラカンさんのpodcast番組に著者の辻信一さんがゲスト出演していて紹介された著作です。

 辻さんは文化人類学者で「スローライフ」の提唱者でもあります。
 昨今の「コスパ」「タイパ」という言葉に象徴されるような “効率化重視の生活” のアンチテーゼとしてどんな議論が提示されているのか興味を抱いて手に取ってみました。

 期待どおり、なかなか面白い議論が紹介されていたのですが、それらの中から特に印象に残ったところをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、本書のテーマである「ムダ」の意味づけについて語っているところからです。

(p25より引用) 「ムダ」というのは、いつでもある特定の視点からの、ひとつの価値判断にすぎない、ということを覚えておこう。それがある時空間の文脈のうちで、いかに優位で特権的な地位を占める視点であったとしても。ムダと断定されたモノやコトやヒトのなかに、その視点をすり抜ける、ほかの誰かや何かにとっての価値が、いや誰にも予想できない何らかの可能性があり得るのだ。

 もうひとつ、この「ムダ」ですが、しばしばその対立概念として「役に立つ」ということがいわれます。“役に立たないものは「ムダ」” だといった言い方が代表的です。
 こういった考え方について、辻さんはこう捉えています。

(p190より引用) ぼくは「ムダ」と「役に立つ」を対立するものと見ているわけでもないし、「役に立つ」を否定しているわけでもない。逆に、両者を対立としてみる見方こそが、問題だと考えている。「役に立つ」ことを絶対視して、一見、役に立たないように見えるものを「ムダ」として切り捨てるようなやり方に「NO!」と言っているだけだ。
 教育においても、「役に立つ」ことが重要なのはもちろんだ。しかし、「役に立つ」が独裁的な権力を得て、そこから外れる「モノ」「コト」「ヒト」を排除するようになったら、どうだろう。それがまさに、試験に役立つ勉強や、就職に役立つ進学、お金儲けに役立つ授業・・・・・・などが席巻しているいまの日本なのではないか。

 そして、「終章」で示されるのが、辻さん流の “愛の定義” です。
 「愛とは相手のために時間をムダにすること」

(P235より引用) 「あなたは効率的に愛されたいですか?」

 この自問のインパクトは強烈でした。

 さて、最後に本書を読み通して一番印象に残った30年以上環境運動家として活動してきた辻さんの台詞を書き留めておきます。

(p150より引用) ぼくたち人類を絶望的な窮地に追いこんた要因は、自分たちもその一部である自然をただのモノと見なし、役に立つものと役に立たないムダなものとに分けるような態度だ。そのあげくに、ぼくたち人間は自然界にとっての厄介者、つまりできればないほうがいい、ムダな存在に成り果てている。

  厳しい言葉ですが、現実ですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ロビンとマリアン

2024-06-04 14:08:24 | 映画

 
 1976年に公開されたアメリカ映画です。
 
 主人公のロビン・フッドは中世イングランドの伝説上の人物なので、この作品自体がファンタジーです。
 
 ともかく、ショーン・コネリーとオードリー・ヘプバーンの共演というその1点のための作品ですから、ストーリーは二の次。
 
 特に、オードリー・ヘプバーンにとっては、ほぼ10年ぶりのという映画復帰作ということで “オードリー・ファン” の期待度は最高潮だったことでしょう。
 長いブランクがあっても、やはりオードリー・ヘプバーンの魅力は衰えるものではありませんでした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕イコライザー THE FINAL

2024-06-03 16:21:14 | 映画

 
 2023年に公開されたアメリカ映画です。
 
 前2作も観ていますが、その印象はそれほどよくありませんでした。
 本作品はシリーズ最終作とのことですが特段先行作との連続性はないようで、逆に単独作品としての完成度は高まったように感じます。
 
 映像的にはかなり厳しいシーンもあって、その手の画面が苦手な私には目を背けたところもありますが、イタリアの小さな港町の風情やその地の人々と主人公との交流の様は、デンゼル・ワシントンの柔和な表情とも相まってなかなかに印象的でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ダンテズ・ピーク

2024-06-02 12:58:43 | 映画

 
 1997年に公開されたアメリカ映画です。
 
 火山の噴火災害をテーマにした“パニック” 作品なのでそれほど目新しさはありませんが、災害の舞台が小さな町という設定もあり、手ごろなハラハラ感が楽しみどころでしょう。
 SFX、VFXによる映像も適度のスケールでかえってリアリティを感じます。
 
 ストーリーも丁寧に伏線を回収していく展開が好ましく、主人公を演じたピアース・ブロスナンとリンダ・ハミルトンも気負いのない演技でよかったです。
 
 あと、こういったパニック作品ではお決まりの混乱要因になる子供たちも、この作品では素直で、不必要なイライラ感もありませんでした。
 
 ファミリー向きのエンターテインメント・パニック映画ですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕必殺4 恨みはらします

2024-06-01 11:53:20 | 映画

 
 1987年に公開された日本映画です。
 
 テレビドラマで人気だった「必殺シリーズ」ですが、このところはるか昔に映画化された作品を続けざまに観ています。
 
 今回は第4作目、監督は深作欣二さんで、千葉真一さん、真田広之さんらがゲスト出演という作品なので、従来からの “仕事人” のノリとはかなり見せ場も異なった出来栄えになっています。
 
 テレビシリーズとは一線を画した “映画作品” として別の魅力を楽しむファンもいれば、逆にお決まりのパターンで話が進まないところに違和感を感じるファンも出てくるでしょうね。
 
 私は、どちらかといえば後者ですが、とはいえ、レギュラーの仕事人の顔ぶれもかなりインパクトが弱くなっているので、その点も気になります・・・。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする