いつも利用している図書館の新着本リストで目につきました。
このところ気分転換に読んでいるミステリー小説は、全作読破にチャレンジしている内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” に偏っているので、久しぶりの松本清張作品です。
初期の短編8作を収録した傑作集とのこと。
ミステリー小説なのでネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、やはり清張さんの構成力と筆力は素人目にも卓越しているのを感じます。
たとえば、4番目に編まれている「白い闇」。読み進めるにつれ高まりゆくクライマックスに向かっての緊迫感。
(p174より引用) 濃い霧は二人を閉ざした。一メートル先が、白い、厚い紗でぼかされていた。ボートとその近い周囲のあおぐろい水だけが人間の視界にはいっている最大限であった。距離感も遠近感もまったく失われ、白い宙の中を舟は動いていた。
といった巧みなシーンの描写表現と作品のタイトルとのシンクロは本当に見事ですね。
ちなみに、採録されている作品は、すべてが「事件もの」ではありません。市井の人に降りかかる災難を扱ったものやサラリーマンの悲劇を描いたものもあります。
いずれもが “昭和の世相” の中での物語なので、その空気感を想起できないと清張作品には馴染めないかもしれないですね。やはり清張さんは “昭和の社会派” です。