せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

巨匠の建築、音楽ホールでパワーチャージ、建築とは何か思いを馳せる

2020年09月28日 | アート・文化


先週末、とても感動する場に
ご縁をいただいて、足を運びました。

コロナで開催が延期されていた
熊本復興チャリティーのコンサートの第3回目です。

生演奏は、本当に久しぶりです。
演奏者も、実に7ヶ月ぶりとおっしゃっていました。

熊本には、幾つかの建築家の作品(施設)があります。

その中でも、前川國男先生の設計の劇場は、
しっとりとした大人の空間です。



熊本に帰ってきて、音楽祭などで伺っていました。
それが、熊本地震以降は、伺うのは初めて。

建物自体も被災し、
まだ、外壁の補修を行なっているようでした。

中の様子は、それなりに前のままなので
建築が残って良かったと、胸をなで下ろしながら、
入りました。

車で来ると、駐車場からなので、
毎度裏から。いまだ、前から入ったことがない。
今度ちゃんと、表に回って、入ってみなくては。



コンクリート建築でも、無機質ではない
温かみのある空間を感じさせてくれるディテール。
巨匠のお仕事を垣間見て、ほくそ笑みます。



この空間に身を置くことで、
まさに、復興を感じると共に、
各演奏者の音が響き渡るステージで。

大きな 大きな エネルギーを頂きました。
熊本ゆかりの県内外の若手演奏家が集合。

楽器は、トランペットに始まり、
バイオリン、ピアノ、箏、
三味線に、ハンドネオン。

そして、ハンドフルートという、
手が楽器の代わりになる演奏と、実に多種多様。

演目も、ミュージカル曲あり、オリジナル曲あり
オペラ、和洋ミックスで飽きさせません。



CDでいつも聞いている大好きな、
オペラ曲を歌ってもらえた時は
思わず、口ずさみたくなるし(キーは出ませんが)

私の図面で煮詰まったの突破口の
楽曲「ピアソラ」あり。

そして、響き渡る迫力の音に酔いながら、、、
やっぱり、リアルは良い!

演奏者の息遣い、そして仕草、
挨拶、笑顔、、、、
空間で、そういった人の動きが
あるからこそ、建築になるんだ!と、思った瞬間でした。

建築とは何か?
よく、私たちプロの中では、
議論が重ねられてきたテーマです。

建物という表現と、建築の違いは何なのか?

私は、完成してすぐの建物は、あくまで建物で
建築と果たして呼んでいいのだろうか。。。と

ツルツルピカピカを前にして
よく思っていました。

こうして、年月を経て、味わいを増し、

地域に愛用されて初めて、
建築になるのではないか?

と、改めて感じました。

そして、そこに、命が宿っているか。

つまり、建築とは、時間による熟成と、
人の命輝がける場であるか

が、必須卯条件ではないだろうかと。

建築=空間*時間*命

真剣に演奏を聴いていて
こんな図式が降りてきました。

場の力は、必ずあるのですが、
それを倍増するのが、建築空間ではないかと。

演奏者のエネルギーと、観客のエネルギーとの
相乗効果が、このホールという空間で混ざり合い
溶け合い、そして呼応する。

そんな瞬間を体験し、何度か鳥肌が立ちました。

演奏したくてもできなかったアーティストたちの
演奏できる喜びと

久しぶりにハレの場所に身を置ける観客の嬉しさと

それらが、非常に強く呼応していたのです。

あ〜、コロナの影響による、
人間の飢え、渇きといったものが

こういう風に昇華されていくのかと、
建築空間の、場の役割を理解したのでした。

これからは、快適性や美しさのさらに一歩先の
命輝く、つまりエネルギーが倍増するような
そんな空間を目指していこう!

そう興奮した、コンサートでした。

お誘いいただいた方、音楽家の皆様、
感染対策をバッチリしてくださった
施設の管理者の方、
演出の大学デザイン研究室のみなさま

本当に有難うございました。

パワーチャージ出来て
私も、人にエネルギーを
バトンタッチできるような
生き方と、空間創りを目指します。

三密を避けて、Go TO Art

2020年07月27日 | アート・文化


不忍池の蓮が見頃です。

先週は、カレンダーでは4連休!でした。
オリンピック休みだったはず
本来なら、このまま子どもたちは、夏休みだったはず。

実際は、子どもの学校は、土曜日授業で、連休とはならず。
Go TO トラベルではなく、
Go TO Art 入場する時間帯を予約する芸術鑑賞へ
行ってきました。

国立博物館の好きな空間の写真です。ここは撮影OKの場所。





窓枠からの緑が、まるで額縁に入れられたように見えます。

休日に美術館や博物館に行くと、
とても混んでいて、人気のある絵画展などは
絵を観に行ったのか、人を見に行ったのか、
分からなくなるほどですが、

今回は、朝早い時間の予約枠で、申し込めたので
とてもじっくりと、作品と向き合うことができました。

むしろ、映画の予約席のように
展覧会も予約だと助かるなぁ。。。
並ばなくて済むしと思ったほどです。

三密を避けるために、鑑賞人数にも制限があり、
また鑑賞時間も、ほぼ決まっており、
館側が、計っている様子はありませんでしたが
予定時間内に鑑終わることができました。ほっ。

鑑賞した展示は、オリンピックに合わせて、海外の方向けにも
考えられていたはずの、日本博の「きもの展」。

私たち庶民には、驚くほど豪華絢爛の江戸時代の大奥の衣装。
大手商社の年代を感じさせるコレクション。
豪商の娘の晴れ着。武将の衣装まで。

歴代の日本文化を満喫できるものとなっています。

それにしても、日本人のものづくりの緻密さといったら
驚きです。

1本1本針を刺した刺繍で描かれる鷹や菊の花。
染物。もちろん、どれも一点もの。

本当に素晴らしい芸術でした。

芸術といえば、ベルサイユ宮殿を訪ねた時、
ゴウジャスな文化は、
階級社会があったからこそ生まれたのかもしれない。
富とそれを用いる場所があることで。と感じたのですが、

今回も、着物の豪華さを見るにつけ
日本の階級社会の時代背景も感じました。

晴れ着を切る階級と、作る側の暮らしは
大きく違っていたことでしょう。

これだけの労力をかけて作られるということは、、、
そんな風にも感じました。

今は、豪華絢爛もない分。階級はないと、思いたいです。
一方で、芸術や文化が、、、どのように育っていくのかも
ちょっと、矛盾していますが、今の時代は、
発展しにくいのかもしれないとも、思えてきます。

どれだけお金をつぎ込んでも良いと頼む、依頼者がいるのか?
職人の腕の見せ所がある仕事がどのくらいあるのか?

建築もそうですが、、、
昔の建築の凄さには、やはりお金のかけ方が違います。

しかし、その背景には、低賃金だったから
出来たのかもしれないとも、思えます。

ついつい、暮らし、の視点で見てしまうのが
ホームアーキテクトを名乗るサガでしょうか、、、笑。

実際には、思いがけない色の組み合わせ
大胆な構図、四季折々を感じさせる情景など、
その中に、日本人の審美眼を読み取ることができました。
本当に素晴らしかったです。

私が気に入った柄は、梅の合間に
御簾が挿入されていたものです。

最初は、御簾と気がつかないほど、
大きな円が描かれているのですが、
近くで確かめると
それは御簾の縁がくるっと丸められたものでした。

う〜む。大胆すぎる。女子の打掛なのに、
まるで男もののようなシャープさのある空間構成。
建築的な感覚がある方のデザインとお見受けしました。

着物の中に、時間、空間、そして、物語を入れ込む。
日本人って案外欲張りかも。

わざわざ、源氏物語の絵巻を入れるのが
ちょっとした流行だったこともわかります。

昨今の成人式の着物を見ると、
今は、何でもありの時代なのだなと感じます。

印刷技術の発達のおかげで、手仕事感はないけれど、
大胆な柄ものは、沢山ありますね。

それを美しいと感じるかは別ものですが。

きもの展を鑑て、一番の収穫は、
日本人の美への追求探求の凄さ
しつこさを垣間見れたことでしょうか。

芸術文化は、階級社会の背景があったとしても
何にも増して、その追い求める気持ち、情熱が源泉なのだと
現代の匠の作品を鑑て、自分なりに結論付けました。

見る角度によって、違う色のきらめき。
風景を描いた連作は、
実際の風景よりも深い世界観を醸し出し
伝統技法でモダンな柄を紡ぎ出す。。。など。

今の時代も負けてはいません。
むしろ、洗練されてきた。
という表現がふさわしいかもしれません。

もし、展覧会を尋ねるチャンスのある方は、
カテゴリーごとに
時代背景を想像しながら、楽しんでもらいたいですね。

私の趣味の一つに、鑑賞を終えた、
展覧会の公式本を購入するというものがあります。

子どもも展示をとても気に入った様子だったので
購入しようか?と尋ねたら、
「印刷ではあの立体的な美しさは変わるからいらない」
と、言われてしまいました。

確かにそうですね。
パンフレットの写真よりも、ず==っと現物が良かったです。
記録としての本であるなら、ま、いいかと、今回は購入なし。

朝日新聞の号外記事が現地で配布されています。


やはり欲しくなって、
こっそり通販で買ってしまうかもしれません、笑。


映画に学ぶパイオニアになる生き方 

2019年10月01日 | アート・文化


忙しい時ほど、仕事の課題が大きいほど、
映画を観たくなるのものです(笑)

1)映画との偶然の出会い

情報が溢れる世の中で、一つだけ不思議に思うことがあります。

建築家としての生き方、
女性としての生き方、
仕事へのプロとしての向き合い方
ほつれた人間関係のほどき方、、、などなど

多くのことを、思い悩んでいる時、
その時の課題にぴったりの映画と出会うのです。

ある年は、お正月休みもなく、仕事の予定だった年始。

パートナーもさすがに休みなので、幼子も託すこともでき
お正月からは混まないだろうと、

仕事を始める前の気合い入れに、

早朝、映画館へ一人赴き「孔子」を観ました。
信念の貫き方を学びました。

人を引っ張る底力とは何か、
人の評価を超えて、怯まない自分とは何か。

その年の仕事に、大いに役に立ったのです。

2)女性パイオニアの実話

そして、この秋、
また素敵な映画に巡り会えました。

「レディ・マエストロ」(原題は指揮者「De dirigent」)

没後30年の女性指揮者のパイオニアの実話に基づく、
女性の奮闘の物語です。

劇場で沢山頂いた
バレエやオペラのチラシの50枚ほどの中に
一枚だけ入っていた映画の案内。

「映画?」と不思議に思ったのですが、
劇中のテーマがクラッシク音楽だから
挟まれていたのだと思われます。

他のものは、気にならなかったのに、
そのチラシ一枚だけが、輝いて私の目に止まったのです。

確かに、鑑賞中は、オーケストラの名曲演奏たっぷり。

それだけでも、劇場の客席にいるようで、ドキドキでした。
クラシックファンには二度美味しいと思われます。

3)努力、信念、哲学

物語は、女性が受けるあらゆる差別や
家庭を持つこと、家庭的な事をすることを
強要されそうな状況を丁寧に描いています。

技能はあっても、華やかさのない容姿に、
タイピストに採用されなかったり。

母親には、仕事で疲れて帰ってきてすぐに
スープ作りを手伝うために
苦手は玉ねぎを切ることを押し付けられたり。

指揮に見とれて会場に入ってしまい、
即刻劇場のスタッフをクビになったり。

彼女の情熱の火がチラつけばチラつくほど、
周りが意地悪になるという構図。

これは、働く女性の周りのでは、
今でも「あるある」ではないでしょうか。
と共感し、同情し、
そして心の中で、「めげるな!」と声援を送るのでした。

しかし、その一途な魅力は、
周りをも巻き込み、試練は繰り返し訪れるのですが

受け入れてくれる人、応援者も現れて。。。

何事にも寡黙に
飛び込んでいく様は、これぞ、ザ・パイオニアです。

念願叶い、合格した指揮を学ぶ学校での彼女の姿を
守衛さんが、「ブリコさんは、いつも一番最初に来ますね。」

そして、「一番最後に、帰りますね。」とそのセリフだけで、
勉強熱心な彼女の姿、努力を描いていて、ジーンとします。

「できない、無理」と言われて笑われても、

追い払われそうになって、
「あなたから学べなくとも、絶対に指揮者になってみせる」と
啖呵を切り、返って相手を惹きつけたり

古い慣習や伝統を乗り越える
パワーが、彼女にはあるのでした。
きっとそれは信念ですね。

そこには、音楽や芸術の愛が根底に感じられて、小気味良いのです。

そして、彼女なりの音楽への哲学
無学を指摘されると、
図書館で読んだ有名な音楽家の言葉を引き合いに出すなど。

おきまりの女性の足を引っ張るのも女子。
コンサートの中止を強要してくる夫人たち。

一方で、応援するのも、女性という構図も浮かび上がらせています。
無名で、学費の支援をする女性が現れます。

大統領夫人の
「どうせ、批判されるなら、自分の心のままに行動しなさい」
という励まし。

最後には、女性演奏者への差別も乗り越える彼女。
アッパレです。

愛する人との家庭を得ることはできなかったが
多くの演奏者、観客に愛される人生だったろうと
膜引きでは、涙腺が緩むのでした。

3)感想と学びを綴ると。。。

何事も、「無理」と言われてめげそうになる時、

周りの理解者が誰もいないと感じる時、

自分の情熱に、自分自身が押し殺されそうになる時

偶然の重なりが導きになっていたり、
ダメだと思った先に
思いがけない出会いが待っていたりと、

頑張っている人に向けられる
宇宙の応援の法則も散りばめられています。

もし、あなたが何かのパイオニアになろうとしたら
それは自分自身の幸せだけではなく、

その後に続く女性や虐げられている人の
道筋でもあると信じて、向き合うべきである。

そして、その情熱を魅力に変えて、
迷わず、突き進め!

と、背中を押してくれる映画でした。

ありがとう。

先駆者として、戦うように礎を築いてくれて。

ブラボー、アントニア・ブリコ!!

追伸:
女優さんも男優さんも美しくて、ラブストーリーとしても楽しめます。
自分だったら、この時、どう人生を選択する?
という視点で考えさせられます。

恋や仕事に悩んでいる若い女性にも、ぜひ、観て欲しいですね!



芸術に潜む、時代の生き方や思想、哲学 

2019年05月07日 | アート・文化

ダスタフ・クリムト作画 「エミーリエ・フレーゲ」の肖像
1902年(今から117年前) 
新国立美術館の「ウィーンモダン展」にて撮影OKと言われて、パチリ。



みなさま、10日連休は、いかがお過ごしだったでしょうか。

私の知人友人も、家族で海外へ
という方も、おられました。良い季節ですしね。

我が家は、子どもの部活試合シーズン。
毎年、GWが区大会なので、遠方へは行けません。

応援に駆けつけ、連休中もご指導いただく先生方を
有難く思うのでした。

後半は、仕事のショールーム巡り。
メーカーは休みでもショールームは空いており、
急ぎのプロジェクトがあるので、助かりました!。

その間に、ちょっとだけ自分時間を確保。
楽しみにしていた『ウィーン・モダン展』に行ってきました。

大好きなエゴン・シーレの絵も来日とあって、
前売りチケットを買って、待っていました。

実際には、私の大好きな「抱擁」の展示はなく
残念な面もあったのですけれど、

それは、それは、見応えのある、ウィーン芸術展でした。
ウィーンは、生きている間に、再度訪ねたい芸術の街です。

20代、バックパッカーの旅で
「金のキャベツ」の愛称で親しまれる
ゼツェッション館(分離派会館)で、
シーレやクリムトの作品を堪能したけれど
解説(英語やドイツ語)が読めなかったせいか、

今回の、展示で、新たな発見が!

「エミーリエ・フレーゲ」は、女性実業家だった。というもの。
実質的なクリムトのパートナーだった、ということ。

官能的な絵画で知られる、クリムトが来ている服
「スモック」は、彼女のデザインらしい。

そうか、、、トレードマークのあの服がねぇ。

エミーリエは、コルセットからの女性解放を謳って、
ゆったりとするリフォーム服を売るサロンを開いていたとか。

ほほ〜。斬新な芸術家に、斬新な女性。

クリムトは「接吻」など女性の恍惚さを描いているので、
奔放な方だと思っておりました。



↑もう一枚、撮影OKのクリムト画を再現したピアノ。
世界に25台とか。金塗りなど贅を尽くしています。

その中でも、この絵は、瞳にぎゅっとした知的な力が加わり、
少し怒ったような表情にも取れ、
クリムトの描く女性と異質な空気が漂っているなぁ。。
とは、気が付いていたけれど。。。
時代を切り開いた女性の一人だったとは!

この「服による女性の解放」については、この方だけではなく
様々な国で、そういった女性デザイナーがいたようです。

この肖像画の服も、クリムトらしい表現ですが、
想像の服で、実物はなかったようです。
展示では、服飾系の学生さんが、
そのドレスを再現して、休憩室に展示があるので
行かれる方は、ぜひ、展示の裏側まで観てくださいね!
良く作り込まれていました。

若い頃は、絵画を
その色使いや形、立ち込める空気などに
重点を置いて鑑賞してきたように思います。

つまり、思い込みという部分で
我流の鑑賞。

今は、時代背景や、描き手の思想、
生き方や哲学などの背景まで深く知りたいと思うようになりました。

客観的に観るとでも言うのでしょうか。。。

もちろん、先入観なしに最初に楽しんで
のちに解説を読む。調べる。という流れが良いでしょうね。

知識や、理屈で鑑賞しないように。。。
そうしないと、心が動きませんものね。

絵画の見方が変わったのは、
スペインで、ピカソの「ゲルニカ」の本物を観た時です。

教科書に出てくる
上手なのか、下手なのか分からないようなタッチの白黒絵画。

紙の上で小さく、本物のサイズも知らずに。
これのどこが良いのか分からず、
「戦争後に気が狂ったのか、ピカソ?」と
子どもの時に思っていた絵画。

本物は、横長の大作でした。
前に立っては、視界に入りきれず、歩いての鑑賞です。

絵の前に立つと、
まるで、戦争の悲痛さの叫び声が聞こえてきそうな
大迫力だったのです。

なぜ、白黒にしたのかも分かりました。
絶望感が伝わる色なのでした。

ああ、、バーチャルで絵を鑑賞してはいけない!と思いましたね。
本物の醸し出す、その空気感を味わわなくては!と。

ミロの絵画では、音楽が聞こえてきたし、、、。

逆にエゴン・シーレは、本屋でその絵に釘付けになり、
本物を見なくては!と、ウィーンへ飛んだほどです。

人物の目力が強すぎて
こちらの内面がえぐられるかと思うほどでした。
本人のナルシストな様子も伝わってきます。

そして、ウィーンで出会ったシーレの「抱擁」が素晴らしく
ポスターを買って帰りました。

今回の展覧会での、もう一つの発見は、建築家のことです。
ウィーンといえば、「オットー・ワーグナー」を
建築の教科書で学びました。

建築家の学生は、出来上がった建築を
誰がいつどこで作ったかを覚えさせられます。
(興味がないと忘れます)

しかし、実際は、「できていない建築」というものも多くあり、
歴史に埋もれているのです。

有名な、オットー・ワーグナーでさえ、そうだったのです!

精巧にできた模型の展示に、それは実現しなかったけれども
心血を注いだとあります。

芸術性の高い、装飾は見とれるほどです。
大御所でも、できない建築を抱えて、苦労しているのですね。

逆にまた、別の建築家で
シンプルな装飾の少ない窓の建築をヨーロッパで提案した時の
大バッシングの展示もありました。

今では、見慣れた風景の建物も当時は酷評。
装飾のなさに、「これは建築ではない」とまで、言われたそうです。

時代が違うと、価値観も違い、何事も最初のチャレンジ、
風習を変えるのは、大変なことだったのですね。



↑自分へのお土産は、オットー・ワーグナーが
最初に考えた、外壁を装飾タイル張りにする案。
永遠に美しい色が残せると考えた建築のタイル割図面。
クリアファイルとミニノート。


その中で、残っていく芸術、音楽、建築、、、
そういったものが、本物なのでしょうか。

あるいは、人々を感動させる「美」なのでしょうか。

芸術の中に、時代が切り取られている
そんな風にも思えてきます。

これだから、美術展覧会巡りは、止められません!

新年にブログで書いた、子育てから、少しずつの子離れで、
自分時間を取り戻す、第一歩となりました。

さて、次は、音楽を楽しみたいものです。
GWよ、ありがとう!


啓蟄の候に、ワクワクする芸術のこと

2019年03月06日 | アート・文化

↑目を楽しませてくれるご近所の梅の木たち

咲き誇ったと思ったら、散り始めている梅の花。

三寒四温の折、
とうとう今年も「啓蟄」の候を迎えました。

冬ごもりしていた虫たちが,ぞろぞろと土や木から這い出てくるように、
人もぞわぞわと活動したくなり、ワクワクと始動する季節です。

そこで、今日は大好きなアート、芸術から、映画のことを綴ります。

育児中は、自分の好きな映画をのんびり鑑賞するという
趣味からは遠のき、観るものといえば、
子ども向けの話題の映画、
アニメやハリウッド系が多かった昨今。

そろそろ、子どもも友人たちと好きな映画を観る
年齢になってきたところで、

シネマの趣味を少しづつ、復活。

昨年、誕生日月の自分へのご褒美で、
駆け込んだ「フランス映画祭2018」
そこで上映された映画がとても素晴らしく。

これは皆さんにも観て欲しいなぁ、と思っていました。

今年、一般公開されると聞いていたのですが、
それがこの3月から。

英題は「See You Up There」(お会いしましょう)
日本語では「天国でまた会おう」となってます。

戦争の哀しい物語がベースです。

二人の生き残った兵士の寂しくもユーモラスなやり取りが、
家族愛とは何か?平和とは何か?と訴えかけてきます。

そして、披露されるダンスも、衣装、仮面のモチーフも美しく、
完成度の高い芸術作品として、鑑賞できます。
ポスターも絵画のように素敵です。

公式サイトはこちら
http://tengoku-movie.com/

昨年の映画祭では、監督アルベール・デュポンテル氏のインタビュー、
Q&Aが行われました。その様子がこちら、(その場にいました!)

監督、脚本、出演と、一人何役もこなす彼を
芸術家として、とても尊敬します。
http://unifrance.jp/festival/2018/latest/687/

映画をご覧になった後、お読みいただければ、
なお理解が深まることでしょう。

原作は読んでいないのですが
終わり方は、どうも違うらしいです。

興味のある方は、原作を読んだり、
ぜひ映画館に足を運んでくださいね。

「フランス映画祭 2019」は、6月20~23日に
神奈川・横浜みなとみらいホール、
イオンシネマみなとみらいで開催される予定だそうです。

今年は、主催のユニフランスが設立70周年、
横浜と仏リヨンの姉妹都市提携が60周年を迎える記念すべき年とのことで、
どんな映画が上陸するか、今から楽しみです。
今年も、誕生日月に、忘れず行けますように!

ただいま年度末、慌ただしい毎日です。
乗り切ったら、ご褒美に映画(再度鑑賞したい)と思って、
頑張ります!

芸術に触れると、新しい発見があったり、視野が広がり
自分自身の、感覚や感情の動きを、見つめることにもなり、
結果的に、心の余裕が生まれます。

それが、自分の仕事や生き方にも生かされるのです。
日頃、仕事関係や周りの人間関係への感謝で目一杯な私です。

遠く海を越えたフランスで、
極めている芸術家たちに想いを馳せて。

素敵な作品をありがとうの気持ちを込めて。