せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

インクルーシブな世界、そしてダイバーシティとは? ~ジェンダーフリートイレの考察〜

2021年09月06日 | ユニバーサルデザイン

注:写真は全てコロナ禍前の工事中見学会(2019年)の写真です。

パラリンピック2020+が、昨日閉幕。
開会式と閉会式をオンタイムで拝見しました。

競技は、気になる種目を
ネットのハイライトでチェック。
テレビ放送を見始めたら、キリがないですものね。

今回、驚いたのは、
TV放送だけではなく、インターネット上で
ほとんどの競技が拝見できたこと。

見逃し配信も、ロボット中継もあり、
随分便利でした。


新国立競技場 
昼景しか見ていないので、TVの夜景は新鮮でした。

今回の開催にあたり、
反対する意見もあり、医療従事者の方や
スタッフの負担を考えると、話題にしていいものかどうか
躊躇するほどでした。

日に日に増えていく、新型コロナの感染者数と
喜びのメダルのニュースが並行するって!?

観戦者の一人として、戸惑いもありました。

実際は、感動の嵐だったのですけれどね。
特に、パラリンピックは、競技内容の素晴らしさに加えて
インタビューでは、もらい泣きでした。

そして、世界中からこれまでで最多の参加だったとか。
安心安全な日本だから受け入れることが出来たと
自負しても良い結果だったと思います。

こんな社会情勢の中だから
開会することよりも、むしろ無事に終えることの意味が
大きかったように思います。

一方で、誘致時の復興やおもてなしを謳ったものとは
違うものになったように感じました。

コロナ禍での開催自体が
レガシーになってしまったような印象です。

本日、この話題を取り上げたのも、
いくつか気になることが残ったからです。

<パラリンピックと今後の建築のあり方>

閉会式で使われた、「インクルーシブ」という言葉と
「ダイバーシティ」についてです。

インクルーシブには、「包括的な」という意味があり
日本では福祉の現場で早くより使われていますね。
地域包括支援や、包括医療など。

所属する「発達障害の生活環境を考える会」で、
この言葉を知り、福祉医療教育など様々なメンバーと、
建築的なインクルーシブって何だろう?
という勉強会を重ねてきました。

空間構成のハード面だけではなく、
人的や運営でのソフト的な対応との
融合性が大切というのが
今のところの私の結論です。

バリアフリーにすれば良いというものではなく、
視覚障害者と聴覚障害者では、感知の仕方も違い、
障害によっては、妨げになってしまうことも。

つまり、柿本の違和感は、

この、「包括的」という言葉が、
だれにでも優しく包み込むような
イメージだけが先行して、単純なバリアフリーにすれば良い
というものでは、あってはならないということです。

障害は、完全に個別性です。

大まかな共通項の対応可能な解答はあっても、
誰にでもOKという解はないということです。

むしろそれよりも、利用者のニーズに合わせて
可変させられるだけの、フレキシブルさが求められると
考えます。それこそが、包み込める空間ではないかと。

もう一つの言葉、「ダイバーシティ」。
閉会式でひとりひとり違う衣装で、
賑やかな街を闊歩する姿で、表現されました。

単に、賑やかな街で良いの?
ちょっと待って!

日本語で言えば「多様性の尊重」と、
個人的には受け止めていて

結局「受容性」であり、お互いの「尊重」
が大事ということなのではないかと。

これからは、そういった価値観で
様々な立場の人々が、共に手を取り生きて行く社会
になっていく。。。それが理想だと思っています。

決して、個性的なファッションではないですよ=。

子どもたちが勘違いしてしまうといけないと、
そこは大人が伝え他方がよい部分なのかなぁと
映像をみて思いながら、、、

あ、でもね。きっと子ども達の方がもっと
受容的で、尊重精神があり、柔軟でしょうね。

大人が、あれダメこれダメと決めつけないように
しないとならないのかもしれませんね。

ハード的なダイバーシティを謳うなら、
車椅子もベビーカーも自由に闊歩できる
街にしたいですよね。

今の日本で歩車道分離がきちんとなされて
緑も街中にあって、という都市を私は知りません。
障害物だらけ、坂だらけですよね。

これまでの万博やオリンピックの施設は
建築のものづくりの技術的進化のためにもありました。

今回の東京オリンピック・パラリンピックでは
どんな建築の進化があったのか?

<進化したのは、マイノリティーへの対応か?>

SDGsに適合と、胸を張って言える施設ばかりではなく
技術的な進化は、それほど感じられませんでした。

それよりもむしろ、
LGBTの方のトイレやロッカーをどうする?
といった、マイノリティーの性別に
関しての課題が直面したと聞いています。

マイノリティーと表現している時点で、
おかしいのかもしれませんが。


パラリンピック対応へ
トイレを改修した古い施設を見学した時



感じた違和感は、確かに設備は立派でしたが、
圧倒的に、数が不足するだろうな
という点でした。



車椅子バドミントンで使用されたその体育館は
名建築ですが、



限られたスペースでの対応で
仕方がないのだろうなと思いながら、

仮設のトイレなどで対応したのだろうか。。。
など想像しながらの競技観戦でした。

車椅子の方は、水分を控えたり、トイレ使用を
かなりコントロールされると伺っています。

でも、アスリートの方が、
水分を控えるわけにはいきませんものね。


以前、車椅子バドの練習を少しだけ見学させてもらいました。


そのあたりを開催国としては、研究者が検証する
のが、一番にも思いますが、
取り組んでいる大学の先生はおられるでしょうか。

機会があったら、研究会のメンバーにも
探ってみたいと思います。

<これからの多様性社会のトイレとは?>

LGBT対応トイレに関しては、
私自身も絶対にこれだ!という結論は出ていません。

多機能トイレ(みんなのトイレ)は、確かに子育て世代には
ベビーカーごと入れて助かりました。
が、混んでるんですよね。
車椅子の方を待たせてしまうのは
心許ないのです。

また、子ども誘拐や
性的犯罪の場所になったりと負の側面もあります。

ベビーチェアが、男性トイレにも設置されたり
車椅子トイレが、男女別になっていたりなど、
施設ごとに様々な対応は進んでいますが

LGBT専用とするのは、
そのことを公にしたくない人にとっては
憚られます。

「ジェンダーフリートイレ」が海外では
当たり前になってきている昨今。

今後は、個別性になって行くのではないか。。。
と、予感もあります。

個室。
鍵付きトイレ。
見張り番付き?
海外みたいに、お金を払わないと入れない?

テロ対策かねて、
受付を通じるかもしれませんよ。

あまり大げさなことにならず、
気持ちよく、様々な人が自由に使える

男女どっちでもいいよ=、

ただし、プライバシーは守られる
そんな空間にしていきたいですね。

トイレ問題を考えることは、
実は社会を考えること、と深いと思っています。

話が大きいのか、
小さいのかわからなくなってきましたが、、、(笑)

最後に、本当に大事なのは、
人と人との断絶を
起こさないことですよね。

これからの建築のものづくりは
ハートのバリアフリー
しっかりと、演出、出来ますように。。。